Web広告は広告掲載だけでなく、分析や改善に関してPDCAサイクルを回す必要があるなど、自社で運用するとなると工数が多く手間のかかる施策です。
運用に手間がかかる分、Web広告の導入を見送っている方や、別業務と折り合いをつけながら運用を続けている方も多いのではないでしょうか。
広告運用の手間を軽減する施策の1つにAIの活用があります。
AIは自動で広告効果を検証したり、画像などのクリエイティブを生成できるため、広告主は手間をかけずに効率的な広告運用を実現できます。
現在、広告業界おいてAIを積極的に活用する動きは活発化しています。
参考:『【調査】広告代理店の生成AI活用、76.2%の広告主が肯定的 ~ インターネット広告代理店の生成AI活用に関する調査 / SO Technologies ~』
ソウルドアウト株式会社は2023年に、インターネット広告を代理店に委託している広告主438人を対象に生成AIに関する調査を実施しました。
調査結果によると、広告代理店が生成AIを活用した広告業務を行うことについて「積極的に活用してもよい」と回答した人が29%、「活用しても良いが、一定のルールやガイドラインが必要」と回答した人が47%となっています。
この結果から、約76%が広告業務における生成AIの導入について肯定的な意見を持っていることが分かりました。
このように、広告業界におけるAIの活用は多くの企業で導入されており一定の効果を発揮していますが、「そもそもAIを活用した広告についてよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
本記事では、広告に活用するAIを「広告AI」と定義した上で、広告AIとはなにか、また広告AIの事例としてどんなものがあるのかを詳しくご紹介します。
今後、効果的に広告AIを活用したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
関連記事:『広告の機械学習促進施策5選!教師ありAIで広告最適化!』
Contents
広告AIとは
広告AIとは、人工知能(AI)を利用して、広告の効果を最大化するための技術のことです。
広告AIは、広告出稿のターゲティングやクリエイティブの最適化、予算配分など、広告キャンペーンに関わる様々なタスクを自動化し、広告主がより効果的な広告を作成・展開するのをサポートします。
広告AIをうまく活用することで広告主はより正確なターゲティングで、かつコストパフォーマンスに優れた広告運用を実現可能です。
また、広告AIにはさまざまな種類が存在し、例えば機械学習を活用したものやディープラーニングを活用したものなどがあります。
Googleは「人工知能(AI)」「機械学習」「ディープラーニング」について以下のように整理しています。
AIは、さまざまな定義がありますが、コンピュータに知的な作業をさせる科学全般を指します。AIを実現する手法の1つが機械学習であり、大量のデータセットをコンピュータに学習させることで任意の問題処理の性能を上げます。
そして、ディープラーニングは、機械学習における手法です。(中略)ディープ ラーニングでは、膨大なデータからコンピュータが「特徴量」と呼ばれる「何に着目すべきか」という要素を自動的に判別することができます。
このように、大枠で見ると機械学習とディープラーニングはAIの一部に当たります。
機械学習はAIによる学習のことで、AIを支える上で重要な技術になります。
膨大なデータの中から法則性を導き出すことで、物事の成功パターンを見出すことが機械学習の専門領域です。
一方でディープラーニングは、その機械学習を支える手法を指します。
このディープラーニングによって、学習できるデータのバリエーションが増え、従来ではデジタル化が難しかった画像や音の学習も可能になりました。
参考:『機械学習とは? ディープラーニング・AIとの違いや機械学習でできることを解説』
広告AIは機械学習がベース
広告AIでは、機械学習が仕組みの根幹にあります。
機械学習を活用しない場合、獲得したデータから人間が問題の解決策を一から模索する必要がありますが、機械学習の場合、反復的に学習することでパターンを発見でき、問題解決に必要なアルゴリズムを自動で構築してくれます。
参考:『機械学習とは – SAS』
機械学習による反復学習によってさまざまな過去データから成果が出やすい傾向のあるパターンを導き出すことで、広告運用の最適化が可能になります。
近年、この機械学習が普及した要因の1つに、取り扱うデータ数の増加があります。
市場調査を実施するIDCが2020年に公開した報告書によると、全世界で生成されるデジタルデータ数は2020年時点で59ゼタバイトであると発表しました。
ゼタバイト(ZB)とはデータ量を示す単位の一種で、1ゼタバイト=1兆ギガバイト(GB)に当たることからも非常に大きなデータ量であることが分かるでしょう。
膨大なデータからパターンを発見する機械学習は、データ量が増えるほど精度やパフォーマンスが向上することが期待されます。
一方で膨大なデータになればなるほど、データの取得や処理、保存、分析などの工程に時間がかかるようになります。
生成データが増加することでより精度が高まった機械学習を広告運用に活用した技術が、まさに広告AIなのです。
こういったデータを効率よく管理するためにも機械学習を活用し、データインフラを整備することは有用な施策です。
参考:『世界のデータ総量ってどのくらい?データ総量、データ通信量(IPトラフィック)の意味から最新の予測まで徹底解説!!』
関連記事:『データマーケティングとは?3つのメリットや導入事例も解説』
広告AIの2つの主な役割
広告AIは、大きく分けて2つの使用用途に分けられます。
広告運用に活用できるAI
一つ目は、AIを広告運用に活用するケースです。
広告運用にAIを導入することによって自動入札機能や広告パフォーマンスの効果予測といった業務を効率化することができます。
機械学習によって分析された成功パターンをもとに、予算分配や入札単価の最適化をAIが自動で行ってくれます。
広告素材に活用できる「生成AI」
二つ目は、AIを広告素材の生成に活用するケースです。
広告素材とは、広告として制作するクリエイティブはもちろん、クリエイティブ内に配置するグラフィックや動画、キャッチコピーなどのテキストまで幅広くあります。
これらの広告素材を自動生成するのに役立つのが「生成AI」と呼ばれるもので、具体的には以下の4種類があります。
- 画像生成
- テキスト生成
- 動画生成
- 音声生成
参考:『生成AI(ジェネレーティブAI)とは?種類・使い方・できることをわかりやすく解説』
広告AIを活用するメリット
近年のデータ量の増加に伴い注目を集めている広告AIですが、広告運用に取り入れる上でどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、広告AIを活用するメリットを具体的な機能と合わせて解説していきます。
正確なターゲティングができる
広告AIを活用することでユーザーの属性や行動履歴を機械学習によって分析できるため、効果的な確度の高いターゲット設定が可能になります。
ターゲット設定にAIを活用する手法の1つにコンテキストターゲティングがあります。
具体的には、Webページのテキストや画像、動画などのコンテンツをAIが分析し、その内容に関連する広告を表示できる仕組みです。
例えば、スポーツニュースのWebページにはスポーツ関連のキーワードや画像が多く含まれているため、そのページにアクセスしているユーザーにはスポーツ用品やスポーツウェアの広告を表示することができます。
さらに、AIは広告表示のデータを分析して最適な広告ターゲティングを行うための予測モデルを構築することもできます。
こういった正確なターゲティングによりターゲットオーディエンスに効果的にアプローチすることができ、広告効果を最大化することができます。
参考:『コンテキストターゲティングとは?メリットは?なぜ今注目されているのか【マーケティングコラム】』
関連記事:『ターゲティング広告とは?6種類と仕組みをわかりやすく解説!』
効果的なクリエイティブを生成できる
広告AIでは、広告のクリエイティブ(画像や文章)を分析することでユーザーにとって魅力的なクリエイティブを生成できるため、効果的なクリエイティブを配信することができます。
これは、AI技術の一つであるGAN(敵対的生成ネットワーク)と呼ばれる画像生成手法によって、ユーザーにクリックされやすい広告を簡単に生成できるような仕組みになっているためです。
バナー広告ではクリエイティブのデザインがクリック率に大きく影響します。
そのため、広告効果を高めるためにはユーザーの興味を引くようなデザインやキャッチフレーズの広告を配信することが非常に重要です。
GANはバナー広告以外にも、画像、音声、テキストなど、様々な種類のデータを生成することができるため広告における汎用性が高く、クリエイティブ生成において有効な手法です。
このようにGANを搭載した生成AIによって、ユーザーのニーズを満たしたクリエイティブや訴求が実現します。
参考:『AIを用いたバナー広告生成技術にて特許出願しました』
関連記事:『広告クリエイティブとは【クリック率向上の制作ポイントを5つ紹介】』
広告の入札価格を最適化できる
広告AIでは、広告主が設定する入札価格を自動で調整し、最も成果が出やすい最適な価格で広告を表示することができます。
例えばGoogleの自動入札機能では、広告主は自動入札のタイプを選択することで入札価格を自動調整します。
自動入札を設定する際の目標としては「サイトアクセスを増やす」「視認性を高める」など様々あり、それぞれの目標に応じた戦略に基づいて自動で入札単価を設定するという仕組みです。
この自動入札機能はこれまで蓄積されたデータから最適な価格を算出するため、自らの感覚や憶測を排除した価格設定が可能になります。
このように広告AIは広告運用の様々なシーンで活躍します。
効果的な広告を効率的に運用できる施策であることから、広告運用する際にAIを導入することは有用です。
参考:『自動入札機能について|Google広告ヘルプ』
関連記事:『Google広告の自動入札とは?6つの戦略と手動入札との違いを紹介』
広告運用に活用できるAIの活用事例
マーケティング施策の一環や広告運用の業務効率化を図るツールとして広告AIを導入している企業も多いです。
ここからは、広告AIをよりイメージしやすくするために、実際に広告運用に取り入れられている広告AIをご紹介します。
Facebook広告の「自動配置」
引用:『機械学習を活用して、ビジネスにとって重要な成果を促進しましょう』
Facebook広告の自動配置機能では、連携しているFacebook、Instagram、Audience Network、Messengerの各プラットフォームの中から最も費用対効果が高い広告枠を機械学習によって見つけ出すことができます。
Facebook広告は4媒体をまたがる規模の大きなSNSプラットフォームですが、最大の成果を得られる場所をAIによってリアルタイムで特定できるというわけです。
またFacebook広告は、自動配置を行う広告の種類にも対応しており、画像広告やカルーセル広告、ストーリーズ広告などの幅広い広告形式に対応しています。
自動配置を使用することで、広告主は簡潔な広告キャンペーンの配信戦略設定で、最適化された広告運用を実現できます。
関連記事:『Instagram広告とFacebook広告の違いと特徴!成果を出す4つのポイント』
株式会社シンクリンクの「perpetua」
引用:『perpetua|Synclink』
デジタルマーケティング会社のシンクリンク株式会社では、Amazon広告を最適化するAIを搭載したクラウドツール「perpetua」を2020年から提供しています。
現在では、Amazonにおける検索結果のうち、20~40%はスポンサー広告であると言われています。
「perpetua」ではそんなスポンサー広告に着眼し、スポンサープロダクト広告やスポンサーブランド広告などに特化した広告最適化ツールにAIを搭載することで、工数を大幅に削減しながら広告パフォーマンスの最適化を実現しました。
「perpetua」では、広告費と目標ACoS(Amazonの広告費売上高比率)を設定するだけでAIによって広告を最適化することができます。
24時間365日稼働している機械学習機能によってキーワード調査や自動入札、広告キャンペーンの自動化など幅広い運用工数をAIで行うことが可能です。
日本では約200社以上もの企業が導入しているだけでなく、海外でも一定の効果を提供していることからも広告AIツールが広く浸透しつつあることが言えます。
参考:『perpetua|Synclink』
参考:『AIで広告業務が変わる!活用事例やメリットや注意点を解説!』
参考:『Amazon広告向けAIツール「Perpetua」 日本での導入企業数200社突破のお知らせ』
生成AIの活用事例
次に、広告の素材生成に有効な生成AIの事例をいくつかご紹介します。
Google広告の「生成AI」
引用:『AIによる新たな時代のGoogle広告|Google Japan Blog』
1つ目の事例は、Googleによる生成AIの活用です。
かねてからGoogle広告では、自動入札や予算設定の最適化においてAIの機械学習機能を積極的に活用してきましたが、2023年に新たな自動化施策として「生成AI」の導入を発表しました。
生成AIの導入により、Google広告では広告キャンペーン作成時に会話型のAIチャットを利用できるようになりました。
キャンペーン効果をより向上させるための改善策をチャットで相談することもできるため、広告主が持っている専門知識とGoogle AIを掛け合わせることでより効果的な運用を実現することができます。
また、検索広告では既存の自動作成アセットをさらにアップデートしたジェネレーティブAI搭載のアセットがリリースされ、これまで以上にユーザーが検索したキーワードとの関連性が高い広告配信が可能になります。
参考:『AIによる新たな時代のGoogle広告|Google Japan Blog』
参考:『Googleが生成AIを「Google広告」に搭載、自然言語による会話で広告キャンペーン設定』
電通の「CXAI」
大手広告代理店の電通では、AIによってクリエイティブを自動生成できるツールを各企業のニーズに合わせてカスタマイズできるサービス「CXAI」を2021年にリリースしました。
CX(ユーザーエクスペリエンス)を向上することを目標に名付けられた「CXAI」では、電通グループで開発された15種類以上ものAIから機能をカスタマイズしてオリジナルのAIツールを活用することができます。
CXAIの活用によって、例えばデジタルマーケティング担当者であれば商品やサービスに合わせた広告バナーの自動生成、メールマガジン担当者であれば属人化してしまいがちな文章構成を自動で生成することが可能になります。
ビジネスの目的に合わせたクリエイティブ表現を自動生成することで生産性を向上させられるとともに、既存のAIを複数組み合わせることで最適化の質を高めることができ、マーケティング効果の高い広告運用を実現できます。
参考:『電通がいよいよ「クリエイティブAI」を解き放つ!自動生成AIソリューション「CXAI」』
参考:『AIを活用したCXクリエイティブの高度化 ー ウェビナーレポート』
サイバーエージェントの「極予測AI人間」
引用:『「極予測AI人間」、AI人物モデルが使い放題の新プランを提供開始 老若男女問わず多様な活用が可能 ーAI人物モデルの配信実績は600人を突破ー』
サイバーエージェントでは、AIによって生成した人物モデルを無制限で使えるサービス「極予測AI人間」を提供しています。
AIを活用して人物素材を生成することで、他のクリエイティブと被らないオリジナルの架空人物を作り出すことができます。
広告で実際のモデルを起用するとなると時間と金銭面において莫大なコストが発生してしまいますが、このようなAI生成モデルを活用することでコストを削減して効率的にクリエイティブを制作することが可能になります。
極予測AI人間を活用したことにより、実際のモデルを起用した広告よりもCTR(クリック率)が122%向上するなど、広告効果に大きな影響を与えています。
参考:『「極予測AI人間」、AI人物モデルが使い放題の新プランを提供開始 老若男女問わず多様な活用が可能 ーAI人物モデルの配信実績は600人を突破ー』
関連記事:『ブランディングに効果的!音声広告とは?3つの特徴を紹介!
広告AIを活用する際に知っておくべきこと
最後に、広告AIを活用していく上で知っておくべきポイントを2点ご紹介します。
今後本格的に広告AIを取り入れたいと考えている方は、以下の点を抑えておきましょう。
トレンドを予測することは難しい
AIは、最新のトレンドを予測することには適していません。
これは、AIが活用する過去のデータは最新のトレンドを分析するための材料なのではなく、あくまで成功パターンを学習していくための学習材料であるからです。
トレンドには、過去のデータや傾向だけでなくその時々の時代背景や社会情勢などの要因も密接に関わってきます。
しかし、こういった要因はAIの力で汲み取ることが難しいため、最新のトレンド予測には人間が常に市場や社会の動向にアンテナを張り続ける必要があります。
参考:『広告業界のAI活用事例。クリエイティブ制作やマーケティング最適化などメリットを紹介』
参考:『広告運用における最新トレンドと常に敏感であることの重要性』
初期投資が必要
広告AIを導入する際には、初期の段階で費用面での投資と時間面での投資が必要になってきます。
例えば、より効果的な広告運用を実現するためにAIが搭載された自動化ツールを導入しようと考えた場合、そのツールを導入するのに高額な費用がかかります。
またツール導入初期の段階で、成功パターンを抽出するためのデータがまだ蓄積していない場合は入札単価や予算面での最適化までに時間がかかってしまうため、2~3週間は入札単価が高騰してしまう可能性も考慮する必要があります。
広告AIを取り入れることは、長期的に見ると広告パフォーマンスを上げる点で効果的ですが、最初はある程度の投資が不可欠である点を覚えておきましょう。
参考:『AI広告の発達がWeb広告業界にもたらす効果と影響』
関連記事:『広告効果測定はWebマーケに必須!9 つの指標を徹底解説』
まとめ
広告AIは、ターゲティングやクリエイティブの最適化などさまざまなシーンで活用されています。
手動で広告を運用する場合、配信設定や効果の分析、改善など工数が多く時間と手間がかかってしまいますが、広告AIを活用することで手間を削減し、短時間で効果的な広告配信を実現できます。
これらの特徴を踏まえた上で広告を運用することでさらに効率的なWeb広告を運用できるでしょう。
また、この記事を読んで、広告AIを難しいと感じた方は広告代理店にWeb広告の運用を委託することも手段の1つです。
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また、弊社の広告運用担当はYahoo!広告、およびGoogle広告の認定資格保持者であり、知識のアップデートを行っております。
薬機法医療法遵守広告代理店の認証を受けておりますので、広告審査の厳しい薬事・医療系も対応可能。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。