現在、企業はさまざまな媒体からデータを獲得し、膨大なデータを用いて会社を運営しています。
ITテクノロジーを提供するデル・テクノロジーズ株式会社が、世界15カ国の従業員数250人超の企業と公的機関の意思決定者1,000人を対象に実施した調査によると、企業が管理しているデータ量は、平均13.53PB(ペタバイト)と非常に膨大であることがわかりました。
PBとは、1000兆バイトを意味し、スマートフォンの通信量などで使用されるGB(ギガバイト)で表現した場合、1PBは100万GBに相当します。
2016年度の調査では、平均1.45PBであったことを加味すると、数年間で扱うデータ量はおよそ8.31倍にまで大幅に増加していることがわかります。
参考:『【抄訳版】デル テクノロジーズ、データ保護に関する最新調査結果を発表』
扱うデータ量が増加した要因の1つに企業のDX化の推進があります。
引用:『『日本企業の経営課題2021』調査結果速報【第3弾】DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組状況や課題』
DX化とは、デジタルトランスフォーメーションの略称であり、経済産業省はDXについて以下のように説明しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
産業界の健全な発展をサポートする一般社団法人日本能率協会が517社を対象に実施した調査によると、2020年時点で3割未満だったDX導入率が、2021年時点で約半数まで導入が進んでいることがわかりました。
DX化推進によりデータに対するニーズが増加したことは、企業が所有しているデータ数が増加した要因の1つです。
DX化に伴い、勘や経験に依存しないデータマーケティングを実施可能な企業が増加しました。
客観的な数値を根拠にしたマーケティング手法であることから、失敗するリスクが少なく、確実性の高い企業運営を実施可能です。
当記事では、データマーケティングの導入方法や、実際の導入事例について紹介します。
関連記事:『BtoBマーケティング7つの成功事例から学ぶデジタルマーケティング戦略』
Contents
データマーケティングとは
データマーケティングとは、データをマーケティング戦略の意思決定に役立てる手法のことを指し、データドリブンマーケティングと呼ばれることもあります。
参考:『データマーケティングとは? 始め方や活用メリット・注意点、成功するためのポイントを解説』
使用するデータは多岐に渡り、具体的には以下のようなものが当てはまります。
- 顧客の住所
- 年齢
- 年収
- 家族構成
- 顧客の購買履歴
- Webサイトのアクセスログから取得される行動履歴
- お客様の声
- クレーム
- SNSに投稿された文章
データマーケティングのメリット
- 実行すべき施策を限定できる
- 属人化の解決につながる
- 顧客のロイヤルティを高めることにつながる
データマーケティングにより、以上のようなメリットを獲得可能です。
実行すべき施策を限定できる
マーケティングを担当している方の中には、目標を達成するための方法を検討する際に、切り口が多すぎて困った経験がある方も多いのではないでしょうか。
現在、実行可能な施策は多岐に渡り、1つの目標に対し様々な方法でアプローチ可能です。
例えば、売上アップを目標とした場合、考えられる施策には、以下のようなものが挙げられます。
- 顧客数を増やす
- 購入頻度を増やす
- 客単価を上げる

全て売上アップにつながる可能性のある施策ですが、全て実行する場合、時間をコストもかかってしまうことから、効果的な施策はどれか目星をつけた上でアクションを起こす必要があります。
どのアクションが効果的かを判断する際にデータは有用です。
データを確認することで、自社が抱えている課題が何か明確にすることが可能です。
城崎温泉の成功事例
データを活用した施策策定により売上アップを実現した事例の1つに城崎温泉があります。
引用:『ビッグデータ活用の本質とその進め方 ~城崎温泉の事例にみるデータ活用のポイント~』
城崎温泉は、兵庫県北部に位置する温泉街で、7ヶ所の外湯が有名です。
元々は一般的な温泉街の1つでしたが、現在は「ゆめぱ」と呼ばれるデジタル外湯券を発行するなどDX化を実現しています。
「ゆめぱ」によって顧客は現金を持たずに湯めぐりやお土産を購入できるようになり、また温泉側は顧客データの収集を実現しました。
獲得したデータから、顧客の行動データや城崎温泉内で開催したイベントの効果測定ができ、温泉街を活性化するために効果的な施策は何かを明確にすることができました。
例えば、イベントの効果測定により、花火などの立ち止まって楽しむイベントに比べ、灯籠流しなどの街を歩き回るイベントの方が売り上げに貢献することがわかりました。

顧客データの分析により、課題を明確にできることから、データマーケティングは施策の策定に役立ちます。
属人化の解決につながる
属人化とは、会社内で業務の内容やフローに関する情報共有ができていないことが原因で、一部の業務を特定の担当者もしくは限られた人員のみで対応しなければならない状況のことを指します。
大企業の場合、分業化が進んでいることが多く、それぞれの業務ごとに担当者がついていることが多いです。
しかし、業務の内容やフローについて共有できていない状況で、担当者が不在になった場合、属人化している業務をうまく処理できないリスクがあります。
企業のマーケティング業務を行う際も同様です。
特に、データを活用しない勘や経験に依存したマーケティングを行なっている場合は、担当者不在になった場合、それまで同様に対応することは至難の業です。
データを活用したマーケティングを行なっている場合、特定の人に依存しすぎないことから、常に安定して経営できます。
ワークマンの成功事例
引用:『WORKMAN』
作業服チェーン最大手のワークマンは、DX化により作業効率のアップを実現しました。
ワークマンはAIを使用した分析ツールではなく、Excelによるデータ分析により、DX化を実現しています。
社員全員にExcelを使用したデータ分析スキルを身につけさせることにより、属人化を防いでおり、発注にかかっていた時間を10秒まで短縮したり、他社と取引する際にデータを開示することで、発注でのミスを防ぐことにつながりました。
参考:『破竹の勢いワークマン 秘密は「エクセル」』
顧客のロイヤルティを高めることにつながる
データを活用することで、顧客のロイヤルティを高められる可能性があります。
顧客のロイヤルティは、ユーザーが特定の企業やブランドのサービス・商品に対して持つ信頼や愛着心を意味し、ロイヤルティの高いユーザーを増やすことで、顧客のリピート率の上昇、客単価の改善など様々なメリットを獲得可能です。
それでは、なぜロイヤルティの向上にデータマーケティングが有用なのでしょうか。
ロイヤルティはCX(Customer Experience)を改善することで向上します。
例えば、アフターフォローや商品購入後のメンテナンスなどがCXに該当し、販売している商品やサービス以外の部分で顧客に提供できる価値を意味します。
CXを改善するためには、提供している体験を分析し、課題を明確化した上で1つ1つ改善していく必要があり、その際顧客データが必要不可欠です。
参考:『顧客ロイヤルティとは?3つの向上施策と成功事例を解説』
CX改善施策の1つにカスタマージャーニーマップがあります。
カスタマージャーニーとは、ユーザーが商品やサービス、企業自体と出会ったタイミングから、商品やサービスを購入し、優良顧客になるまでのプロセスをまとめたものです。
カスタマージャーニーマップは、以下のステップで作成します。
- ペルソナの設定
- フェーズの設定
- フェーズごとにユーザーの行動を洗い出す
- 行動要因の分析
- 課題の洗い出し
獲得した情報をまとめると以下のようなマップを作成できます。
引用:『カスタマージャーニーならKARTE』
ペルソナの設定やフェーズごとのユーザー行動を洗い出す際はデータに基づき客観的に分析する必要があります。
カスタマージャーニーマップを作成することによるCX改善施策では、ユーザーの行動ごとにCX改善に対するアプローチ方法を策定でき、顧客のロイヤルティ改善につながります。
カスタマージャーニーをはじめ、CX改善施策について検討する上でデータは必要不可欠です。
関連記事:『ペルソナがなぜ重要なのか?LPの効果を高める作り方とポイント3選!』
スターバックスの成功事例
スターバックスはカスタマージャーニーマップの作成により顧客に対する理解を深めた企業の1つです。
スターバックスは、入店前から店を出るまでのユーザーの行動と感情をカスタマージャーニーマップによって可視化しました。
引用:『顧客行動を可視化する「カスタマージャーニーマップ」とは』
スターバックスはコーヒーの品質よりも店に訪れたユーザーのCXの方が重要であると考えています。
スターバックスに行くことでユーザーが獲得できるユーザー体験は以下の通りです。
- 購入するドリンク自体だけでなく店の雰囲気などから得られる購入体験のすべて
- 自分へのご褒美感や特別感
- どこにでもあり、どこでも同じ品質のコーヒーを楽しめる特別感
参考:『Buyer Psychology and Customer Value: Why Do People Buy Starbucks Coffee?』
皆さんの中にも、スターバックスに他のコーヒーショップにはない居心地の良さを感じている方や、特別感を感じている方もいるのではないでしょうか。
このような企業努力もあり、スターバックスは世界最大手のコーヒーチェーンに成長し、また国内でも、2022年10月時点で、国内最多の1,727店舗と2位のドトールの1,067店舗に大差をつけています。
データマーケティングのポイント
データマーケティングを行う際は、常にどのように情報を収集するか、また、収集した情報をどのようにユーザーに還元するかを意識するようにしましょう。
データを適切に収集し一元管理する
データマーケティングを実施する場合、もちろんデータ量も大事ですが、マーケティングを実施する目的と合致したデータを適切に収集することも非常に重要です。
データマーケティングで使用するデータには定量データと定性データの2種類があります。
定量データ
数値として把握可能なデータのことを指します。
商品の市場占有率や売上高などが定量データに該当します。
定性データ
数値で表すことができない質的なデータのことを指します。
「なぜ購入したか」など数値で表現できないデータが定性データに該当します。
参考:『定量データ/定性データ | 市場調査・日本リサーチセンター』
定量データと定性データはデータの収集方法が異なります。
定量データの場合、Googleアナリティクスなどのツールで簡単に収集可能です。
定量データを収集することで、誰が、何を、いつ、どこで購入したかについて把握できます。
定性データの場合、数値化できないデータであることから、ユーザーに対し直接アンケートを実施し収集することが一般的です。
顧客が何を考えて購入に至ったかなど心理面におけるユーザーの意見について把握できます。
参考:『顧客データ分析のポイントとは?4つの代表的な手法や活用事例を紹介』
関連記事:『アンケートLPの活用方法とは?設問の作り方と3つのメリットを紹介』

データ収集する際は、どちらのデータが欲しいか明確にした上で適切なアプローチでデータ収集するようにしましょう。
定量データと生成データは収集方法が異なることから、ニーズに応じて収集方法を工夫する必要があります。
また、データを効率的に使用するためには、収集したデータを一元管理することで効果的にデータを使用可能です。
Excelやデータ量が膨大で手動で管理することが難しい場合はツールを導入し、一括で管理可能な環境を構築するようにしましょう。
参考::『ビッグデータを使ったマーケティングのポイントと活用事例』
関連記事:『おすすめの広告効果測定ツール5種類!分析可能な項目もご紹介』
分析し施策に落とし込んで初めて価値があることを把握する
データは収集するだけでなく、使用して初めて価値を発揮します。
データを使用する際は、闇雲に扱うのではなく、様々な分析手法を参考にすることが効果的です。
具体的には以下のような手法があります。
- セグメンテーション分析
- RFM分析
- デシル分析
セグメンテーション分析
引用:『セグメンテーション分析が重要視される理由とは?成功事例も紹介!』
セグメンテーションとは日本語で区分を意味し、セグメンテーション分析ではその名の通り、様々な切り口を用いてセグメント化することによって分析する手法です。
セグメントごとに細かく分析できることから、多様化している消費者のニーズに対し、最適に分析可能です。
参考:『セグメンテーション分析とは?重要な理由や具体的な方法・成功事例を解説』
RFM分析
RFM分析とは、Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの軸を用いて分析する手法のことです。
顧客のポジションに応じて、優良顧客や優良顧客候補、休眠顧客などに分類し、それぞれの顧客にとって最適な施策を考案します。
デシル分析
引用:『顧客分析の手法(デシル分析、RFM分析)』
デシルはラテン語で10等分を意味する単語です。
デシル分析では、顧客を購入金額ごとに並べ10分割した上でそれぞれのグループごとに分析します。
売上の多い層に施策を実施するか、売上の少ない層に施策を実施するかは企業によって異なりますが、ペルソナを設定する上で有用な分析手法の1つです。
参考:『顧客分析の手法(デシル分析、RFM分析)』
データを獲得するだけではなく、様々な分析手法を用いて施策を設定することがデータマーケティングです。
データマーケティングの注意点
データマーケティングは有用な施策ですが、以下のポイントを踏まえて実施しなければ、会社にとってマイナスの影響をもたらす可能性があります。
過度にデータに依存することを避ける必要がある
データに依存しすぎてしまい、自ら考えることを放棄することは避けるようにしましょう。
データはあくまで新しい施策について検討する上での判断材料の1つです。
客観性が高いことから信頼度は高いものの、データ任せのマーケティングではデータマーケティングの価値が半減してしまいます。
例えば、アンケートを実施することにより「なぜ購入したか」など感情面についての定性データを収集できますが、1人1人と感情の機微までは表現できません。
そこで、生身の人間のクリエイティビティやイマジネーションを加えてデータマーケティングをすることで、これまで実現し得なかった深い分析を実現できます。
複数のツールを使いすぎない
データマーケティングを実施する際にはツールを使用することが一般的です。
データマーケティングをする際に使用するツールには、マーケティング活動を可視化・自動化するMAツール(マーケティングオートメーションツール)や、大量のデータを収集し分析することに特化したBIツール(ビジネスインテリジェンス・インテリジェンスツール)などがあります。
参考:『MAツールとBIツールの違いとは?それぞれの役割や導入メリットを解説』
これらのツールは業務効率化により手間を削減できることに価値がありますが、複数のツールを使用する場合、その分工数も増えてしまい、結果的に非効率的な施策になってしまうリスクがあります。

効率的なデータマーケティングを実施するために、可能な限り少ないツールでデータマーケティングを実施するように心がける必要があります。
まとめ
データマーケティングには施策の策定や属人化の改善など様々なメリットがあり、顧客との関係構築にも有用であることから、多くの企業で採用させているマーケティング方法です。
データの収集、分析により施策を策定するシンプルな手法であることから簡単に見えますが、必要なデータを収集し、適切に分析するためには知識が必要であり、きちんと教育する必要がある点に注意しましょう。
また、データに依存しすぎることも避ける必要があります。最大限にデータマーケティングを活用するためにも分析する人間は思考停止せず考え続けるようにしましょう。
また、この記事を読んで、データマーケティングを行うことは難しいと感じた場合や、よくわからないと感じた場合は、広告代理店に任せるのも1つの手です。
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監修者
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