LTV(ライフタイムバリュー)は1990年代頃からダイレクトマーケティング※において導入された指標です。
近年では企業活動の重要な指標の一つとして多くの企業に活用されています。
引用:『KIRIN Home Tap』
LTVを向上させている企業の例として、キリンビールの「KIRIN Home Tap」と呼ばれる月に二回ビールが配達される月額性のサービスがあります。
このサービスを利用しようと、数か月の予約待ちが起きており、安定した顧客のファン化とそれに伴う収益の獲得に成功しています。
本記事では、LTVについて計算方法や活用方法、重視される理由、向上させるカギについて解説しています。
参考:『LTV(Life Time Value)とは?重要性や向上させる方法を解説』
参考:『LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味や算出方法を解説』
関連記事:『【基礎】知っておきたいマーケティング用語一覧!33選を詳しく解説』
Contents
LTVとは
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は、顧客が一生涯で企業にもたらす利益を指す指標で、新規顧客獲得だけでなく、顧客の定着化を図るための重要な指標となっています。
顧客生涯価値の「生涯」は顧客が企業と取引を持つ期間を指し、「価値」は顧客が企業にとってどの程度利益をもたらすかを評価するために用いられます。
この概念の背景には、細分化されたユーザーの趣味趣向に沿って、一人一人にあった商品やサービスを提供する「パーソナライズ」の注目があります。
Netflix社は早くからパーソナライズに注力してきた企業の一つであり、2006年には賞金100万ドルのパーソナライズに関連したデータ分析コンテストを開催していました。
上記のようにWeb経由でソフトウェアの機能を提供するSaaS(Software as a Service)サービスにおいては、基本的にサブスクリプションモデルで契約から継続してユーザーが対価を支払う為、LTVは事業施策やサービスの満足度を図る重要な指標となります。
上記以外にも、リピート利用される商材を扱う小売業や飲食店、健康食品や化粧品を扱うECサイトで用いられることが多いです。
このLTVを把握することで、自社サービスの利益構造や優良顧客の傾向分析、さらには新たな顧客の獲得や維持のコスト設定などに活用でき、適切な経営判断を補佐します。
参考:『LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説』
参考:『今さら聞けない「LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)」 - デジタル時代を生き抜く基礎知識』
参考:『LTV(ライフタイムバリュー)とは?顧客維持に欠かせない指標と計算式』
参考:『ネットフリックスの知られざる挑戦 同じ映画でもサムネは十人十色』
重視するべき理由
既存顧客との関係維持
LTVは顧客との関係に重きを置くCRM(Customer Relationship Management :顧客関係管理)と親和性が高いと考えられています。
実際にLTV算出の用いられる指標には「顧客の購入単価」や「購買頻度」、「継続期間」などが挙げられます。
1:5の法則と顧客との関係維持
参考:『LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味や算出方法を解説』
マーケティングの通説には「1:5の法則」、新規顧客獲得のコストは既存顧客の関係維持コストに比べて約5倍かかるという法則があります。
そのため、一度関係を築いた顧客との良好な関係性を維持し、ロイヤルティを高めることは極めて重要です。
既に商品を購入した顧客は獲得コストが低く、長い期間で商品を購入し続けた場合は利益率も高い為、施策に注力することで収益性が改善することが期待されます。
なお既存顧客のリピート率は以下の計算式で求める事が可能です。
当月のリピート率 = 当月のリピート客数 ÷ 累計の新規顧客数 × 100
購入を促す為に既存顧客に独自のキャンペーンを行ったり、メールなどでお知らせを適宜行う等、関連商品や新製品への興味を引き出すことが必要です。
参考:『LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味や算出方法を解説』
ファン化の促進とロイヤルカスタマーの獲得
OEMやデジタルマーケティングツールの普及により、ブランドオーナーとしてのビジネス参入ハードルが低くなり、D2C(消費者直接取引)市場も盛況しています。
OEMとは、「Original Equipment Manufacturer」の略称で、メーカーであるOEMメーカーが発注元である他社の名義やブランドの製品を製造すること、もしくはその受託側の企業のことを指しています。
しかし、新規参入者の増加により市場競争は激化し、製品やサービスの均質化や規格化、低価格化を意味するコモディティ化や人口減少による市場縮小も進んでおり、新規顧客獲得の難易度とコストは増大しています。
このため、ファンや商品に対して強い愛着を持ち、他社に乗り換えることがないヘビーユーザーを指すロイヤルカスタマーの育成と顧客ロイヤルティの向上が重要となりました。
顧客体験向上を目指した囲い込み施策やCRM、DMPなどのデジタルツールの活用が普及しています。
CRMは「Customer Relationship Management」の略称であり日本語では顧客関係管理を意味しています。
顧客情報や行動履歴、顧客との関連性を管理することで顧客との関係を構築、促進することを指します。
DMPは「Data Management Platform」の略称であり、インターネット上に蓄積したマーケティングに有用な様々なデータを一元管理することのできるプラットフォームを指します。
これにより、パーソナライズされた施策の実施や顧客データの収集・分析が可能になり、LTVを用いた効率的な施策評価や指標管理が可能となりました。
参考:『OEM / オーイーエムとは? 意味、OEM生産のメリット、製品例』
参考:『コモディティ化とは 意味や発生原因・事例から考える回避術』
参考:『ロイヤルカスタマーとは?定義や戦略的な育成方法を紹介』
参考:『CRMとは?機能やSFAとの違い、メリット・活用方法まで』
参考:『【図解あり】DMPとは?何ができる?機能や導入メリット、注意点まで解説』
関連記事:『【広告運用に必須】DMPとは?3つのメリットと導入ポイントまで解説!』
サブスクリプションの普及
最近注目されているビジネスモデルにリカーリングとサブスクリプションがあります。
これらは長期的な契約関係を通じて収益の拡大や安定を狙うビジネスモデルであり、一般にリカーリングは従量課金制、サブスクリプションは定額制と理解されています。
引用:『NETFLIX』
特にサブスクリプションに関しては、「映像・動画配信」や「音楽配信」で利用するユーザーが多く、2023年の調査によるとサブスクリプションの国内市場規模は1兆円を超えると予測されています。
参考:『サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2023年)』
日本国内におけるビジネス市場規模も年々拡大しています。
消費者ニーズの変化に対応するため、「売り切り型」からビジネスモデルを転換し、継続的な契約関係を目指す企業が増えています。
こうした動きの中で、LTVは顧客維持施策が機能し、ビジネスの収益性が向上しているかを評価する基準として利用されています。
参考:『LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説』
関連記事:『【2024年版】Webマーケティングの今後の業界動向とは?4つの分野を解説』
3rd Party Cookie規制の影響
3rd Party Cookie(サードパーティークッキー)は、第三者によって発行・活用されるCookieのデータであり、ユーザーのWeb閲覧履歴をもとにして個人に最適化された広告を掲載するリターゲティング広告などの技術で使用されています。
しかし、プライバシー保護の観点からこの技術への規制が強まっているため、閲覧中のサイトでのみ機能する1st Party Cookieや既存の顧客データの活用が重要になります。
日本では2022年4月にCookieを規制する法律が施行されました。
詳細を知りたい方はこちら「令和2年個人情報保護法リーフレット」の情報を参考にしてください。
これにより外部集客が困難になり、既存顧客からの収益拡大がより重要となります。
その結果、顧客維持と収益状況の把握の観点から、LTV(顧客生涯価値)の活用が求められることでしょう。
参考:『LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説』
参考:『日本のCookie規制はいつから?リターゲティング広告への影響と代替手法』
LTVの計算方法
LTVの算出には幾つかの計算方法があります。
代表的な計算式は以下の式になります。
LTV=平均購入単価×収益率×平均購入頻度(回/年)×平均継続期間(年)
例
平均購入単価が10万円、収益率50%、平均購買頻度12回/年、平均継続期間5年
LTVは10万円×0.5×12×5 = 300 万円。
式からわかるようにLTVの値を見直す際には
- 平均購入単価を上げる
- 収益率を上げる
- 平均購入頻度を高める
- 平均継続期間を長くする
上記の方法が挙げられます。
アップセルとクロスセル
LTVは、アップセルあるいはクロスセルと呼ばれる営業手法を用いることで、平均購入単価を高めることができます。
アップセルとは、ユーザーがある商品に関して購入することを検討している場合いや、以前に商品を購入した場合に、より高価な上位モデルに乗り換えてもらう営業手法であり、平均購入単価の向上に役立ちます。
クロスセルとは、ある商品の購入を検討しているユーザーに対してほかの商品をセットで購入、もしくは新たに他の商品を単体で購入をしてもらうことで、平均購入単価を向上させる手法になります。
また、企業の商品やサービスに関してユーザーが価値を感じてもらうことができれば、平均継続期間と平均購入頻度を長くすることができます。
再購入を促す動機づけの例としてはロイヤリティプログラムへの招待や特別割引、プロモーションクーポンの配信、メール文章の最適化等が挙げられます。
参考:『LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味や算出方法を解説』
参考:『アップセル・クロスセルとは?顧客単価を向上させる方法と事例』
参考:『リピート購入を促す7つの最強戦略』
その他の計算方法
LTVの式はひとつではなく、以下に示すように複数存在します。
そのため、企業に適したものを利用する必要があります。
- LTV=顧客の平均単価(客単価)×平均購入回数
- LTV=顧客の年間購入額×収益率×顧客の取引継続年数
- LTV=顧客の平均購入単価(客単価)×購買頻度×契約継続期間
- LTV=(売上高―売り上げ原価)÷購入者数
具体的な例を二つ挙げます。
年間購入額が50,000円で収益率が40%、ユーザーとの取引継続年数が3年であることがわかっている場合。
LTV=顧客の年間購入額×収益率×顧客の取引継続年数の式
50,000×0.40×3 = 60,000
LTVは60,000円。
ECサイトの運営をしている際に、売上高が500,000円で売り上げ原価が100,000円で、商品を購入した人数が100人であることがわかっている場合。
LTV=(売上高―売り上げ原価)÷購入者数の式
(500,000 – 100,000) ÷ 100 = 4,000
LTVは4,000円。
企業の商品やサービスに合わせて、どのLTVの式を用いるのか、そしてLTVを向上させるために「購入単価」や「収益率」、「購買頻度」や「継続期間」、「購入者数」をどのように改善していくのかといった施策を考えることができます。
参考:『LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味や算出方法を解説』
参考:『今さら聞けない「LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)」 - デジタル時代を生き抜く基礎知識』
LTVの活用方法と向上のカギ
押さえておきたい点として、LTVの加算額が新規顧客の獲得にかかる費用や既存の顧客維持にかかる費用よりも上回ることが挙げられます。
LTV > 新規の顧客獲得にかかる費用 + 既存の顧客維持にかかる費用
また上記の関係を満たすためには以下の2種類の改善が考えられます。
- 購入単価や購入頻度、継続期間を改善してLTVを上昇させる
- 顧客の獲得や維持にかかる費用を見直して削減する
参考:『LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?意味や算出方法を解説』
LTV向上のカギ
購入単価の増加
引用:『STARBUCKS REWARDS』
スターバックスコーヒーでは、LTVを向上させることを目的とした施策の一つに会員プログラムである「スターバックスリワード」を展開しています。
このプログラムは、購入ごとにポイントが付与され、そのポイントを特典と交換できる仕組みを持ちます。
特定の時期にキャンペーンを設けるなどして、購入単価の増加を可能にしています。
現在では、スターバックスリワードの売り上げは全体の売り上げの40%を占めていると言われています。
平均顧客単価を上げるためには、価格の異なる複数の商品バリエーションを用意することも効果的です。
顧客は選択肢が増えることで購入しやすくなり、価格の高い商品を選ぶ可能性も高まります。
具体的には、「松竹梅の法則※」に基づき、高級品(松)、中級品(竹)、普及品(梅)の3つのラインナップを設けることで、中級品が選ばれやすくなる傾向があります。
一般に「松竹梅の法則」で選ばれる比率「松:竹:梅 = 2 : 5 : 3」だと言われており、真ん中の商品が選ばれる傾向があります。
顧客は「商品価格は安いに越したことはないが、品質は落としたくない」という心理から、高級品と普及品の中間である中級品を選びやすくなります。
また、カラーやサイズなどの商品展開を増やすことも、顧客の好みに合わせて購買を促し、購入者数の増加につながります。
参考:『会員数750万人の「スターバックス リワード」に学ぶ、ロイヤルティプログラムを通じたCX向上』
参考:『スターバックスなどの事例に学ぶ、顧客獲得とリピート化に役立つ4つのマーケティング手法』
参考:『ゴルディロックス効果』
参考:『【不動産仲介営業】“松竹梅の法則”とは? 提案時に有効な理由と注意点』
購入頻度の増加
引用:『Amazon Prime』
Amazonが展開する「Amazon Prime」は定額のメンバーシップサービスであり、映画や音楽のストリーミングサービスの他、無料の配送特典があり、ユーザーが配送料を気にすることなく購入をすることが可能になることから購入頻度の増加につながります。
実際に「Amazon Prime」を利用しているユーザーのLTVの算出結果では、2960ドルになると導出されました。
これは日本円で約32万円ほどになります。
その他にも、メールマガジンやSNSなどのコミュニケーションツールを用いて顧客に製品やサービスの存在を定期的にリマインドするリテンション施策が効果的です。
商品やサービスの利用を可能にする場所や時間、用途を拡大する情報を発信し、顧客に新しい利用機会や可能性を示すことや、ユーザーが商品を必要とするタイミングでメール配信を行うことなどが考えられます。
参考:『LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説』
参考:『LTV(ライフタイムバリュー)とは?顧客維持に欠かせない指標と計算式』
コスト削減
引用:『Customer Rings』
CRMツールを用いることで、ユーザーの情報を管理・分析し、その情報に基づいて商品やサービスの提案をすることや、施策を展開することでユーザーを獲得するコストや維持するコストを削減し、LTVの向上につながります。
引用:『NTTPC』
NTTPCコミュニケーションズは、CRMツールを利用し、自社でランディングページやホワイトペーパーのダウンロードフォームを作成することが可能になったことで、約2億円のコスト削減に成功しました。
また、原価をできるだけ抑制して、収益率を高めることも重要になります。
例として、モノづくりを行う企業では、商品の製造にあたり複数のメーカーで費用を打診する方法をとっています。
メーカー同士で価格競争を行わせることでよりコストがかからない原価で部品を調達することが期待できます。
参考:『LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説』
参考:『LTV(ライフタイムバリュー)とは?顧客維持に欠かせない指標と計算式』
参考:『【業界別】CRMの成功事例7選と、6つの活用ポイントを徹底解説』
まとめ
本記事では、LTVについて計算方法や活用方法、重視される理由、向上させるカギについて解説しました。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。