マルチチャネルとは、顧客とのタッチポイント、すなわち接点を複数もつことで、販売の機会を増やすマーケティング手法です。
米国のリサーチ会社EMERGEN RESEARCHの調べによると、マーケターの95%がマルチチャネル戦略はターゲティングの観点から効果的だと認識しているというデータがあります。
多くのマーケターが支持するマルチチャネル戦略ですが、活用するにはメリットだけでなくデメリットも理解することが重要です。
そこで、今回の記事では、マルチチャネルの特徴、また混同されやすいオムニチャネルとの違いについてご紹介します。
「自社でもマルチチャネルを導入したい」「Webマーケティングでマルチチャネルを実施したい」という方は、ぜひご一読の上、ご活用ください。
参考:『マルチチャネル注文管理市場コンポーネント別 (ソフトウェアおよびサービス)、組織規模別 (大企業および中小企業)、展開モード別 (オンプレミスおよびクラウド)、および地域別 2030 年までの予測』
参考:『マルチチャネルとは?意味や戦略・成功のポイントを解説』
関連記事:『【2024年版】Webマーケティングの今後の業界動向とは?4つの分野を解説』
Contents
マルチチャネルとは
マルチチャネルの「チャネル」とは顧客を集客するための媒体や経路を意味します。
そして、マルチチャネル戦略とは、顧客とのタッチポイントを複数持つことで、サービスや商品の認知度を高め、コミュニケーションの機会を増やし、販売につなげるためのマーケティング手法を意味します。
マルチチャネルには、リアルなものからWeb上のものまで、あらゆるタッチポイントが含まれます。
主なマルチェネル
チャネル | リアル | Web | その他の媒体 |
販売 |
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広告 |
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コミュニケーション |
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マルチチャネル戦略では、用途や目的に応じてこれら複数のチャネルを使い分けて、顧客に効果的にアプローチする仕組みを設計します。
特に、コロナ禍を経て、オンライン上でのコミュニケーションの需要が上昇し、マルチチャネルにおけるWebマーケティングの重要性が高まりました。
実際に、経済産業の調べによると、物販系分野のBtoCにおけるEC市場規模は、2021年の13兆2,865 億円から2022年にかけて5.37%増加し13 兆9,997億円となり、右肩上がりに成長しているというデータがあります。
このような背景から、マルチチャネル戦略において、Webマーケティングも重視していくことが大切です。
参考:『マルチチャネルとは?意味や戦略・成功のポイントを解説』
参考:『マルチチャネルとは?クロスチャネル・オムニチャネルとの違いや活用ポイントについて解説』
参考:『マルチチャネルとは?マルチチャネルマーケティングの仕組みや実例』
参考:『令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』
関連記事『【基礎】知っておきたいマーケティング用語一覧!33選を詳しく解説』
マルチャネルとオムニチャネルの違い
オムニチャネルとは、ECサイト、リアル店舗、アプリなど全てのチャネルを連携し一貫した購入体験、ブランド体験を提供する販売戦略のことです。
以下にマルチチャネルとオムニチャネルの違いを一覧にしました。
マルチャネル | オムニチャネル | |
チャネル | 各チャネルが独立 | すべてのチャネルを統合 |
顧客体験 | 商品・サービスの購入体験 | 一貫した顧客体験 |
データ分析 | チャネルごとのデータ収集と分析 | 一元化されたデータ収集と分析 |
マルチチャネルは「商品・サービス」を中心としてチャネルごとに「購入意欲を高めてもらう」ように働きかけるマーケティング戦略です。
マルチチャネルの目的は、顧客とのタッチポイントを増やすことで、商品の購入機会を増やしたり、認知度を高めることです。
一方、オム二チャネルは「顧客」を中心とした考え方で、全てのチャネルにおいて「一貫した顧客体験を提供する」マーケティング戦略です。
オムニチャネルの目的は、顧客が商品の認知から検討、購入に至る各プロセスとタッチポイントで、どのチャネルを利用しても一貫した顧客体験を提供することです。
オムニチャネルを最適化することで、顧客満足度向上、ブランド体験を向上が図れ、ブランドのファンを醸成することで販売につなげることが期待できます。
しかしながら 、マルチャネルとオムニチャネルはどちらが優れているというものではありません。
マルチャネルとオムニチャネルのいずれを選ぶべきか、自社の商品・サービスや状況に合わせたマーケティング戦略を選択することが重要だと言えます。
参考:『オムニチャネルとマルチチャネルの違い:実例と共に解説』
参考:『マルチチャネルとオムニチャネル: 違いは何ですか?』
参考:『【業界別】オムニチャネルの成功事例と注意点・成功の秘訣をまとめて紹介!』
参考:『大手4社から学ぶオムニチャネルマーケティング事例の解説』
参考:『ニトリ3月期決算、客数減と円安で減収減益 36年連続増収ストップ』
オムニチャネルについて詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
関連記事:『オム二チャネル戦略とは?3つのメリットや成功事例まで解説』
マルチチャネルの4つのメリットとは
マルチチャネル戦略には主に4つのメリットがあります。
以下にそれぞれご紹介します。
- 販売の機会を拡大できる
- 顧客の購買体験を向上できる
- チャネルごとに購買行動を分析できる
- 新規顧客を獲得できる
販売の機会を拡大できる
マルチチャネルでは、顧客の行動に対応したタッチポイントを複数設けるため、販売の機会を増やせるというメリットがあります。
例えば、アパレル企業の場合、リアル店舗での販売は、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
リアル店舗
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ECサイト |
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上記のように、リアル店舗には、商品の質感を実際に体感できるというメリットがあります。
一方、ECサイトには、時間と地理的な制約がないというオンラインならではのメリットがあります。
ECとリアル店舗の特性を理解し、両立することによって顧客に効果的にアプローチでき、販売の機会を最適化することができます。
アパレル企業のリアル店舗とECサイトでの販売率は実際のところは、どうなのでしょうか?
経済産業省の調べによるとアパレル業界におけるEC化率は、2021年に21.15%であったのが、2022年には21.56%と上昇傾向にはあります。
一方、矢野経済研究所の調査で、2022年の国内アパレルにおける百貨店、専門店などのリアル店舗における市場規模は、2022年に8兆591億円で、前年比105.9%で2年連続で前年を上回り、回復基調にあることが明らかになりました。
これは、コロナ禍を経て、Webマーケティングとリアル店舗を活かしたマルチチャネル戦略をとるアパレルが増加しているからだと考えられています。
例えば、ECサイト上の商品をリアル店舗に取り寄せて、試着してから購入できるサービスや、サイト上から来店予約をして、ショップでスタッフによるスタイリング提案を受けられるサービスなどWebとリアルのチャネルを組み合わせる施策が多く取り入れられるようになりました。
引用:『株式会社ワコールホールディングス』
具体例として、株式会社ワコールホールディングスの取り組みをご紹介します。
同社では、リアル店舗で3D SCANをしてAIが診断した骨格タイプデータを元に、ファッションのポイントやおすすめサイズをアドバイスするというサービスを提供しています。
その告知と予約はWeb上で行っており、オンラインからリアル店舗への集客を図っています。
このように、リアル店舗とオンラインを活用したマルチチャネル戦略には、顧客にとっての利便性とサービスの幅を高め、売上向上につなげることができるというメリットがあります。
参考:『【2023年最新】アパレルECの市場規模とEC化率は?成功している企業や課題、よくある質問をご紹介』
参考:『マルチチャネルとは?クロスチャネル・オムニチャネルとの違いや活用ポイントについて解説』
参考:『ECサイトとリアル店舗のメリット・デメリット|ECとリアルの違いを解説』
参考:『SCANBE わたしを知る骨格診断』
参考:『国内アパレル市場に関する調査を実施(2023年)』
関連記事:『ECサイト、LPの3個の違い!メリットと使い分けを解説!』
顧客の購買体験を向上できる
マルチチャネルにより顧客に複数のタッチポイントを提供することで、購買体験の質を高めることができるというメリットがあります。
例えば、顧客がWebで知った商品やサービスを、店舗で接客を受けながら実際に試すことができるようにすることで、納得した上で意思決定ができるため、購入時の満足度が高くなる可能性があります。
実際にどのようなマルチャネル戦略が、顧客満足度を高めることができるのか、先にご紹介した経済産業省の調べにおける、化粧品メーカーの例で見てみましょう。
化粧品メーカー各社は、コロナ禍において、リアル店舗での売上減少に対応するた め、EC化に注力し、2021年に7.52%であったEC化が8.24%と市場規模が前年比7.48%増になりました。
従来は、百貨店などのリアル店舗での接客が中心であった化粧品メーカー各社ですが、コロナ禍を経て、Webマーケティングにおけるマルチチャネルに注力するようになりました 。
例えば、メークアップシミュレーション、チャットなどを、顧客の悩みや相談をリモートでも解決できるような取組みが多くなされています。
引用:『日本ロレアル株式会社』
具体例として、日本ロレアル株式会社のブランドである「ランコム」では、Web上で肌診断を提供すると同時に、店舗での肌集中ケアをオンラインから予約できます。
このようにマルチチャネルには、顧客と複数のタッチポイントを持つことで、購買体験の質を高め、顧客満足度を向上できるというメリットがあります。
参考:『令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』
参考:『マルチチャネルとは?具体例、メリット、導入法、成功のポイントを解説』
参考:『マルチチャネルとは?マルチチャネルマーケティングの仕組みや実例』
参考:『ランコムが誇る肌測定、お手入れ体験を。』
関連記事:『【初心者向け】カスタマーマーケティングとは?代表的な4つの施策を解説』
チャネルごとに購買行動を分析できる
マルチチャネルはそれぞれが独立したタッチポイントのため、広告効果や顧客の購買行動を、チャネルごとに分析できるというメリットがあります。
そして、その分析データを元に各チャネルの課題を洗い出し、施策立案に活用できます。
引用:『Zenken株式会社』
リアル店舗におけるデータ分析のトレンドに、AIカメラがあります。
Zenken株式会社のAIカメラでは、来店者数のカウントや性別・年齢、購入までの導線など、店舗での顧客の状況を把握し・分析が可能です。
そのデータを元に、店内レイアウトやPOPをターゲットの状況に合わせて改善し売上の向上につなげることができます。
引用:『Google合同会社』
一方、オンラインにおけるデータ分析の代表例に、Googleアナリティクスがあります。
Googleアナリティクスとは、Webサイトとアプリからデータを収集分析し、レポートを作成することができるプラットフォームです。
実際、Google アナリティクスのデータはどのような施策に有効なのでしょうか?
コンサルティング会社の株式会社才流が、グローバル展開をするジュエリー・ウォッチブランドのマーケティング責任者にインタビューを行ったECサイト改善例をご紹介します。
同社がGoogle アナリティクスのデータを分析したところ、購入までの導線で離脱率が特に高いページが「配送先指定」の画面であることが明らかになりました。
配送先指定のページはもともとギフト用に作られていたものでしたが、ギフト需要が落ちていたので導線が細くなっていたのです。
そこで、カートの購入までのステップ全体をGoogleアナリティクスで分析し、導線を改善したところ、130%CVR(コンバージョンレート)が向上し、売上も2倍になったと言います。
このように、マルチチャネルには、各タッチポイントで得たデータを分析し、最適な施策を打つことで売上を向上できるというメリットがあります。
参考:『マルチチャネルとは?クロスチャネル・オムニチャネルとの違いや活用ポイントについて解説』
参考:『Googleアナリティクスの仕組み | アナリティクスヘルプ』
参考:『アナリティクス』
参考:『【分析で売上2倍】Googleアナリティクス活用事例』
関連記事:『RFM分析とは?3つの指標による顧客分析を初心者向けに解説』
新規顧客を獲得できる
マルチチャネルは、まだ自社の提供する製品やサービスのカテゴリーを利用したことのない見込み顧客を、複数のチャネルを設けることで引き込んだり、競合他社の既存顧客を獲得する機会を増やせるというメリットがあります。
ザ・CMOサーベイによると、米国のマーケティング業界を牽引する314人に調査したところ、61%の企業が、「利用するチャネルの数が増えており、その重要性が増した」と回答したと述べています。
特に、BtoCサービスでその傾向が高く、チャネルの拡大率は77%でした 。
顧客が企業とコミュニケーションを取る際に、SNS、チャットツールなどタッチポイントを自ら選択する機会が増えています。
同調査では、そのためチャネルを複数設けることによる新規顧客獲得のメリットが高まっているとしています。
参考:『マルチチャネル化のメリットは?顧客対応に欠かせない理由も解説』
参考:『マーケターが知るべきチャネル戦略の新潮流』
関連記事:『【初心者向け】デジマ(デジタルマーケティング)4つのメリット』
マルチャネルの3つのデメリットとは
このようにメリットの高いマルチチャネルですが、一方で注意しなければいけないデメリットがあります。
- コストがかかる
- 顧客情報の共有が難しい
- 在庫・出荷管理が難しい
コストがかかる
チャネルを複数持つことにより販売が拡大するというメリットがある一方、チャネルを増やすにはコストがかかるというデメリットがあります。
先の経済産業省の調査結果で、アパレルのEC化が進んでいるというデータがありました。
その一方、日本において『Café Kitsuné』や『nicoand…COFFEE』など、リアル店舗で、カフェを併設するアパレルブランドが増えています。
ザ・CMOサーベイによると、米国のデータではありますが、28%の企業が新たな対面式のチャネルを開設しているという興味深い調査結果もあります。
その理由として、顧客は毎日5000〜1万件の広告にさらされており、デジタル広告への疲弊から、対面式のチャネルを維持することで、集客やブランドイメージの向上が期待できるからだとしています。
また、あくまで目安ではありますが、飲食店の開業資金は、家賃20万円で15坪(居抜き物件)の場合、約783万4,000円というデータがあります。
あえてリアル店舗などの新チャネルを設ける場合、このようなコストに対して、十分なリターンを望めるかどうかを試算することで、マルチチャネルのデメリットを超えたメリットを得ることが期待できます。
参考:『マーケターが知るべきチャネル戦略の新潮流』
参考:『マルチチャネルとは?メリットや活用のポイントなどを解説』
参考:『アパレルカフェとは?アパレル企業がカフェを併設する理由やおすすめのアパレルカフェを紹介』
参考:『リアル店舗の開業に必要な資金額はいくら? 開店・運営の各コストを計算しよう』
顧客情報の共有が難しい
マルチチャネルでは、各タッチポイントが独立しているため、保存している顧客情報がチャネル間で共有されない状況になるというデメリットがあります。
例えば、カスタマーサービスで、メールとLINEからの問い合わせ情報が一元化されていないという状況があるとします。
そのような環境においては、顧客がメールで問い合わせをした後に、LINEで追加情報を送っても話が通じないということが起こりえます。
顧客窓口間で十分な情報共有がなされていない場合、クレームとなるだけでなく、企業の信用にも傷がつくというリスクがあります。
しかしながら、このようなタッチポイントごとの顧客情報管理の問題は、ツールを利用することで克服できます。
一元管理ツールの例
引用:『株式会社インゲージ』
株式会社インゲージの「Re:lation(リレーション)」は、メール、LINE、電話など、10種類のチャネルからの問い合わせを一画面に集約し、複数のユーザで共有し、管理できます。
参考:『マルチチャネル化のメリットは?顧客対応に欠かせない理由も解説』
参考:『マルチチャネルとは?オムニチャネルとの違いやメリットも解説』
在庫・出荷管理が難しい
販売チャネルを複数持っている場合、在庫と出荷管理が難しいというデメリットがあります。
例えば、自社のECサイトに加え、Amazon、楽天など複数のECモールに出店している場合、複数のチャネルから同じタイミングで注文が入り、実は在庫が不足しているという状況になる可能性があります。
しかしながら、このようなデメリットは、複数のECチャネルを一元管理できるツールを導入することで克服できます。
一元管理ツールの例
引用:『株式会社コマースロボティクス』
株式会社コマースロボティクスの提供するCyberLogi(サイバーロジ)では、多様なECサイト間における販売可能な在庫を自動修正し、自動出荷できます。
更に、倉庫への入荷数、返品数も販売可能在庫を自動修正してくれるので、マルチチャネルを効率よく運営できます。
参考:『マルチチャネルとは?メリットや活用のポイントなどを解説』
参考:『マルチチャンネル一元管理』
関連記事:『マーケティングの4P・4Cとは?それぞれ4つの活用方法をわかりやすく解説!』
まとめ
この記事を読んで、マルチチャネルの最適化が難しいと少しでも感じたら、広告代理店に任せるのも一つの手です。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。