コホートとは統計学の分析手法の一つで、元々は古代ローマの歩兵隊の単位を指す言葉から派生した用語です。
のちに「集団」という意味を持つようになり、コホート分析という研究方法が生まれました。
コホート分析ではWebサイトを訪れるユーザーの行動に焦点を当て、サイトの現状やユーザーの特性を理解するのに役立ちます。
また、同じ時期に生まれた人々の生活様式や意識、行動から消費動向を調査し特定の世代の特性を分析することができます。
Webサイトやアプリを運営するうえで、以下のような悩みをお持ちの方は、ぜひこの記事を読み、コホート分析を活用してみて下さい。
- 自社のWebサイトやアプリを離脱するユーザーが多い
- 自社のWebサイトやアプリに訪れたユーザーの行動パターンを把握したい
- コホート分析は聞いたことはあるけど、活用方法が分からない
本記事ではコホート分析に関して、コホート分析が重要である理由や、メリット、3つの活用方法、実際の利用手順について解説しています。
参考:『コーホート分析とは?やり方や活用方法・参考事例を分かりやすく解説』
参考:『コホート研究 / コーホート研究』
自社の商品・サービスの市場を把握し、立場を明確化できるSTP分析については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:『【初心者向け】STP分析とは?各項目の分析方法や4つの指標を解説!』
Contents
コホート分析とは
「コホート(cohort)」という用語は、同じ時期に特定の経験を共有する人々の集団を指します。
コホート分析はこの概念を基に、個人や集団を特定の属性や条件によってグループ分けし、そのグループの行動や意識が時間の経過とともにどのように変化するかを観察する分析手法です。
グループの分け方としては、「同じ時期にアプリをダウンロードしたユーザー」「同じ時期にサイトにアクセスしたユーザー」などがあります。
Webマーケティングにおける顧客分析を始め、疫学、心理学や社会学の分野で広く使用されています。
目的に応じてコホートの種類や分析期間を設定することで、各コホートに属するユーザーが時間の経過に対してどのような行動をするのか知ることができます。
参考:『コーホート分析』
参考:『コホート分析とは?ユーザーの動向を正しく把握し、施策に活かす方法』
以下の記事は、コホート分析を含む顧客分析について解説していますので、是非この機会に合わせてご覧ください。
関連記事:『顧客分析とは?ユーザー行動を紐解く7つの手法と注意点をプロが解説』
コホート分析で得られる情報
コホート分析を使用することで、ユーザーの時間経過に伴う行動パターンを可視化し、ユーザーの維持率を把握することが可能です。
以下は、コホート分析から得られる情報の例です。
- ユーザーがWebサイトやアプリに訪れて離脱したタイミング
- Webサイトの閲覧数が減少するタイミング
- Webサイトに再訪問したユーザーの数やタイミング
コホート分析によって、自社の商品やサービス訴求内容・ユーザーへのアプローチ方法の改善点を洗い出し、ユーザーの維持率を向上させるための施策を打ち出すことができます。
Webサイトやアプリを運営するにあたり、売上げの向上や、安定化を目指すにはリピーターの獲得が重要となります。
参考:『【顧客分析】コホート分析とは | 活用方法とGoogleアナリティクスでの分析例』
関連記事:『【初心者向け】カスタマーマーケティングとは?代表的な4つの施策を解説』
コホート分析の方法
参考:『Cohort Analysis Breaking down data from a dataset into related groups for analysis』
上記の表は架空のソフトウェア会社の顧客約5,000人を無造作に抽出して対象にしたデータベースです。
各顧客のサービス開始月ごとにグループ(コホート)化し、最後にアクティブな状態にあった割合を月ごとの表にしています。
全体としては、月が経過するごとにサービスのアクティブ率が減っていく傾向が見られます。
そのような中で、7月にサービスを開始したコホートと12月にサービスを開始したコホートで、4か月後にアクティブであった割合が20ポイント以上高くなっています。
このとき例えば7月と12月にプロモーション施策を導入したことが分かれば、施策の効果によってユーザーの離脱を防ぐ結果になったことが分かります。
参考:『Cohort Analysis Breaking down data from a dataset into related groups for analysis』
コホート分析が重要である理由
コホート分析が重要な理由として以下の2つが挙げられます。
- 時間経過ごとにリテンションレートを把握することが可能
- サービスチャーンレートをグループごとに計測可能
それでは、解説していきます。
関連記事:『【基礎】アクセス解析をマーケティングに活かす4つのポイント』
時間経過ごとにリテンションレートを把握することが可能
コホート分析を用いることで、時間の経過に伴うリテンションレート* (既存顧客維持率)を把握できます。
リテンションレートは以下の式で求めることができ、ユーザーがどれだけ繰り返しサービスを利用するかの目安などに使用されます。
コホート分析ではキャンペーンごとや流入時期、ユーザーの属性のグルーピングを行った上で、時間と共にリテンションレートがどう変化していくか確認することができます。
この分析結果を活用することで、ユーザーが必要とする適切な改善策を実施し、より多くの顧客を引きつけ、売上を伸ばすことが可能になります。
参考:『コホート分析とは?顧客行動を把握して維持対策に活かす』
参考:『リテンションマーケティングとは【事例あり】効果や手法などを解説』
参考:『コホート分析とは?ユーザーの動向を正しく把握し、施策に活かす方法』
参考:『コンテンツマーケティングのKPI設定方法は?KPIに使える指標も解説』
サービスのチャーンレートをグループごとに計測可能
コホート分析は、SaaS(クラウドベースのソフトウェアサービス)やサブスクリプションビジネス(定期的な料金で商品やサービスの利用権を提供するモデル)が普及するにつれて、重要性を増しています。
これらのビジネスモデルは、顧客が継続してサービスを利用することに依存しているため、ユーザーの行動を正確に理解し、それに基づいてサービスを改善することが不可欠です。
このプロセスにおいて、コホート分析が重要な役割を果たします。
コホート分析を通じて、ユーザーがサービスを再利用するきっかけや離脱するポイントを把握することができます。
チャーンレート分析とコホート分析
SaaSやサブスクリプションのサービスにはチャーンレート(顧客がサービスを解約する割合)という指標が存在します。
チャーンレートとは、自社サービスの利用を停止したユーザーの割合を示します。
チャーンレートは重要な指標ではあるのですが、サービスが急成長し新規顧客の割合が多い段階に比べて既存の顧客が多い段階のチャーンレートが低く出てしまう欠点があります。
なぜなら一過性の新規ユーザーはすぐにサービスを解約しやすい傾向にあり、逆に既に定着したユーザーは相対的に解約が少なくなるからです。
そのため、チャーンレートの追跡だけでは、既存顧客が増えるにつれて全体のチャーンレートが改善しているように見えてしまう可能性があります。
このとき、サービス購読開始時期によってユーザーをグループ(コホート)分けし、時間の経過と共にチャーンレートがどのように変化しているかを確認することで、サービスの発展段階の影響を受けずに各グループの維持率を分析することが可能になります。
例として、「2023年1月に利用を始めたユーザー」のコホートと「2023年7月に利用を始めたユーザー」のコホートを比較してチャーンレートが低い結果となれば、半年の期間内でチャーンレートの改善がなされたことを確認することできます。
よってこのアプローチにより、時間経過に伴うチャーンレートの改善をより正確に把握できます。
参考:『コホート分析とは?意味や活用例をわかりやすく解説』
参考:『コホート分析とは?ユーザーの動向を正しく把握し、施策に活かす方法』
コホート分析の活用方法
コホート分析の3つの活用方法を解説して行きます。
- ユーザー離脱に対して施策を立てる
- コホートごとのLTVにより施策の有効性を判断する
- 新規顧客獲得数の必要数を把握する
ユーザー離脱に対して施策を立てる
コホート分析を用いて、ユーザー離脱のタイミングを把握することは重要です。
タイミングを知ることで、ユーザー減少を防ぐための対策を打つことが可能になります。
例➀:ブログサイトでユーザーが獲得されてから数日後に減少傾向にある場合
ブログサイトでユーザーが獲得されてから数日後に減少傾向にある場合、ユーザーの離脱防止のため、以下のような施策をたてることが有効です。
- 減少するタイミングで新コンテンツを投入する
- 投稿頻度を高める
例➁:ユーザーのWebサイトの滞在時間が短い場合
ユーザーのWebサイトの滞在時間が短いと、ユーザーにアピールしたい内容を見てもらえていない可能性があります。
ユーザーのWebサイト滞在時間を延ばすために以下のような施策が考えられます。
- 最適化された内部リンクを増やす
- ユーザーのニーズにあうコンテンツを作成・増やす
コホート分析を使用することで、アクションが必要なタイミングを知り、適切な施策内容を検討できるため、ユーザーの離脱を防ぎ、リテンションレートを高めることが期待できます。
参考:『コホート分析とは?顧客行動を把握して維持対策に活かす』
参考:『コホート分析とは? | Googleアナリティクスでユーザーの維持率をチェック』
参考:『【顧客分析】コホート分析とは|活用方法とGoogleアナリティクスでの分析例』
参考:『コホート分析とは?分析効果や方法、活用事例をわかりやすく解説』
参考:『コホート分析の事例を解説!グロースハックの成功例は?活用法を確認して転職後マーケターの即戦力になろう』
関連記事:『SEO対策に必須のChrome拡張機能8選!具体的機能も含めて紹介』
コホートごとのLTVにより施策の有効性を判断する
Webマーケティングにおける重要な指標の一つであるLTV(顧客生涯価値)の分析は、施策の長期的な効果を判断する上で不可欠です。
活用法の例としては、夏季と冬季のキャンペーンを比較した場合、初めて購入したユーザーを夏季と冬季のコホートに分けて分析することで、どちらのキャンペーンがユーザーのLTVにより良い影響を与えたかを明らかにすることができます。
夏のキャンペーンで獲得したユーザーが冬のキャンペーンと比べて定着率が高いことが分かった場合、夏のキャンペーンに重点を置くことでより大きな利益が期待できます。
ECサイトではコホートをキャンペーンごとに設定し、ユーザーが定着しているかどうかや、月ごとのコンバージョン率、購入金額がどのように変化しているかどうかなどを追跡することで、どの施策がLTVを高めるのに効果的かを判断することが可能です。
参考:『【初心者でもわかる】コホート分析の使い方、分析方法や効果を徹底解説』
参考:『コホート分析とは?顧客行動を把握して維持対策に活かす』
参考:『【顧客分析】コホート分析とは|活用方法とGoogleアナリティクスでの分析例』
参考:『How to Perform Cohort Analysis & Calculate Customer LTV in Excel』
LTVについて詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
関連記事:『LTV(ライフタイムバリュー)とは?重視すべき4つの理由を紹介』
新規顧客獲得数の必要数を把握する
コホート分析を用いてユーザーの離脱率を分析することにより、将来的な避けられない離脱数を把握することができます。
コホートごとの時間経過による継続率の変化を表にすることで、顧客離脱を可視化することができます。
たとえば、コホート分析の結果、あるWebサイトでは14日後にユーザーの半数が離脱することが分かったとします。
このデータがあることで、将来的にに生じる離脱数を推計し、サービス維持に必要な新規顧客数を推測して計算することが可能になります。
参考:『【初心者でもわかる】コホート分析の使い方、分析方法や効果を徹底解説』
参考:『コホート分析とは? | Googleアナリティクスでユーザーの維持率をチェック』
参考:『【顧客分析】コホート分析とは|活用方法とGoogleアナリティクスでの分析例』
Googleアナリティクスでコホート分析を行う手順
コホート分析の方法は複数ありますが、本記事ではGoogleアナリティクスでコホート分析を行う手順について解説します。
Googleアナリティクス
Googleが提供するGoogleアナリティクスに、無料でコホート分析を行う機能が存在します。
Googleアナリティクスでは以下の条件でコホートを作成することができます。
- ユーザーを獲得した日付
- イベントの発生
- トランザクションの発生
- コンバージョンの発生
コホートデータ探索では、各コホートを日、週、または月単位でグループ化します。
データ表には、データ探索期間内の各コホートに属するユーザー数が表示されます。
データ表の各セルには、データ探索を開始した日以降にリピートの条件を満たしたユーザー数が示されます。
たとえば粒度を日単位(「毎日」)に設定した場合、1 月 1 日のコホート(行)の [日 1] 列には、1 月 1 日に登録条件を満たし、かつ 1 月 2 日にリピートの条件を満たしたユーザー群が表示されます。
ユーザーは、登録条件を満たすすべてのコホートに割り当てられます。
たとえば、登録条件にトランザクションを選択すると、データ探索期間に毎週トランザクションを完了したユーザーは、表の各行(コホート)に割り当てられます。
参考:『コホート分析とは?顧客行動を把握して維持対策に活かす』
参考:『[GA4] コホートデータ探索 | アナリティクスヘルプ』
Googleアナリティクス4の特徴や設定においての注意点については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:『Googleアナリティクス4の特徴は?設定と6つの注意点を解説』
Googleアナリティクスを実際に利用する際の手順
Googleアナリティクスを利用する際は以下の7つの手順でコホート分析を行うことができます。
- Googleアナリティクスにログイン
- 「検索」をクリック
- 「テンプレートギャラリー」を選択
- 「コホートデータ探索」を選択
- 「コホートへの登録条件」を設定
- 「リピートの条件」を設定
- コホート分析
➀Googleアナリティクスにログイン
Googleアナリティクスにログインします。
➁「検索」をクリック
画面左に表示されるメニュー欄から、「検索」を選択します
➂「テンプレートギャラリー」を選択
画面右上にある「テンプレートギャラリー」のクリックを行います
➃「コホートデータ探索」を選択
テンプレートの中から、「コホートデータ探索」をクリックして選択します。
➄「コホートへの登録条件」を設定
コホートにユーザーを追加する条件となる、コホートへの登録条件を選択し、初期条件を定義します。
登録できるコホートへの登録条件は以下の通りです。
コホートへの登録条件 | 内容 |
初回接触(ユーザー獲得日) | アプリまたはWebサイトを初回利用(使用中のGoogleアナリティクスプロパティの測定範囲内で)したユーザーを、その発生日時で登録 |
すべてのイベント | データ探索対象期間中に、なんらかのイベントを発生させたユーザーを初回発生日時で登録 |
すべてのトランザクション | データ探索対象期間中に、なんらかのトランザクションイベントを発生させたユーザーを、その初回発生日時で登録 |
すべてのコンバージョン | データ探索対象期間中に、なんらかのコンバージョンイベントを発生さえたユーザーを、その初回発生日時で登録 |
その他 | 特定のイベントを発生させたユーザーを登録 |
参考:『[GA4] コホートデータ探索 | アナリティクスヘルプ』
➅「リピートの条件」を設定
追加したユーザーに対して、引き続きコホートに残る条件を設定します。
設定できるリピートの条件は以下の通りです。
リピートの条件 | 内容 |
すべてのイベント | データ探索対象期間中に、イベントを1件以上発生させたユーザーをカウント |
すべてのトランザクション | データ探索対象期間中に、トランザクションイベントを1件以上発生させたユーザーをカウント |
すべてのコンバージョン | データ探索対象期間中に、コンバージョンイベントを1件以上発生させたユーザーをカウント |
その他 | データ探索対象期間中に、特定のイベントを発生させたユーザーをカウント |
参考:『[GA4] コホートデータ探索 | アナリティクスヘルプ』
⑦コホートの分析
日付ごとのコホートに対して、コホート分析を行い、ユーザー行動の時間変化を確認します。
参考:『[GA4] コホートデータ探索 | アナリティクスヘルプ』
関連記事:『Googleアナリティクス4でランディングページの分析を行う4STEP』
まとめ
本記事ではコホート分析に関して、コホート分析が重要である理由や、メリット、活用方法、実際の利用手順について解説しました。
あらためて、コホート分析の3つの活用方法をおさらいしておきましょう。
- ユーザー離脱に対して施策を立てる
- コホートごとのLTVにより施策の有効性を判断する
- 新規顧客獲得数の必要数を把握する
Webサイトやアプリを運営していく中で、ユーザーの定着率を高めるのは、収益を向上させるためにも重要となります。
コホート分析を用いて、獲得したユーザーの時間経過に伴う行動を把握し、リピーターを増やすための改善策をたてましょう。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。