自社の課題を分析し戦略を立てる際に使用されるSWOT分析。
提唱から50年以上経った今もなお多くの企業が活用している経営戦略のフレームワークです。
参考:『SWOT分析(えすだぶりゅーおーてぃーぶんせき) – ITmedia』
自社の強みや弱み、そして市場の状況などを一括で把握できるため、事業の今後の方向性を決定する際に有効で、事業計画書の作成などにより、融資を申し込む場合や、社内でビジョンを共有する場合などで使用されます。
SWOT分析は経営戦略を立てる手法としてポピュラーであるため、名前を聞いたことはあるものの、何をどのように分析するのか、またどのように経営に活用するかわからない方も多いのではないでしょうか。
当記事では、経営戦略を立てる際に重要なSWOT分析についてやり方とポイント、活用事例について紹介します。
参考:『【図解&テンプレ付き】SWOT分析とは? 時代遅れにならないやり方を事例を踏まえ解説』
Contents
SWOT分析(スウォット分析)とは
SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字をとって命名された分析手法です。
情報をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つに分解するだけで事業に関する様々な情報を把握できるため、分析のハードルが低く、SWOT分析は手軽に活用できる点で優れています。
参考:『SWOT 分析とは?作成方法と具体例付きテンプレートを紹介』
SWOT分析の背景
SWOT分析が登場した背景には 以下のような理由があります。
スタンフォード研究所(SRI)では1960年代にアルバート・ハンフリー(Albert Humphrey)らが企業の長期計画がなぜ失敗したのかを明らかにするという研究プロジェクトを行っていた。
この中で企業活動などの良し悪しを明示する仕組みとして、「SOFT分析」という方法が考案された。
すなわち、現状における良いという評価を満足(S=satisfactory)、将来における良いという評価を機会(O=opportunity)、現状における悪いという評価を失敗(F=fault)、将来における悪いという評価を脅威(T=threat)に分類するものである。
これが1964年にFがWに変更され、「SWOT分析」という言葉が生まれたという。
つまり、SWOT分析は企業の課題を解決するための分析手法です。
また、現在の事業に関するリスクの特定や、チャンスのある事業領域の特定などにも活用できます。
何か新しい事業を始めることで、企業としての成長を目指す場合や、現在の事業を継続するための戦略を練る場合など、SWOT分析は幅広いシチュエーションで活用可能です。
関連記事:『【初心者向け】STP分析とは?各項目の分析方法や4つの指標を解説!』
SWOT分析における4つの軸
なお、SWOT分析を理解するためには、内部環境、外部環境についてと、プラス要因、マイナス要因について理解することが重要です。
内部環境・外部環境とは
企業において内部環境とは、自社で管理可能な環境のことを指します。
企業の資金力や市場での地位、売上、強みなどが該当します。
これに対し外部環境は、企業の活動に対し様々な影響を与える要素のことを指します。
法律や人口動態、競合の存在や市場規模が該当します。
参考:『内部環境とは|リサーチ・市場調査ならネオマーケティング』
参考:『外部環境|AIBeacon』
プラス要因・マイナス要因とは
プラス要因とは、外部環境と内部環境に関わらず、企業にとってポジティブな要因のことを指します。
これに対しマイナス要因は、企業にとってネガティブな要因のことを指します。
縦軸を内部環境・外部環境、横軸をプラス要因・マイナス要因で整理した場合、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)は以下のように表で表すことが可能です。
SWOT分析の各項目は以下のようなことを意味します。
- 強み:目標達成にプラスとなる内部環境の特質
- 弱み:目標達成の障害となる内部環境の特質
- 機会:目標達成にプラスとなる外部環境の特質で市場拡大の可能性や競争優位の可能性などが該当する
- 脅威:目標達成の障害となる外部環境の特質で市場縮小の可能性や競争激化の可能性などが該当する
参考:『SWOT分析のやり方とコツ:環境分析から戦略目標を引き出す方法』
SWOT分析のやり方
SWOT分析は、強み、弱み、機会、脅威に関する事実を解釈し、経営戦略を立てることが目的です。
SWOT分析を実施する際は以下のような手順で行います。
- 目標設定
- 外部環境の分析
- 内部環境の分析
- クロスSWOT分析
- 戦略の立案および実行
目標設定
分析を行う前に、SWOT分析を実施することで達成したい目標を明確にする必要があります。
成果を判断する上で事前に目標を決めておくことは重要です。
設定する目標は会社によって様々あり、財務に関するものだけでなく、顧客に着眼したものや企業の成長を促すもの、社内運営に関する目標など多くあります。
具体的には以下のような目標が挙げられます。
- 収益の増加
- 利益率の達成または維持
- 収益源の多様化
- 生産コストの削減
- リピート顧客数の増加
- 市場シェアの拡大 など
外部環境の分析
SWOT分析において外部環境とは、「機会」と「脅威」の2つです。
内部環境より先に外部環境を分析することで、自社について客観的に把握することができます。
外部環境について分析を行う際は、以下のフレームワークを使用することが効果的です。
- PEST(ペスト)分析
- 3C分析
- 5F(ファイブフォース)分析
PEST分析
PEST分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4項目から外部環境を分析する手法です。
Politics(政治)
政治や法律などの中で自社に対し影響を与える可能性がある要素を抽出します。
国の政策や政府の動向はもちろん、法規制および規制緩和などが該当します。
Economy(経済)
経済の動向の中で自社に対し影響を与える可能性がある要素を抽出します。
景気や為替、物価の変動、失業率などが該当します。
Society(社会)
消費者のライフスタイルの中で自社に影響を与える可能性がある要素を抽出します。
人口や世帯数、教育、文化、世論などが該当します。
Technology(技術)
新たに開発された技術の中で自社に影響を与える可能性がある要素を抽出し分析します。
特許や技術革新などが該当します。
PEST分析では、自社にまつわる外部情報をこれらの4種類に分類した上で、以下の手順で分析していきます。
- それぞれの要素について「客観的な事実」か「主観による解釈」かを識別する
- そのうえで「事実」と分類分けした要素の中から、さらに「機会」と「脅威」に分類する
- それぞれの要素が「短期的に発生するものか」「長期的に発生するものか」を分類する
- 「脅威」からはリスクを避け、かつ「機会」からは事業成長に繋げられる戦略を考案する
PEST分析を行うことで外部環境をマクロな視点から把握できます。
参考:『PEST分析とは?目的、やり方・手順、注意点を解説』
3C分析
3C分析では、Customer(顧客・市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つについて分析を行います。
外部環境の分析に該当する項目は「顧客・市場」と「競合」の2つであり、「自社」は内部環境に該当するため注意する必要があります。
Customer(顧客・市場)
顧客においては顧客ニーズや購買行動、購買プロセス、市場においては市場規模や変化、成長性が分析対象に当たります。
Competitor(競合)
市場シェアの割合や業界内外に対する影響力といった市場における競合の立ち位置に対する分析と、顧客数や商品の特徴、収益率などの競合企業および競合商品やサービスそのものに対する分析が当てはまります。
Company(自社)
自社商品の特徴や資本力、リソースの状況など、自社内部の状況を分析します。
どのようにして売上を上げているのか、またどこが弱点かなどを分析し、優れている点から継続的に学習することで事業での成功率を高められます。
参考:『3C分析とは?自社の成功の足がかりを探ろう!』
関連記事:『【初心者向け】市場分析のやり方とは?6種類の手法と事例を紹介』
5F分析
5F分析では、脅威(Force)について分析し、収益構造を明らかにすることで自社の収益性向上や競争優位性を探ることができます。
競争優位性とは、自社と他社を比較し、一方が有利な状況にある状況を指します。
5F分析で分析する項目は以下の5点です。
- 業界内での競争
- 業界への新規参入
- 代替品の存在
- 顧客の交渉力
- 売り手の交渉力
業界内での競争
業界内に競合が多ければ多いほど収益性は低下します。
独自性の高い商品やサービスを展開することで差別化を図ることが望ましいですが、特許等で守られるケースが少ないため、差別化を図ることは容易ではありません。
競争が激化した市場では、思うような収益を上げることが難しいため、同一の業界内における競合数や他の企業の認知度ブランド力、そして市場が今後どの程度成長するかを分析します。
業界への新規参入
業界への新規参入のハードルを計測します。
新規参入のハードルが高い場合、競争の激化を避けられるため一定期間、高い収益性を実現できる可能性が高いです。
市場規模や技術レベルなどを分析します。
代替品の存在
業界は違うものの同じニーズを満たす商品やサービスのことを代替品といいます。
代替品と自社製品のコストや質的な違い、そして代替品の乗り換える際の手間などについて分析します。
顧客の交渉力
顧客と企業の力関係は対等かについて分析します。
対等でない場合は、買い手市場になり収益性が低下します。
売り手の交渉力
原材料などの売り手と企業の力関係は対等かについて分析します。
対等でない場合、売り手市場になり、コスト面での負担が大きくなります。
参考:『ファイブフォース(5フォース)分析とは?方法と有効な活用法』
参考:『競争優位性とは?3つの基本戦略と分析フレームワーク』
5F分析は、脅威に限った分析であるため、他のフレームワークと組み合わせることで、さらに詳しく外部環境を理解できます。
また、上述したフレームワークについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
関連記事:『Web広告の戦略を考えるときに使えるオススメのフレームワーク4選』
内部環境の分析
SWOT分析において内部環境とは、「強み」と「弱み」の2つです。
自社の強みや弱みを把握する際は、以下のフレームワークを使用することが効果的です。
- 4C分析
- 4P分析
4C分析
4C分析では以下の項目について分析を行います。
- Customer Value(顧客価値)
- Cost(コスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーション)
Customer Value(顧客価値)
顧客が自社の商品やサービスについて抱いている価値のことです。
ブランドイメージなどがこれに該当します。
Cost(コスト)
顧客が商品やサービスに対して支払うことができる費用のことです。
Convenience(利便性)
アクセスの良さやECの導入などの入手難易度のことです。
Communication(コミュニケーション)
SNSやオフラインイベントなどで顧客とどの程度接点を設けているかについて分析します。
コミュニケーションが多いことで、企業や企業の商品・サービスに対し愛着のあるユーザーの増加が期待できます。
4C分析を使用することによって、顧客目線で自社について分析できます。
なお、顧客分析について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:『顧客分析とは?ユーザー行動を紐解く7つの手法と注意点をプロが解説』
参考:『4Cとは何か?4C分析の意味や活用方法、知っておきたい5Cや4P分析との違いも解説』
4P分析
4P分析では以下の項目について分析します。
- Product(商品・サービス)
- Price(価格)
- Place(販売場所・提供方法)
- Promotion(販促)
Product(商品・サービス)
提供する商品やサービスについて設定します。
購入を促すためにはどの程度の品質にする必要があるか、またデザインはどうすべきかなどについて決定します。
Price(価格)
商品やサービスの価値に対し整合性の取れる価格はどの程度か設定します。
Place(販売場所・提供方法)
実店舗で販売するか、ECかなど商品やサービスの提供方法について設定します。
Promotion(販促)
顧客に対し認知を促すためのプロモーション手段について設定します。
4C分析は顧客目線でしたが、4P分析では、企業視点で内部環境を分析します。
参考:『4P分析とは?マーケティングの基礎を支える手法を解説』
関連記事:『マーケティングの4P4Cとは?4つの活用方法をわかりやすく解説!』
クロスSWOT分析
自社を取り巻く外部環境と内部環境についてそれぞれ分析できたら、クロスSWOT分析を行っていきます。
クロスSWOT分析とは、外部環境と内部環境を掛け合わせて具体的な戦略を考える分析手法です。
Strength(強み) | Weakness(弱み) | |
Opportunity(機会) | 機会×強み 積極的にチャレンジ | 機会×弱み 弱みを克服し、積極的にチャレンジ |
Threat(脅威) | 脅威×強み 強みを活かして差別化を取り、脅威を避ける | 脅威×弱み 脅威に対する影響を最小限にする 撤退も視野に入れる |
クロスSWOT分析には、以下の4パターンがあります。
強み×機会「SO戦略」
自社の強みと機会がかけ合わさるため、経営戦略を立てる上で最大のチャンスです。
該当する項目について新規事業を立ち上げるなどの行動することで成功する可能性が高いです。
強み×脅威「ST戦略」
強みを活かして脅威を防ぐ戦略を立てる必要があります。
強みを活かした差別化などの施策が効果的です。
弱み×機会「WO戦略」
弱みを克服できる場合は、SO戦略に転換できます。
弱み克服のための策を講じることが効果的です。
弱み×脅威「WT戦略」
事業撤退などの選択により、リスクを抑える施策を講じることが効果的です。
参考:『戦略策定に欠かせないクロスSWOT分析とは?事例や分析方法、戦略の種類を解説』
戦略の立案および実行
実際に立案した戦略を実行し、結果を確認します。
分析前に設定した目標と照らし合わせ、効果検証し、適宜戦略を変更していくことで成功率を高められます。
参考:『図解でわかるSWOT分析。考え方や使い方、分析事例を紹介【テンプレートあり】』
SWOT分析を行う際のポイント
SWOT分析を行う際は以下のポイントを意識するようにしましょう。
- 同じ事実情報から複数の解釈を取り出す
- 内部環境について内部からだけでなく外部から情報を取り入れる
- 何が目標かを明確にすることを徹底する
- 前提条件の共有を徹底する
- 様々な視点から分析を行う
同じ事実情報から複数の解釈を取り出す
同じ事実情報であっても、見方を変えれば弱みから強みに転換できる場合や、脅威から機会に転換できる場合があります。
例えば、自社の弱みの1つに営業所が多すぎることが原因でコストが大きくなってしまうケースの場合、営業所が多いことで、広いエリアに対し強い営業力を発揮できるという強みに転換可能です。
また、顧客目線では、コストが高いことはネガティブな要素ですが、企業としては、1つ商品が売れた際に獲得できる売上が多いといったポジティブな要素になります。
一見ネガティブな事実情報であっても見方を変えることでポジティブに変換できることも多いため、視野を広げて分析することを徹底しましょう。
参考:『SWOT分析のやり方とコツ:環境分析から戦略目標を引き出す方法』
内部環境について内部からだけでなく外部から情報を取り入れる
外部から情報を取り入れることは非常に重要です。
内部にいる場合、取り扱っている商品やサービスが当たり前になってしまい、実は強みになっているにも関わらず気づくことができない場合があります。
外部から強みや弱みに関する情報を引き出すことで公平に内部環境を把握できます。
SNSなどを活用し、ユーザーに対しアンケートを実施することで内部環境をより詳しく分析できます。
現在Googleフォームをはじめ、無料でアンケートを作成可能なツールは複数存在します。
活用することで効率よくアンケートを実施可能です。
参考:『マンガでわかる「SWOT分析」 | 経済産業省 中小企業庁』
何が目標かを明確にすることを徹底する
SWOT分析は表を活用し、項目を埋めていく中で分析を行う手法です。
その際に明確な目標なしで分析を行なった場合、表を埋めることが目的になってしまい、SWOT分析をしたものの結局何がしたかったのかわからない状況に陥ってしまうリスクがあります。
あらかじめ目標を明確にし、それを達成するための手掛かりを発見することを目的にSWOT分析を行うようにしましょう。
参考:『【初心者向け】SWOT分析を解説!目的からやり方、活用のポイントまで』
前提条件の共有を徹底する
あらかじめ競合企業や顧客層などの情報を共有することで、スムーズに分析可能です。
SWOT分析の場合、外部環境で競合相手について分析を行うなど、ずれが生じやすいポイントが多く、競合と比較し相対的に自社を評価することも多いことから、前提条件が共有できていない場合、分析結果が全てずれてしまうリスクがあります。
分析をスタートする前までに、前提条件の共有を徹底するようにしましょう。
参考:『【初心者向け】SWOT分析を解説!目的からやり方、活用のポイントまで』
様々な視点から分析を行う
外部環境や内部環境についての把握を行う際は偏りなく情報を収集することが非常に重要です。
偏りなく情報を収集するために、様々なフレームワークを使用し、顧客、競合企業、自社など様々な視点から分析を行うことが効果的です。
3C分析や5F分析など様々な分析手法があるため、適宜活用し、正確な分析を心がけましょう。
参考:『SWOT分析とは?現状分析をした上で戦略策定に繋げる方法』
SWOT分析を企業に当てはめた応用例
ここからは、SWOT分析を実際に企業に当てはめて紹介していきます。
今回SWOT分析の例に挙げるのは以下の企業です。
- セブン&アイ・ホールディングス
- 日本マクドナルド
- ユニクロ
セブン&アイ・ホールディングス
引用:『セブン&アイホールディングス』
まずは、コンビニや総合スーパーなどのさまざまなグループ会社をかかえる「セブン&アイホールディングス」を例にSWOT分析を当てはめてみましょう。
ここでは、同社がSWOT分析を行う前提目標を「収益の増加」と仮定します。
その上でSWOT分析をまとめると以下のようになります。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | 強み(Strength)
| 弱み(Weakness)
|
外部環境 | 機会(Opportunity)
| 脅威(Threat)
|
国内コンビニ事業の成長率に関しては、実際に近年のコンビニエンスストアの販売額および店舗数において成長が鈍化しています。
以下の表を見ると、2019年までは右肩上がりの傾向があったものの2020年以降の伸び率は停滞し、横ばいになっていることが分かります。
参考:『コンビニエンスストア業界の動向およびM&Aについて【2023年版】』
上記のSWOT分析をもとにクロスSWOT分析を行います。
- 強み×機会:
海外ブランドとのコラボ - 強み×脅威:
プライベートブランドの商品で差別化 - 弱み×機会:
海外への新店舗を展開 - 弱み×脅威:
ECサイト限定のプライベートブランド商品を販売
今回はクロスSWOT分析によって、収益の増加に繋がる4つの戦略を作成しました。
強みと脅威をかけ合わせた「プライベートブランドの商品で差別化」を狙った戦略では、セブン&アイホールディングスが持つプライベートブランドの開発力で競合他社に対抗するという方針を考えました。
実際にセブン&アイホールディングスでは、2007年にプライベートブランドとして「セブンプレミアム」を生み出しており、これは自社の強みを活かして脅威に対抗した戦略と言えるでしょう。
また、弱みと機会をかけ合わせて「海外への新店舗を展開」を狙った戦略を挙げました。
こちらも既に実際に行われており、北米を中心にコンビニエンスストアを展開する施策が当てはまります。
2019年2月期に2,8兆円だった海外コンビニエンスストア事業の売上高は2023年2月期には8,8兆円まで拡大しており、機会を活かして収益の増加に繋げた好例となっています。
参考:『【詳解】SWOT分析の事例を誰もが知っている企業を元に紹介する。』
参考:『クロスSWOT分析とは?やり方や事例を徹底解説』
参考:『世界の15の国と地域に展開するセブン‐イレブン』
参考:『セブン&アイの挑戦』
参考:『株式会社セブン&アイ・ホールディングス | セグメント情報』
日本マクドナルド
引用:『日本マクドナルド』
次に、ファーストフードチェーン「日本マクドナルド」を例にSWOT分析を当てはめてみます。
同社の目標を「新サービスの考案および開発」と仮定した上で、以下のようにSWOTをまとめます。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | 強み(Strength)
| 弱み(Weakness)
|
外部環境 | 機会(Opportunity)
| 脅威(Threat)
|
上記のSWOT分析をもとにクロスSWOT分析を行うと、以下のような戦略を導き出すことができます。
- 強み×機会:
店舗に来店せずに商品を販売できるサービスの導入 - 強み×脅威:
品質向上を狙ったテクノロジーの導入、中間層向けに利益率の高い新商品を開発 - 弱み×機会:
長い期間の保存が可能なハンバーガーを開発 - 弱み×脅威:
集客が芳しくない店舗の撤退、売り上げ実績が良い商品にのみ販売を厳選
今回の例では、クロスSWOT分析によりそれぞれの要因をかけ合わせることで革新的な技術やサービスの導入、店舗の展開範囲の見直しまで幅広い戦略を導き出しました。
例えば、強みと機会をかけ合わせた戦略としては、店舗に来店せずに商品を事前注文できるシステムの導入を挙げています。
実際に日本マクドナルドは、2020年にモバイルオーダーを全国導入し、商品の注文から決済までを専用のスマホアプリで完結できる仕組みを開始しました。
これにより、事前に店外で注文を済ませておくことで、来店時にはレジに並ばずに商品を受け取ることが可能になりました。
このようにSWOT分析は、新しいサービスの考案などにおいても有効です。
参考:『今さら聞けない、SWOT分析とは?やり方とコツを解説【図解・例あり】』
参考:『swot分析とは?企業での簡単なやり方や目的を例を交えてご紹介』
参考:『日本マクドナルド『モバイルオーダー』全国展開でオーダー行列がなくなる?』
参考:『有人レジに並ぶより断然早い…マックの「モバイルオーダー」が業界の常識を壊す「神サービス」となった理由』
ユニクロ
引用:『UNIQLO』
最後に、1974年に設立されたファストファッションブランド「ユニクロ」を例にSWOT分析を当てはめてみます。
ここでは、同社がSWOT分析を行う前提目標を「利益率の拡大」と仮定した上で、以下のようにSWOT分析をまとめます。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | 強み(Strength)
| 弱み(Weakness)
|
外部環境 | 機会(Opportunity)
| 脅威(Threat)
|
ここで外部環境をさらに深掘りしていくために、5F分析を取り入れてみます。
以下の5つの項目から自社にとっての脅威を分析することで目標を達成するために必要な戦略を立案する際の検討材料になります。
Web集客に強いマーケティングメディア「キャククル」が行ったユニクロの5F分析によると、ユニクロにおけるそれぞれの脅威は以下の通りです。
分析項目 | ユニクロの場合 |
業界内での競争 | 競合他社としては「しまむら」「無印良品」「ZARA」「GAP」などが挙げられる |
業界への新規参入 | 「ZOZO」や「Amazon」など、アパレルを取り扱うEC業界 |
代替品の存在 | ECサイト、衣服のレンタルサービス、月額制のアパレルサービスなど |
顧客の交渉力 | 「国民服」と表現されることもあるため、顧客の交渉力は強いが、価格面と品質面においてはNo.1であるとは言えない |
売り手の交渉力 | 売り手(ここでは衣服の生地の卸売業者やデザイナー)視点で考えると、ユニクロの店舗数の多さやブランドによる宣伝効果から、売り手の交渉力は低いと言える |
参考:『【3分で理解】ファイブフォース分析でユニクロの戦略に触れる』
しまむらは価格帯において、無印良品は品質やシンプルさを追求している点においてそれぞれユニクロの競合であると言えます。
また、ファッションブランド「GAP」や「ZARA」は海外版のユニクロと言えるほどアパレル業界においてはユニクロと近い路線にいる競合です。
このように、自社の他にどのような競合がいるかを知ることで、市場を客観的に分析することができます。
上記の分析をもとにクロスSWOT分析を行うと、以下のような戦略を導くことができます。
- 強み×機会:
新興国での店舗展開 - 強み×脅威:
ECサイトへの注力 - 弱み×機会:
トレンドに囚われないデザイン性を提供 - 弱み×脅威:
ブランド力を強化
今回の例は、一つの事実情報の見方を変えることで新たな戦略に繋げることができることを示しています。
例えば、内部環境の弱みとして挙げられた「デザインの多様性に乏しい」という要因は、言い換えれば「流行やトレンドに左右されないベーシックなデザインである」という解釈ができ、「幅広い年代や性別に受け入れられやすい」という強みにもなるでしょう。
実際にユニクロは「LifeWear」をコンセプトとしており、ベーシックなデザインから逸脱しないブランドとして多くの人に認知されることに成功しています。
また、強みと脅威をかけ合わせた戦略としては「ECサイトへの注力」を挙げました。
こちらの戦略に関しても、実際にユニクロは従来のカタログ形式のECサイトからSNSとモバイルを軸にした形式のECサイトへと刷新し、新たなマーケティング施策を成功させました。
具体的にはInstagramへの積極的な投稿や、モバイル会員制度を導入してクーポン配布や店舗の在庫検索などを可能にし、顧客の購買行動を促進しています。
参考:『国内ユニクロ事業のEC売上は2022年3Q累計で1046億円、EC構成比は16.3%』
これらの要因も含め、ユニクロのEC売上は年々増加傾向にあり、2021年9月~2022年5月期の売上高はECだけでも約1046億円にものぼっています。
参考:『SWOT分析 ユニクロの例』
参考:『クロスSWOT分析とは?やり方や事例を徹底解説』
参考:『ユニクロのビジネスモデル』
参考:『【3分で理解】ユニクロのブランディング戦略について調査』
参考:『魅力的なECサイト制作とOne to Oneマーケティングを目指すユニクロ』
まとめ
SWOT分析は、自社について分析する際に非常に効果的な施策です。
新規事業を立ち上げる場合や、事業改善に取り組みたい場合など様々な局面で活用可能です。
SWOT分析では、内部環境と外部環境のそれぞれをきちんと把握することが非常に重要です。
3C分析や4P分析などの様々なフレームワークを活用し、丁寧な情報収集を徹底しましょう。
実際に経営戦略を立てる際は、クロスSWOT分析が効果的です。
クロスSWOT分析を行うことで今力を入れる事業は何か、また撤退すべき事業は何かを把握できます。
また、SWOT分析を行う際は気をつけるべきポイントがいくつかあります。
特に、事実情報は見方を変えるとポジティブにもネガティブにもなりうる点に注意することで、より柔軟なSWOT分析を実行可能です。
また、この記事を読んでSWOT分析を行うことは難しいと感じた場合や、よくわからないと感じた場合は、広告代理店に任せるのも1つの手です。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。
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