インターネットの普及により、近年ではWeb広告が主流になりつつあります。
電通の調査によると、2007年では全体の総広告費のうちわずか8.6%しか占めていなかったインターネット広告費が、2023年には45.5%にまでのぼっています。
15年間でこのような大きな変化が見られることからも、Web広告の重要性が高まってきていることが分かるでしょう。
そんな中で近年注目を集めるアドテクノロジーでは、これまで担当者が手動で行っていたWeb広告の大量配信をスピーディーでかつ効果的に行うのに役立ちます。
本記事では、理解を深めたい初心者の方に向けて、アドテクノロジーの基礎知識を紹介します。
参考:『アドテクノロジーとは?定義や基礎知識をわかりやすく解説します』
参考:『「2022年インターネット広告媒体費」解説。記録を更新する3兆912億円の内訳は?』
参考:『2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析 | 電通』
Contents
アドテクノロジーとは
アドテクノロジーは「Advertising Technology」の略で、インターネット広告に関するシステム全般を指します。
この技術には、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- Webサイト内でのユーザー行動の追跡を行い、分析をするトラッキング技術
- 適切な広告配信を行う広告配信技術
- 広告運用の効果計測のサポートを行う技術
これらの技術によって広告運用業務を効率化して工数が削減できたり、広告配信の最適化が実現します。
そのためアドテクノロジーは「最適な人や場所に広告を配信することで広告配信効果の最大化を目指す広告主」と、「広告主に広告枠を買ってもらうことで広告掲載効果の最大化を目指すメディア」の双方での利用が推奨されます。
参考:『アドテクノロジーとは?定義や基礎知識をわかりやすく解説します』
参考:『アドテクノロジー(アドテク)とは?初心者向けに分かりやすく解説』
参考:『【図解で分かる!】知っているようで知らない?アドテクノロジーの基本用語2019』
アドテクノロジーの背景
世界初のバナー広告が配信されたのは1994年。
米国最大手の電話会社であるAT&Tが、オンライン雑誌HotWired.comに掲載したものでした。
その後1996年には、日本で初めてインターネット広告が登場し、広告主が掲載期間を指定して広告枠を購入する「純広告」方式が主流となりました。
しかし、純広告では一度出稿した広告の変更ができないことや、インターネットの普及により広告の管理が複雑化し始めたことで操作ミスや管理工数の増加といった問題が出てきました。
引用:『純広告とは?種類と料金形態一覧、メリット・デメリットを解説 | LINEヤフーfor Business』
これらの問題を解決するために2008年頃登場したのがアドテクノロジーです。
アドテクノロジーはRTB方式を採用しているため瞬時に広告を掲載でき、効果測定や配信予算の一括管理を可能にしました。
RTBは「Real Time Bidding」の略称であり、オンライン広告の入札をする際に、広告のインプレッションが発生するたびに広告枠を競争入札し、最高額の購入者の広告を掲載するという仕組みになります。
参考:『【図解で分かる!】知っているようで知らない?アドテクノロジーの基本用語2019』
参考:『RTB(Real Time Bidding)とは?』
広告の入札については、以下の記事で詳しく解説しております。
関連記事:『Google広告の自動入札戦略とは?3つのメリットや手動入札との違いを紹介』
アドテクノロジーに関わっている様々なサービス
実際に広告が掲載されるまでの過程では、多くのサービスが関わっています。
引用:『歴代のカオスマップ』
上記に示す画像は「カオスマップ」と呼ばれ、数多くのサービスが関わり合っていることをまとめた図になります。
今回はこの中から代表的なサービスを以下の3点のカテゴリーごとに紹介します。
- メディア(広告表示を行う媒体)
- 広告主(広告を出稿する人)
- ユーザー(広告を閲覧する人)
メディアに関わるアドテクノロジー
広告を表示できるメディアは数多く存在します。
ここでは、広告を表示するメディアに関わるアドテクノロジーを3つご紹介します。
- アドネットワーク
- アドエクスチェンジ
- SSP
アドネットワーク
アドネットワークは、Webサイト、SNS、ブログ、アプリなど、さまざまな広告配信可能なメディアを一つにまとめたネットワークです。
そもそもネットワークとは、Net(網)とWork(作業)を組み合わせた単語で、複数のコンピュータを互いに接続する技術を指しています。
これにより、広告主は一度の広告配信でアドネットワークが管理している多数の広告枠(バナー広告やネイティブ広告など)に広告を出すことができます。
アドネットワークでは、広告枠ごとに契約や配信設定を行う必要がないため、大幅な工数削減につながります。
さらに、アドネットワーク内のメディアはカテゴリーごとに分類されているため、指定したカテゴリーに関連したメディアのみに広告を配信することができるため、広告効果の最大化も期待できます。
また、インプレッション、クリック数、コンバージョンなどの広告の効果測定データの一括取得や細かい配信設定(時間・曜日・地域指定など)も指定できるため、マーケティングの効率化と広告効果の改善に寄与します。
アドネットワークは、個々のメディアのトラフィック(広告のクリック数)が小さくても、複数メディアを束ねることで全体的に大量のトラフィックを見込める仕組みとなっています。
代表的なプラットフォームには以下のようなものが挙げられます。
- Google Display Network
- Yahoo!ディスプレイアドネットワーク
- Facebook Audiece Network
- i-mobil Ad network
- nend
注意したい点
全ての出稿媒体を選定できないため、ターゲット外のWebサイトに広告が表示される可能性があります。
また、各アドネットワークは課金形態や入札システム、ターゲティング手法、ターゲットユーザー層が異なるため、それぞれの特性に合わせた運用戦略が求められます。
参考:『【図解で分かる!】知っているようで知らない?アドテクノロジーの基本用語2019』
参考:『アドテクノロジー(アドテク)とは?初心者向けに分かりやすく解説』
参考:『ネットワークとは?通信の仕組みと種類を入門者向けに解説』
参考:『アドネットワーク広告運用完全ガイド!種類や費用、仕組み、運用ノウハウをまとめて解説』
アドエクスチェンジ
アドエクスチェンジは、複数のアドネットワークが管理している広告枠を自由に売買できる仕組みであり、各メディアやアドネットワークの広告掲載枠を交換可能なプラットフォームになります。
アドエクスチェンジが登場した2010年頃より前のアドネットワークでは、課金体系や広告のサイズ指定など、広告配信のルールがアドネットワークごとにさまざまでした。
しかし、アドエクスチェンジの登場により、広告配信ルールが「入札型インプレッション課金」に統一されました。
このシステムでは、広告表示のたびに他社と入札が行われ、表示回数に基づいて課金されます。
代表的なプラットフォームには以下のようなものが挙げられます。
- Double Click AdExchange
- Open X Market Japan
- Microsoft Advertising Exchange
- Facebook AdExchange
- Yield One
加えて、アドエクスチェンジでも、RTB(Real Time Bidding)方式が採用されています。
リアルタイムで広告枠の入札単価が変動することで、広告出稿数(需要)と広告枠(供給)のバランスを取り、公平性を保ちつつ、より費用の無駄がない広告配信が可能となります。
さらに、アドエクスチェンジは複数のアドネットワークを一元化するため、アドネットワーク以上の広範な広告掲載枠を管理できます。
これにより広告配信に関する手間が大幅に削減され、広告主や広告代理店の作業負荷軽減と業務効率化に貢献しています。
参考:『 Ad Exchange(アドエクスチェンジ)とは?を初心者にも分かりやすく解説します』
参考:『アドエクスチェンジの仕組みと特徴』
アドエクスチェンジについてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:「アドネットワークの進化?アドエクスチェンジ!3つの違いとは?」
SSP
SSP(Supply Side Platform)とは主にメディア向けのサービスであり、広告枠の販売や広告収益の最大化をサポートしてくれる仕組みです。
広告枠や価格、出稿条件を設定すると、複数のDSP(Demand Side Platform)やアドネットワークの中から最も掲載費が高い広告を自動的に選び出して配信することができます。
またSSPは「フロアプライス」と呼ばれる最低落札額の設定により、その設定額を下回る低単価の広告表示を防ぐことができ、さらなる収益確保に貢献します。
さらに、SSPではメディアを訪れたユーザーの情報や広告枠の情報をDSPに提供し、オークションを実施できます。
これにより、広告主側の広告効果を最大化するためのDSPの精度も向上させるとともに、広告主側のターゲティングの精度を高めます。
代表的なプラットフォームには以下のようなものが挙げられます。
- Kauli
- Geniee
- YieldOne
- AdGenereation
- Fluct
参考:『【図解で分かる!】知っているようで知らない?アドテクノロジーの基本用語2019』
参考:『アドテクノロジー(アドテク)とは?初心者向けに分かりやすく解説』
参考:『初心者でもわかるアドテクノロジー!仕組みや種類を一から解説!』
参考:『 SSP(Supply-Side Platform)とは?を初心者にも分かりやすく解説します』
SSPについて詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
関連記事:『DSP、SSPとは?仕組みとメリット6つを詳しく解説』
広告主に関わるアドテクノロジー
ここでは広告主に関わる2つのアドテクノロジーをご紹介します。
- DSP
- リターゲティング
DSP
DSP(Demand-Side Platform)は、広告主側の広告出稿の費用対効果を最大化するためのツールです。
広告主の要望に基づいて最適な広告配信を一元管理します。
広告主はターゲット、予算などを設定し、DSPはこれらの条件に基づいて最小の出稿金額での高い売り上げを生成するように広告配信を管理します。
また、DSPはメディア側の収益を最大化させるツールであるSSPとRTB接続で連携し、広告を配信したい際に広告枠を買うことができるようになり、広告主とメディアの双方にとって最適な広告配信を実現しました。
これにより広告主の作業負荷を軽減するとともに、広告枠の購入を即時に行うことも可能となります。
代表的なプラットフォームには以下のようなものが挙げられます。
- UNIVERSE Ads
- FreakOut
- MarketOne
- ScaleOut
参考:『【図解で分かる!】知っているようで知らない?アドテクノロジーの基本用語2019』
参考:『アドテクノロジー(アドテク)とは?初心者向けに分かりやすく解説』
参考:『初心者でもわかるアドテクノロジー!仕組みや種類を一から解説!』
参考:『 DSP(Demand-Side Platform)とは?初心者にも分かりやすく解説します』
リターゲティング
リターゲティングは、過去に特定のWebサイトに訪れた経験のあるユーザーに対して広告を配信するシステムになります。
広告主のサイトから他のサイトに移動したユーザーに対しても、自社の製品やサービスに関する広告が表示されます。
その結果、自社の製品やサービスの認知度を高めるだけでなく、再度ユーザーをサイトに誘導して購入につなげることができます。
加えて、ユーザーへの広告配信回数の上限を設定することが可能であり、適切な広告配信回数を分析することでリターゲティングの効果を最大化することができます。
このように、リターゲティングはユーザーの行動に基づいて効果的な広告配信を行うことができるため、通常のバナー広告と比べてより高い成果をもたらす広告手法として広く採用されています。
参考:『初心者でもわかるアドテクノロジー!仕組みや種類を一から解説!』
参考:『フリークエンシーとは?リーチとの違いや適切な回数の決め方 | LINEヤフーfor Business』
オーディエンスデータを活用したリターゲティングについては以下の記事で詳しく解説しております。
関連記事:『Google/Yahoo!リスティング広告のリタゲ活用法4選』
ユーザーに関わるアドテクノロジー
DMP
DMP(Data Management Platform)は、インターネット上のさまざまなデータの一元管理・分析・分類ができ、それらをマーケティング施策に活かせる情報へと最適化するツールです。
DSPとSSPによって広告主と媒体社は収益拡大を実現できましたが、ユーザーに対するメリットを考慮しなければ広告効果は減ってしまいます。
そこで、DMPが重要となります。
DMPの活用により、過去に商品を購入したユーザーへのリピート購入を促す広告配信や、お問い合わせフォームで離脱したユーザーだけをターゲットにした広告配信を行うことが可能で、より費用対効果の高い広告運用を行うことができます。
代表的なプラットフォームには以下のようなものが挙げられます。
- Rtoaster
- Intimate Merger
- juicer
DMPは、「オープンDMP」と「プライベートDMP」の2種類に分けられます。
オープンDMPは外部メディアのデータを活用し、プライベートDMPは自社で収集・保有したデータと、必要なデータをオープンDMPから取り込む形で活用します。
また、DMPで扱うデータは「1st party data」「2nd party data」「3rd party data」の3つに分類されます。
これらのデータを活用することで、広告効果の向上と同時にユーザーにとっても価値のある広告配信が可能となります。
1st party data
自社が収集・保有するマーケティングデータを指しています。
データは自社のウェブサイトに設置した解析ツール、SNS、購買情報、アンケートなどから得られます。
このような自社のデータは信憑性が高く、追加のコストがかからないという利点があります。
一方で、取得できる情報が限定的になる傾向があります。
2nd party data
セカンドパーティーデータとは、データを保有している他企業とパートナーシップを組んで利用権を得たデータになります。
1st party dataと同じく信憑性が高いため注目を集めていますが、パートナーシップを組むための契約や技術的な課題がハードルとなります。
3rd party data
サードパーティーデータとは、自社が収集・保有するデータ以外で、第三者が提供するデータのことを指します。
専門のデータ収集ベンダーから入手することができ、提供される情報の量や種類は多岐にわたります。
これはインターネット上に蓄積された様々なユーザデータを管理するプラットフォームとして機能します。
参考:『【図解で分かる!】知っているようで知らない?アドテクノロジーの基本用語2019』
参考:『アドテクノロジー(アドテク)とは?初心者向けに分かりやすく解説』
参考:『初心者でもわかるアドテクノロジー!仕組みや種類を一から解説!』
参考:『 DMP(データマネジメントプラットフォーム)とは?概要から導入時の注意点まで詳しく解説』
DMPのメリットや導入ポイントについての内容は以下の記事をご覧ください。
関連記事:『【広告運用に必須】DMPとは?3つのメリットと導入ポイントまで解説!』
まとめ
本記事では、アドテクノロジーを初心者の方向けに、アドテクノロジーの基礎知識を紹介しました。
この記事を読んで、アドテクノロジーの最適化が難しいと少しでも感じたら、広告代理店に任せるのも一つの手です。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。