景表法(不当景品類及び不当表示防止法)に違反した場合、その結果として科せられる罰則は事業者にとって無視できないものです。
消費者を誤導するような不適切な表示や誇大広告に対しては、初めに改善命令という形で警告が出されます。
しかし、その警告を無視したり、繰り返し同様の違反行為を行ったりした場合、最大2年の懲役または最大300万円の罰金が科される可能性があります。
また、行政処分として課徴金が科される可能性もあり、これは不当な表示によって得た利益の一部を返還するという制度で、最大で売上高の3%に相当する額となります。
特に長期間にわたる違反の場合、その影響は深刻であり、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
今回は景表法について、違法になるのはどのような条件なのか、また実際に違法となった事例について紹介します。
参考:『景品表示法とは?広告表示や景品のルール・禁止行為・罰則などを分かりやすく解説!』
関連記事:『【2023年最新版】医療業界に強い広告代理店10社を徹底比較』
Contents
景表法とは
景表法(景品表示法)とは、「不当景品類及び不当表示防止法」の略称であり、消費者保護を目的として、不適切な景品や表示を禁じている法律です。
上述したように、この法律に違反すると最大2年の懲役または最大300万円の罰金が科せられます。
これらの厳格な罰則は消費者の権利を守り、公正かつ透明性のあるビジネス環境を維持するために設けられています。
景表法違反は消費者からの信頼を失うだけでなく、ビジネスの成長を阻害する可能性があります。
そのため、すべての事業者には適正な情報提供と公正な取引の実施が求められています。
法律を遵守することはビジネスの基本であり、その重要性は言うまでもありません。
景表法を遵守し、消費者との信頼関係を築きつつ公正で持続可能なビジネスを推進することは、経済全体の健全な成長に貢献します。
また、そのような取り組みは事業者自身の長期的な成功にも寄与します。
以下に、景表法で定められている主な規定を解説します。
不当な表示の禁止
景表法では、消費者の適切な購買判断を保護するため、不当な表示に対する厳格な制限を設けています。
品質、価格、その他の取引条件など、商品やサービスにおいて不適切な方法で表示されることにより消費者の選択が阻害されることは、この法律によって厳しく禁じられています。
ここでの「表示」は広範に解釈され、商品そのものに記載されている情報から、広告や宣伝資料、インターネット上の情報、さらにはテレビやラジオのトークまで含みます。
つまり、商品やサービスに関する情報を消費者に伝える全ての手段がこの範囲に含まれると言えます。
不当表示の禁止における具体的な内容は次の3種類に分けられます。
禁止事項 | 内容 |
優良誤認表示 | 商品の品質や規格について、実際より優れているかのように誤解を招く表示を禁止します。 |
有利誤認表示 | 商品の価格や取引条件について、実際より有利であるかのように誤解を招く表示を禁止します。 |
内閣総理大臣が指定する表示 | 特定の商品やサービスに関して、消費者が誤解しやすい表示や判断が困難となるような表示を内閣総理大臣が指定し、それを禁止します。 |
これらの規定により、景表法は消費者の利益を守り、市場の公正性を維持する役割を果たしています。
なお、課徴金制度の対象となる不当表示は、優良誤認表示と有利誤認表示に限られます。
それぞれの規定について、以下で詳しくご紹介します。
優良誤認表示
商品の品質や規格について、実際より優れているかのように誤解を招く表示を禁止します。
一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良もしくは事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良だと表示しているものが当てはまります。
有利誤認表示
商品の価格や取引条件について、実際より有利であるかのように誤解を招く表示を禁止します。
一般消費者に対し、取引条件について実際のものもしくは競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利だと誤認させる表示が当てはまります。
内閣総理大臣が指定する表示
特定の商品やサービスに関して、消費者が誤解しやすい表示や判断が困難となるような表示を内閣総理大臣が指定し、それを禁止します。
内閣総理大臣が指定する6つの特定表示とは以下を指します。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
参考:『表示規制の概要|消費者庁』
景品類に対する規制
景品規制は、商品やサービスの供給者が提供する景品の適切な範囲を規定することで消費者の利益を保護し、健全な商業競争を維持することを目的としています。
これは、事業者が過大な景品を提供することにより、消費者がそれに惑わされて質の低いものや割高なものを購入する、または事業者が商品・サービスそのものでの競争から目を逸らす悪循環を防ぐためです。
この場合、景品類には以下の3つを満たすものを指します。
- 顧客を誘引するための手段として
- 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
- 物品、金銭その他の経済上の利益
引用:『景品規制の概要|消費者庁』
景品規制は主に3つの形で存在します。
一般懸賞に関する規制
一般懸賞とは、商品やサービスの利用者に対してくじや特定行為の優劣等によって景品を提供することを指します。
提供できる景品の限度額は以下のように規定されています。
- 取引価額が5,000円未満の場合:景品類の最高額は取引価額の20倍、総額は懸賞に係る売上予定総額の2%まで
- 取引価額が5,000円以上の場合:景品類の最高額は10万円、総額は懸賞に係る売上予定総額の2%まで
共同懸賞に関する規制
共同懸賞とは、複数の事業者が参加して行う懸賞のことを指します。
この場合、景品類の最高額は取引価額にかかわらず30万円、総額は懸賞に係る売上予定総額の3%までとされています。
総付景品に関する規制
総付景品(そうづけけいひん)とは、一般消費者に対し「懸賞」によらずに提供される景品類を指します。
「ベタ付け景品」と呼ばれることもあり、商品やサービスの利用者などに対して提供する金品が該当します。
提供できる景品の限度額は以下のように規定されています。
- 取引価額が1,000円未満の場合:景品類の最高額は200円まで
- 取引価額が1,000円以上の場合:景品類の最高額は取引価額の10分の1まで
規制 | 内容 |
一般懸賞 | 商品やサービスの利用者に対して、くじや特定行為の優劣等によって景品を提供すること |
共同懸賞 | 複数の事業者が参加して行う懸賞のこと |
総付景品 | 一般消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類のこと |
また、特定の業種については、業界の実情に応じて業種別の景品規制が設けられています。
これらは主に、新聞業、雑誌業、不動産業、医療用医薬品業、医療機器業などです。
新聞業・雑誌業
新聞業や雑誌業では、購読者を増やすための懸賞やプレゼントが制限されています。
これは、情報提供という本質的なサービスの価値を脅かさないよう、品質ではなくプレゼントに引き寄せられる購読者を防ぐ目的があります。
不動産業
不動産業では、購入者や賃借人に対する高額なギフトやサービスが制限されています。
これは、購入者や賃借人が不動産の質や価格、契約条件などを適切に評価することを阻害しないようにするためです。
医療用医薬品業・医療機器業
医療用医薬品業や医療機器業では、製品の安全性と効果に関する適切な評価を阻害しないように、医師や患者に対する贈り物やサービスが厳しく制限されています。
これらの業界では、製品の評価が生命や健康に直接影響を及ぼす可能性があるため、特に厳しい規制が設けられています。
業種別の規制は、業種ごとの特性と問題点を考慮した上で設けられており、消費者の利益を保護するために不可欠なものとなっています。
なお、医療法における広告規制について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:『医療法による広告規制!第2章の医療情報の提供をわかりやすく解説』
参考:『景品規制の概要|消費者庁』
事業者に対する表示等の適正な管理のため体制の整備等
平成26年の内閣府告示第276号による景表法の改正に伴い、事業者は景品及びそれに関する表示を適切に管理する体制を確立し、また必要な措置を講じることが求められるようになりました。
参考:『景表法26条1項について』
これは、消費者を誤解や不利益から保護し、かつ公正な取引環境を維持するための重要な規定です。
事業者が提供する景品や表示は、消費者の購買行動に大きな影響を与えるため、これらの管理は非常に重要とされています。
体制の整備とは具体的には、適切な監視体制やチェック体制を構築し、景品や表示が法律に適合していることを確認するための措置を意味します。
また、問題が発生した場合に迅速に対応できるためのシステムを整備することも含まれます。
もし事業者がこれらの措置を講じなかった場合、消費者庁が指導や助言を行うことがあります。
更に重大な違反があった場合には、その事実を公にする公表制度も存在します。
これらの手段により、消費者庁は消費者の利益を保護し、事業者に対して適正な景品表示を促しています。
景表法の執行について
景表法の執行は、現在、消費者庁と各都道府県の協力のもと行われています。
これは法令遵守を確認し、消費者の利益を守るための重要な活動であり、その一部として、違反の疑いがある場合の調査が行われています。
法違反が疑われる場合、消費者庁や都道府県は事業者に対して調査を行い、その一環として聴取や立入検査が行われます。
立入検査の拒否は法律で禁じられており、違反すると最大で1年の懲役または300万円の罰金が科せられることになります。
調査結果、違反が確認された場合、事業者に対して「措置命令」が発行されます。
措置命令とは違反行為の是正を求める命令のことです。
これに違反した場合は、最大で2年の懲役または300万円の罰金が科せられます。
また、違反行為が確認された場合、「課徴金納付命令」が発行されることもあります。
この課徴金制度は、不当な表示によって消費者を誤導する行為を抑止するために導入されました。
課徴金は、以下に該当する金額に3%を乗じた金額となります。
- 課徴金対象期間に取引をした
- 課徴金対象行為に係る商品および役務
- 政令で定める方法によって算定した売り上げ額
このため、課徴金を算出するためには売上額を算定しておく必要があります。
参考:『不当景品類及び不当表示防止法第8条 (課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方』
ステマ法規制について
令和5年10月1日より、ステマ(ステルスマーケティング)が新たに景表法の規制対象になりました。
ステルスマーケティングとは、広告であることを隠して宣伝することをいいます。
消費者庁はこういったステマ広告に対し、以下のように公表しています。
広告・宣伝であることが分からないと、企業ではない第三者の感想であると誤って認識してしまい、その表示の内容をそのまま受けとってしまい、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選ぶことが出来なくなるかもしれません。
上記の理由から、企業が第三者を装った宣伝またはインフルエンサーなどにPRを依頼する際は、広告であることが分かるように表記する必要があります。
また、ここで注意しておきたいのがステマ法の規制対象となるのはあくまで広告主(事業者)であるという点です。
違反対象になると行政処分および措置命令が下されてしまいます。
自身が規制対象にならないためにも、広告主はWOMJ※のガイドラインを参考にするなどして理解を深めることが重要です。
※一般社団法人口コミマーケティング協会
参考:『令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。』
参考:『10月施行「ステマ法規制」何をしたら違反? 5年前の投稿でも違反になる!? 参考にすべきガイドライン』
景表法が必要な理由
では、そもそもなぜ景表法が必要とされるのでしょうか?
景表法の目的は、大きく分けて「公正な市場環境の確保」と「消費者保護」にあります。
公正な市場環境を確保するため
まず、公正な市場環境の観点から考えると、メーカーや事業者が商品やサービスの品質、内容、価格等を誤って表示することは、市場の健全な競争を阻害します。
また不正確や表記や誤解を招くような表示も、消費者が商品やサービスを選ぶ際の合理的な判断を妨げるため、市場全体の公正な機能を損なってしまうことに繋がります。
こういった不適切な表記によって消費者が購入の意思決定を行うことを防ぎ、すべての消費者に公正な市場環境を提供することが景表法の目的の一つです。
消費者を保護するため
次に、消費者保護の観点から見ると、商品やサービスに関する誤った情報は、消費者の利益を著しく損なう可能性があります。
消費者は商品やサービスの価値を正確に理解し、それに基づいて購入の意思決定をします。
しかし、事業者が誤った情報を提供すると、消費者はその情報に基づいて商品を購入することになり、その結果として金銭的な損失を被る可能性があります。
また、景品の不当な提供は、消費者の購買行動を不適切に誘導する可能性があります。
過大な景品が提示されることで、消費者は本来の商品の価値ではなく景品の価値に引き寄せられ、不適切な購買行動を取る可能性があります。
以上のような理由から、景表法は消費者の適切な購買行動を確保し、公正で健全な市場環境を維持するために重要な法律となっています。
参考:『景品表示法の基礎知識 知らないと罰せられてしまうかも!』
景表法違反となった事例
景表法は消費者の利益を保護し、公正な競争を促進するために設けられた法律です。
しかし、適切な表示が行われない場合や誤解を招く可能性のある表示がなされた場合、法律違反となります。
以下には、過去に実際に景表法違反と認定された具体的な事例をご紹介します。
これらの事例は、企業がどのような行為を避けるべきか、また消費者がどのように自身の権利を守るべきかについての示唆を提供します。
通信速度における不当表示
引用:『消費者庁、広告の景表法違反でイー・アクセスに措置命令』
平成24年11月16日措置命令が出されたイー・アクセスにおける違反事例では以下のような表示が問題となりました。
対象商品又は役務 | モバイルデータ通信サービス |
表示媒体 | 新聞、雑誌および鉄道車両に掲示した広告 |
表示内容 | あたかも2012年6月末日までに「最大通信速度が75Mbps」となる基地局を「東名阪主要都市における人口カバー率99パーセント」になるように開設する計画があるかのように表示 |
違反理由 | 広告掲載時点では、最大通信速度が75Mbpsとなる基地局を東名阪主要都市における人口カバー率99パーセントになるように開設する計画はなかったため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
この事例では、企業は公的な表示媒体(今回は新聞、雑誌および鉄道車両)を通じて誤った情報を消費者に提供しました。
表示内容と実際との間にギャップがあったため、景表法に違反すると判断されました。
参考:『景品表示法における違反事例集』
学習塾の講師の学歴における不当表示
引用:『「国公立大出身講師98%」実際は14%だった(進学会)』
平成26年5月20日措置命令が出された、札幌市に本社を置く進学塾大手「進学会」の事例は以下のとおりです。
対象商品又は役務 | 大手進学塾 |
表示媒体 | 新聞の折り込みチラシ |
表示内容 | あたかも講師の98%が国公立大出身であると宣伝 |
違反理由 | 実際には約14%しかいなかったことが判明したため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
消費者庁は進学会に対して景表法違反の措置命令を行いました。
この事例は、教育サービス業界における広告表示の重要性を示しています。
特に、塾選びにおいて講師の質は重視されるポイントの一つであり、「塾は講師で決まる!」という謳い文句は、親や生徒に誤った印象を与える可能性があります。
参考:『「国公立大出身講師98%」実際は14%だった(進学会)』
衛生商品の除菌成分おける不当表示
引用:『クレベリン「空間のウイルス除去」根拠なし 大幸薬品に課徴金6億円 過去最高額』
令和3年11月措置命令が出された大幸薬品の事例は以下のとおりです。
対象商品又は役務 | 除菌用品「クレベリン」 |
表示媒体 | 公式Webサイト、商品パッケージ、SNS等 |
表示内容 | 「クレベリンは新型コロナウィルスを99%以上除去します」と記載していた |
違反理由 | 具体的な試験結果や科学的な根拠が提供されておらず、一般的な環境での効果が示されなかったため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
消費者庁は、大幸薬品に対して課徴金納付命令を発行しました。
この命令により、同社は6億744万円の課徴金を支払うこととなりました。
これは、課徴金納付命令が発せられた中でも特に高額な例となっています。
課徴金制度は、不適切な表示を行った事業者に対する制裁の一環として設けられており、その金額は事業者の違反行為による利益を反映したものとなっています。
この事例は、事業者が製品の効果を宣伝する際には、その根拠となるデータを明示することの重要性を示すとともに、不適切な表示を行った場合には厳しい制裁が下される可能性があることを示しています。
参考:『クレベリン「空間のウイルス除去」根拠なし 大幸薬品に課徴金6億円 過去最高額』
被服品(下着)の機能性における不当表示
引用:『景品表示法における違反事例集』
平成26年6月26日措置命令が出された新光通販株式会社の事例は以下のとおりです。
対象商品又は役務 | 被服品(下着) |
表示媒体 | カタログ、新聞広告、Webサイト |
表示内容 | 対象商品(下着)の吸収量について「吸収量200cc」など、あたかも対象商品を着用することで失禁した場合でも吸収量として表示された量までであれば、外側に尿が漏れ出すことがないかのように記載 |
違反理由 | 表示された吸収量を大幅に下回る量で、外側に尿が漏れる可能性があったため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
この事例では、消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると誤解を与え、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する可能性があったとして、消費者庁より景品表示法第5条の規定に基づく措置命令が下されました。
この事例からは、事業者が商品の性能や品質について表示する際には、その表示が実際の性能や品質を正確に反映しているかどうかを慎重に確認することが重要であるということが示されています。
参考:『消費者庁 新光通販株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令』
化粧品の効果における不当表示
引用:『景品表示法における違反事例集』
平成24年7月19日措置命令が出されたサニーヘルスの事例は以下の通りです。
対象商品又は役務 | 抗シワ効果を標ぼうする化粧品 |
表示媒体 | 公式Webサイト、新聞広告、チラシ |
表示内容 | 「90秒でしわを目立たなくする」などと表示し、あたかも対象商品(化粧品)を使用することで直ちに抗シワ効果が得られるかのように表示 |
違反理由 | 対象表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出するよう求められたが、提出された資料は対象表示の裏付けとなるものとは認められなかったため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
結果として、景品表示法第4条第1項第1号(優良誤認)に該当し、さらに合理的な根拠を示せなかったことから、消費者庁より景品表示法第4条第2項の規定に基づく措置命令が下されました。
この事例からは、事業者が商品の効果について表示する際には、その表示が合理的な根拠に基づいているかを慎重に確認することが重要であるということが示されています。
特に、消費者に対する誤解を招くような表示は景品表示法違反(優良誤認)となり、それにより消費者庁から措置命令が出される可能性があることも示唆されています。
なお、化粧品や医薬品などにおける広告規制について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事:『【担当者向け】薬機法(旧薬事法)の広告規制とは?4つの基礎知識を解説!』
参考:『健康食品販売会社(長野の「サニーヘルス」)、HPや新聞広告などで「90秒でしわを目立たなくする」などとうたった化粧品広告は合理的根拠がないとして、景表法違反で措置命令』
漬物容器の発酵性能における不当表示
引用:『景品表示法における違反事例集』
平成25年6月27日措置命令が出された通販会社「アクセルクリエィション」の事例は以下の通りです。
対象商品又は役務 | 漬物容器 浅漬け名人『菜漬器(さいしき)』 |
表示媒体 | テレビショッピング番組、Webサイト |
表示内容 | 当時販売していた商品にタウマリン鉱石を含むとし、その鉱石が放出する遠赤外線によって乳酸菌が1時間で6倍以上に増殖し、その結果、漬物が1時間で出来上がると表示 |
違反理由 | 対象表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出するよう求められたが、提出された資料は対象表示の裏付けとなるものとは認められなかったため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
これにより、消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると誤解を与え、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する可能性があったとして措置命令が下されました。
この事例からは、商品の効果や性能について表示する際には、その表示が合理的な根拠に基づいているかを慎重に確認することが重要であるということが示されています。
該当の企業は、この漬物容器を2012年2月までの1年間で約14万個販売し、約19億円を売り上げていましたが、今回の違反措置を受け、要望があれば返金対応を行うとしています。
また、この漬物容器の製造元メーカーである「ショウカンパニー」(神奈川県)は、この問題について「取引先への命令は重く受け止めている」としながらも、「第三者機関の調査で、タウマリン鉱石を含む陶器は乳酸菌の増加が認められる」と主張しています。
参考:『消費者庁は通販会社「アクセルクリエィション」が乳酸菌が増殖し早く漬物が出来るなどとうたった漬物容器の広告に根拠がないとして景表法違反で再発防止命令』
ファストフードの原材料における不当表示
引用:『マクドナルド「東京ローストビーフバーガー」、優良誤認で景表法違反。』
平成30年7月24日措置命令が出された日本マクドナルドの事例は以下の通りです。
対象商品又は役務 | 同社の提供メニュー |
表示媒体 | テレビCM |
表示内容 | 当時販売していた商品「東京ローストビーフバーガー」のローストされた牛赤身肉をスライスする映像を放送し、あたかもブロック肉が使用されているかのように表示 |
違反理由 | 対象商品の過半において、牛赤身ブロック肉を加熱加工して形状を整えた成形肉を使用していたため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
上記の内容は、一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると誤解を与える可能性があると判断されました。
これに対し同社は、提供していたメニューに使用したローストビーフは一枚肉と成形肉であるとし、どちらも品質、食感、味覚、外観においては同等のものであると釈明しました。
そのうえで消費者庁による指摘を自社サイト内で真摯に受け止めるとともに、今後の再発防止策として広告表示に関する勉強会の実施やガイドライン理解の徹底を宣言しています。
参考:『日本マクドナルド株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について』
参考:『マクドナルド「東京ローストビーフバーガー」、優良誤認で景表法違反。』
参考:『弊社に対する措置命令に関するお詫びとお知らせ』
回転寿司のキャンペーン商品における不当表示
引用:『スシロー、「おとり広告」。在庫ないのにキャンペーン継続。』
令和4年6月9日措置命令が出された株式会社あきんどスシローの事例は以下の通りです。
対象商品又は役務 | 運営会社「スシロー」の以下のキャンペーン商品 ➀「新物!濃厚うに包み」と称する料理 ➁「「匠の一皿 独創/とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」と称する料理 ③「冬の味覚!豪華かにづくし」と称する料理」と称する料理 |
表示媒体 | 自社Webサイト、テレビCM |
表示内容 | ➀令和3年月9月8日~20日までの間、あたかもスシロー店舗で提供するかのように表示 ➁令和3年9月8日~10月3日までの間、あたかもスシロー店舗で提供するかのように表示 ③令和3年11月26日~12月12日までの間、あたかもスシロー店舗で提供するかのように表示 |
違反理由 | ➀期間中のうち4日間において全国594店舗のうち583の店舗において終日提供されない日が発生したため ➁期間中のうち3日間において、全国594店舗のうち540の店舗で終日提供されない日が発生したため ③期間中(最大で全期間)において、全国594店舗のうち583の店舗で終日提供されない日が発生したため |
違反内容 | おとり広告 |
おとり広告は、景表法が規定する不当表示に当てはまりますが、優良誤認表示や有利誤認表示と異なり課徴金が徴収されません。
そのため、この場合は事業者名の公表および措置命令が下されるのみとなります。
今回の事例で同社は、景表法に違反した旨を消費者に対して徹底周知、また再発防止策の考案および従業員、役員への周知命令が下されました。
参考:『スシローに「おとり広告」で措置命令。飲食店が販促で気をつけるべき点は?』
参考:『株式会社あきんどスシローに対する景品表示法に基づく措置命令について』
コンサートの会場レイアウトにおける不当表示
令和5年2月15日措置命令が出されたコンサート提供事業者の事例は以下の通りです。
対象商品又は役務 | 令和4年に東京ドームで開催されたライブコンサート |
表示媒体 | 同コンサートの公式サイトおよびチケットサイト |
表示内容 | 会場内のレイアウトおよびの座席や配置を図示した画像において、あたかもSS席が1階アリーナ、S席が1階スタンド、A席がバルコニー席および2階席に当たるかのように表示 |
違反理由 | 実際はSS席を購入しても1階スタンド後方席に当たる場合や、A席を購入してもバルコニー席ではなく2階スタンド席後方でしかライブを聞けないものであったため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
この事例では、景表法に違反したコンサート提供事業者3社に対し措置命令が下されました。
景表法がアーティストのライブコンサートにおいて適用されたのは今回が初めてであり、商品の販売だけでなくコンサートなどのサービス提供においても適用されることが分かります。
参考:『有名アーティストのライブに係る優良誤認の事案』
参考:『コンサートの提供事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について』
オンライン家庭教師の保証制度における不当表示
引用:『株式会社バンザンに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について』
令和5年8月1日措置命令が出されたオンライン家庭教師事業を営む株式会社バンザンの事例は以下の通りです。
対象商品又は役務 | オンライン個別学習指導 |
表示媒体 | 自社Webサイト |
表示内容 | 「オンラインプロ教師メガスタ 『返金保証』と『成績保証』」「ご不安なく始めていただくために、2つの 保証制度をご用意しています。」「成績保証」「4/30まで」などと表示し、あたかも記載期限までに申し込んだ場合は入会金および授業料が返金、1か月分の通常授業に値する授業を無料で受けられるかのように表示 |
違反理由 | 実際には記載期限後に申し込んだ場合でも、返金保証および成績保証を利用できるものであったため |
違反内容 | 有利誤認表示 |
上記の内容に加えて、同社では「利用者満足度第1位」「オンライン家庭教師 口コミ人気度 第1位」などと客観的な調査ではない方法で取得したデータを掲載した広告が優良誤認表示に当たるとされました。
消費者庁は同社に対して有利誤認表示および優良誤認表示に該当するとして、合計6346万円の課徴金の納付を命じ、これを受け同社は公式サイトで謝罪および再発防止に努めると公表しています。
参考:『株式会社バンザンに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について』
参考:『家庭教師バンザンに課徴金 景品表示法違反で消費者庁』
参考:『消費者庁からの課徴金納付命令について』
まとめ
景表法の遵守は、企業の信頼性、評判、そして経営の持続性に直結する重要な要素であり、違反した場合には厳しい罰則が科せられます。
消費者庁と各都道府県が連携し、厳正な法執行が行われていることを理解し、企業としては法令順守を最優先事項とするべきです。
特に景表法違反は、広告表示に関わる全ての企業に影響を及ぼします。
違反事例を振り返り、法律遵守の重要性を再確認することで、信頼性のある企業経営を目指すべきです。
この記事を読み、景表法の重要性について理解することは大変だと感じた方や、専門的な知識が必要だと感じた方は、法令遵守を支援する専門機関に相談することも一つの手段です。
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また、薬機法医療法遵守広告代理店の認証も受けており、厳しい広告審査も対応可能です。
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参考:『景品表示法の優良誤認と
弁護士からのコメント
幸谷 泰造 先生
景品表示法は大きく分けて表示規制と景品規制があり、広告を掲載したり景品を配布する場合には必ず遵守しなければならない法律です。
表示規制における優良誤認と有利誤認や、景品規制における総付景品などは、違反かどうか判断を迷うケースがあります。
景表法違反かどうか迷われた場合は、専門家に相談することをおすすめします。
監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。