Webサイトの運営者(アフィリエイター)を通して広告を配信できるのが「アフィリエイト広告」です。
成果報酬型であるため、閲覧者が商品の購入やサービスへの申し込みなどを行うことで、アフィリエイターへの報酬が発生します。
もともと主流であったブログやWebサイトに加え、近年はSNSもアフィリエイトの媒体として活用されています。
ユーザーにとって身近なプラットフォームを利用できることから、注目している企業も多いでしょう。
アフィリエイト広告では、広告の制作や公開はアフィリエイターの手に委ねられていることから、広告主である企業側の管理が難しいという側面があります。
商品・サービスの内容に関する不当表示などのトラブルを防ぐため、消費者庁では対策を強めています。
今回は、広告主としてアフィリエイト広告を運用する際の注意点やコンプライアンス遵守のための対策についてご紹介します。
以下の記事では、アフィリエイト広告とリスティング広告の違いをまとめています。
あわせて参考にしてください。
関連記事:『アフィリエイト広告とリスティング広告の5つの違いとは?徹底解説』
Contents
アフィリエイト広告とは?
アフィリエイト広告がはじめて登場したのは、1996年のことです。
Amazonがスタートした「アソシエイト」というサービスが、現在のアフィリエイト広告の起源となっています。
日本においては、1999年にバリューコマース株式会社によってクリック保証型の広告サービスが導入されたのがはじまりです。
まずはアフィリエイト広告の仕組みやメリット、そして懸念点についてみていきましょう。
参考:『アフィリエイトって?』
成果報酬型の広告
アフィリエイト広告は、Webサイトやブログの運営者(アフィリエイター)が、自身が管理するWebページやコンテンツに広告を掲載するのが特徴です。
該当する広告を経由してコンバージョン(商品の購入やサービスへの申し込みなど)が発生した場合、アフィリエイターが報酬を受け取ることができます。
アフィリエイト広告の運用には、広告主・ASP・アフィリエイターが関与しています。
- 広告主…商品・サービスを提供する事業者
- ASP…「アフィリエイト・サービス・プロバイダー」の略語。広告主とアフィリエイターを仲介する業者
- アフィリエイター…広告が掲載されるWebサイトの運営者。個人運営のサイトだけでなく、企業が運営するWebメディアが媒体となる場合もあります
広告主がASPに広告出稿を依頼し、ASPがアフィリエイターに「広告案件」として案内を行います。
そして、ASPから提供された情報や画像などをもとに、アフィリエイターがWebサイトに掲載する広告を作成します。
掲載先のサイトは、ブログやランキング形式のサイトなどさまざまですが、SNSを使ってアフィリエイトを行う「SNSアフィリエイト」も活発です。
InstagramやTikTok、X(旧Twitter)、YouTubeといった媒体が活用されています。
また、アフィリエイト広告と混同しやすい広告の一つに、「Googleアドセンス」があります。
GoogleアドセンスではGoogleの認定を受けたWebサイトに広告を掲載することができます。
参考:『アフィリエイト広告とは?仕組みと特徴から成功ポイントまで』
参考:『SNSアフィリエイトとは? ASPが始め方から活用方法までを詳しく解説!』
関連記事:『アフィリエイトとアドセンス(Google)4つの違いを解説』
関連記事:『ASP広告代理店を使う3つのメリットと選ぶポイント4選を解説!』
アフィリエイト広告のメリット
アフィリエイト広告のメリットとしては、以下が挙げられます。
- 成果(売り上げや申し込み)が得られた時点で報酬が発生する
- ブログやSNSなど、ユーザーにとって身近な媒体に広告掲載ができる
- ASPによる仲介を受けられるため、広告主が媒体(アフィリエイター)を探す必要がない
リスティング広告をはじめとするWeb広告の多くはクリック課金制を導入しており、広告がクリックされると、コンバージョンに至らない場合も費用が発生します。
一方、アフィリエイト広告は設定しているコンバージョンに到達した場合のみ報酬を支払うため、高い費用対効果が期待できます。
また、ASPが媒体を探し、アフィリエイターが広告制作(ブログのテキストやSNSの投稿など)を行うので、広告主は少ない手間で出稿できるという点もメリットです。
参考:『アフィリエイト広告とは?仕組みと特徴から成功ポイントまで』
アフィリエイト広告のデメリット
出稿費用や工数についてメリットがある一方で、アフィリエイト広告ならではの懸念点もあります。
- アフィリエイターは報酬を得ることが目的であることから、虚偽の広告や誇大広告といった不当表示が発生しやすい
- ASPを仲介したアフィリエイターが広告を作成するため、広告主が出稿内容を管理しにくい側面がある
アフィリエイターは、ユーザーが商品を購入したり、サービスに申し込んだりすることではじめて報酬を得られます。
そういった背景から、コンバージョンへと誘導し報酬を得るために、誇大広告や虚偽広告といったコンプライアンスに反する広告表現がなされているケースも散見されます。
加えて、ASPを介していることから広告主が制作物の内容を管理しにくいという点も挙げられます。
「どの媒体に、どのような形で掲載されているのかを把握できていない状態で、自社の商品・サービスに関して不当な表示が行われる」といった事態が起こりやすいので、注意が必要です。
コンプライアンスに反したアフィリエイト広告の例
- ブログやサイト内で、許可を得ずに他社の著作物を引用したり、画像を使用したりする…著作権の侵害
- 美容液の広告で、「これを塗れば肌が若返る」「-10歳!奇跡のアンチエイジング」のような表現を使用する…薬機法で認められていない表現
- 「業界ナンバーワンの満足度」「唯一無二の」といった表現を、根拠となる事実が明示されていない状態で使用する…景品表示法に抵触
- 報酬が発生する広告案件であるが、ブログ内に「PR」「広告」などの表記をせず、商品に対するプラスの感想のみを記載する…ステルスマーケティングに該当
上記の例は、報酬を目的として意図的に行われる場合もあれば、それが違反行為であると知らずに行われる場合もあります。
リスクヘッジとして、アフィリエイターとの間にルールを策定する、取り決めを行いましょう。
参考:『アフィリエイト広告の広告規制強化や法律違反について解説します』
参考:『薬機法でアンチエイジング・エイジングケアは使える?言い換えは?』
関連記事:『アフィリエイト広告の事例16選!広告主と掲載者のメリット・デメリット』
アフィリエイト広告における不当表示の事例
2021年3月3日に措置命令が出された「T.Sコーポレーション」の育毛剤に関する広告の表示は、消費者庁がアフィリエイト広告に対して「不当表示」とみなした初の事例です。
違反行為および措置命令の概要は以下の通りです。
対象商品 | 「BUBKA ZERO」と称する育毛剤(以下「本商品」) |
表示媒体 | アフィリエイトサイト |
表示内容 |
|
違反理由 | 当該表示について裏付けとなる資料の提出を求めたところ、提出された資料は合理的な根拠を示すものであると認められなかったため |
違反内容 | 優良誤認表示 |
サイト内には「※イメージです」「※個人の感想です。」「※画像はイメージです。」「※イメージ」などの記載がありましたが、一般消費者の商品の効果に関する認識を打ち消すものではないとされました。
措置命令の概要は以下の通りです。
- 該当するアフィリエイトサイトの表示が、一般消費者に対して、実際の商品よりも著しく優良であると誤認を誘うものであり、景品表示法に違反していると周知を徹底する
- 再発防止策を講じ、役員に周知を徹底する
- 今後、合理的な根拠がないまま、問題となった箇所と同様の表示をしない
参考:『アフィリエイト広告をめぐる問題』
参考:『株式会社T.Sコーポレーションに対する景品表示法に基づく措置命令について』
参考:『育毛剤広告に「根拠なし」消費者庁が通販会社に措置命令』
関連記事:『【基礎】景表法に違反した場合どうなる?10の事例で解説』
アフィリエイト広告における規制強化について
前述の育毛剤の案件に措置命令が出される以前にも、アフィリエイト広告に関する不当表示が問題視されていました。
消費者庁ではこの問題に対処すべく、2021年6月から2022年1月にかけて全6回にわたる「アフィリエイト広告等に関する討会」を実施し、不当広告を未然に防ぐための対策を講じた報告書を公開しました。
そして、2022年6月には「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」が改正されます。
「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」の第26条では、事業者に向けて、不当表示を未然に防止するために必要な措置を講じることを義務付けており、前述の指針はそのために作られたものです。
この改正によって、アフィリエイト広告に関連する内容が多数追加されています。
同時に、消費者庁から公表されている「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」においても、アフィリエイト関連の記載が改定されました。
こちらは、インターネット上の取引における注意点を示したものですが、留意事項として以下が記載されています。
- アフィリエイト広告で二重価格表示(「今だけ限定価格!」のような訴求)を行う際、最近販売された同一商品・サービスの価格を比較対照価格に用いる、比較対照価格がどのような価格であるかを具体的に表示する
- アフィリエイト広告において商品・サービスの効能・効果を標ぼうする際は、十分な根拠なしに効能・効果が得られるかのように誤認される表示を行わない
参考:『事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針』
参考:『アフィリエイト広告に関する景品表示法の考え方』
参考:『インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項』
アフィリエイト広告で気をつけるべきポイント
ここでは、上述した指針をもとにアフィリエイト広告規制において気をつけるべきポイントをまとめました。
指針のなかでは「事業者が講ずべき表示等の管理上の措置の内容」として、以下の7つの記載があります。
- 景品表示法の考え方の周知・啓発
- 法令遵守の方針等の明確化
- 表示等に関する情報の確認
- 表示等に関する情報の共有
- 表示等を管理するための担当者等(表示等管理担当者)を定めること
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
それぞれの具体的対策としては以下のようなものが挙げられます。
①景品表示法の考え方の周知・啓発
- 事業者は、表示に関係する役員・従業員に向け、景品表示法の考え方についての周知・啓発を行う。朝礼・終礼や社内報、講習、勉強会などを通して社内での啓発活動を実施する。
- アフィリエイターに対しても同様に周知・啓発を行うことが大切である。
②法令遵守の方針等の明確化
- 事業者は、景品表示法を含む法令遵守の方針、とるべき手順等を明確化する。社内規程や行動規範等として定め、違反があった際の対処についても明らかにしておく。
- 不当表示が生じないよう、表示に関する手順やどのような表示が不当にあたるのかをマニュアル化する。
- アフィリエイターに対しても、法令遵守の方針を共有する。また、方針に違反した際の対処(成果報酬の支払い停止、契約解除といった具体的な措置)を明確にしておく。
③表示等に関する情報の確認
- 景品類を提供する場合、違法とならない景品類の最高額・総額・種類・提供の方法などを確認する。
- 商品の長所や要点の訴求にあたり、根拠となる情報を確認する。
- アフィリエイト広告においては、アフィリエイターが作成した内容を事前にチェックする。
- 人員体制などの問題で事前チェックが難しい場合は、表示後に可能な限り早い段階で全ての当該表示内容を確認する、成果報酬の金額や支払いの頻度が高いアフィリエイターの表示内容確認を優先する、ASP業者に確認を委託するといった対応をとる。
④表示等に関する情報の共有
- 事業者は、表示の根拠となる情報を必要に応じて関係者(アフィリエイターも含む)に共有し、閲覧できる状態を作っておく。
- 表示の根拠となるすべての情報を事前にアフィリエイターに共有するのが難しい場合は、相談を受け付ける体制を構築したり、ASPを介して共有するといった方法で対応する。
⑤表示等を管理するための担当者等を定めること
- 事業者は、表示内容を管理するための担当者または担当部門を定めておく。
- アフィリエイターにも、管理担当者を周知する。また、アフィリエイターにも管理担当者が設置される場合は、広告主とアフィリエイターのあいだでそれぞれの管理担当者の権限や所管を確認する。
- 事業者だけでなくアフィリエイターの表示管理担当者も含めて、景品表示法などの表示に関する法令についての講習を実施する。
⑥表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
- 事業者は、該当の商品やサービスが一般消費者に供給される期間あるいは事後に確認できるよう、表示に関する情報や資料の保管を行う。
- アフィリエイト広告のように、一度削除されると回復させることが困難な表示については、表示等の保存も含めて、根拠となる情報を事後確認できるように事業者が情報や資料の保管を行う。
- 根拠となる情報が多数にのぼりすべての保管が難しい場合は、アフィリエイターに義務付ける、ASPに委託するなどの方法をとる。あるいは、保管のかわりに定期的に表示内容を確認したり、成果報酬の金額や支払いの頻度が高いアフィリエイターの表示の根拠となる情報を重点的に保管するといった対処をする。
⑦不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
- 事業者は、景品表示法違反あるいはそのおそれがある事案が発生した場合は、事実関係を迅速・正確に確認し、不当表示等による一般消費者の誤認排除、そして再発防止に向けた措置を講じる。
- 不当表示等が明らかになった場合、 事業者は自社やASP、またはアフィリエイターを通して迅速に削除・修正できる体制を整えておく。
- アフィリエイターが契約内容に違反して不当表示が発生した場合、あらかじめ取り決めておいた措置をとる。(例:報酬の支払い停止や変換、契約解除など)
⑧前記①〜⑦まで以外の措置の例
- 一般の消費者の視点ではアフィリエイト広告が体験談や感想なのか、それとも広告であるのかが判断しにくい。そのため、事業者とアフィリエイターとの関係性を理解できるような表示を行うことをアフィリエイターに求める必要がある。
なお、これらの措置は必ず網羅しなければならないものではなく、事業者の実態や商品・サービスの内容にあわせた具体的な対応を行うべきであるといった旨が示されています。
参考:『事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針』
参考:『アフィリエイト広告規制とステルスマーケティング規制(ステマ規制)』
アフィリエイト広告を運用するうえで知っておきたい法律
景品表示法でアフィリエイトについて言及された箇所のほかにも、自社が扱う商品・サービスの特性に合わせて法律を理解しておくことが重要です。
たとえば、健康食品や化粧品などを販売する場合は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」のチェックは欠かせません。
健康食品や化粧品の広告で使用できない表現が定められているため、規定の範囲ないでキャッチコピーや訴求文を作成する必要があります。
また、2023年10月には景品表示法の一部が改正され、ステルスマーケティングが不当表示にあたることが明確になりました。
このように、事業者や消費者を取り巻く状況は日々変化するため、常に最新の情報にアンテナを立てておきましょう 。
参考:『薬機法の化粧品広告で使える表現と効能効果!定義・言い換え』
参考:『令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。』
関連記事:『【担当者向け】薬機法(旧薬事法)の広告規制とは?4つの基礎知識を解説!』
まとめ
この記事を読んで、アフィリエイト広告の運用が難しいと少しでも感じたら、広告代理店に任せるのも一つの手です。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。