Webサイト閲覧中に様々な広告が目に留まり、特に気にならないこともあれば、その広告をクリックして詳細を閲覧することもあるなど、広告の内容によって消費者の行動が異なります。
消費者庁の調査では、消費者として心掛けている行動について「表示や説明を十分認識し、その内容を理解した上で商品やサービスを選択する」事を「心掛けている」回答した割合が75.7%と発表しており、商品やサービスの表示内容や説明について積極的に調べる消費者が多いことがわかります。
その調査時に消費者との接点となる広告は、このような消費者の行動心理を上手く活用している場合があります。
そこで今回は、広告でより重要な情報の共有に役立つ心理テクニックを詳しく解説していきます。
広告と心理学
そもそも心理学とは、人の行動や心の働きを研究する学問です。
心理学は多数の分野に分かれており、広告で有効なのは「行動心理学」という分野です。
行動心理学とは、人間の行動や仕草を観察して研究する学問で、アメリカの心理学者ジョン・ワトソンによって20世紀初頭に提唱されました。
実は広告では、行動心理学を踏まえた、効果的に購買意欲を刺激する心理手法が頻繁に活用されています。
つまり、行動心理学を知ることで、商品・サービスの集客や販売促進につなげることが可能になる場合もあります。
しかし、心理テクニックを乱用したり、広告媒体によっては誇張・虚偽表現が禁止されている場合があります。
参考:『心理学の歴史|心理学用語集』
心理テクニック7選
カクテルパーティー効果
カクテルパーティー効果とは、騒がしい状況でも自分に必要な声はしっかりと聞き取れる現象のことです。
耳から聞こえた音を全て情報として認識してしまうと、脳は大量の情報を処理できずパンクしてしまいます。
そのため、脳は入ってきた情報を、自分に必要があるのか判断して選び取っています。
この脳の働きによって、騒がしい状況でも、自分に必要な声を判断して聞き分けられるのです。
広告に例えると、「体脂肪が気になる方へ」「寝ても疲れがとれないカラダになっていませんか?」などと、消費者が持つ悩みと結びつけて打ち出すケースが見られます。
実証実験
カクテルパーティー効果の代表的な実験は、提唱者であるエドワード・コリン・チェリーが行った両耳分離聴の実験です。
- 被験者に左右の耳から異なる音声を同時に聞かせる
- 片耳だけに注意を向けるように指示する
実験の結果、注意を向けなかった方の音声はほとんど聞き取れないことが判明しました。
また、注意を向けていない方の耳に被験者の名前を流すと、被験者の意識する方の耳が変わり自分の名前を聞き取れていました。
この実験により、人は自分の意識を傾けた情報を優先して聴きとり、それ以外の情報は無視していることが明らかになりました。
参考:『Some Experiments on the Recognition of Speech, with One and with Two Ears』
カリギュラ効果
カリギュラ効果とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のことです。
例えば、「絶対見るな」と閲覧を禁止されると、むしろかえって見たくなる心理現象が挙げられます。
広告に例えると、「本気で痩せたい人以外は絶対に買わないでください」「本当は公開したくないノウハウ」などと書き、逆に興味をそそらせるケースが見られます。
実際に、モンスターストライクのCMでは「モンストやるなよ!」というカリギュラ効果を狙ったフレーズが使われています。
参考:『カリギュラ効果|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA』
参考:『ダチョウ倶楽部・上島竜兵、メリクリだって「モンストやるなよ!」モンスターストライクCM|YouTube』
実証実験
カリギュラ効果と似たものとして、大谷和大氏・山村麻予氏が行った心理的リアクタンスの実験があります。
心理的リアクタンスとは、自由を奪われたことによる「心理的反発」のことです。
カリギュラ効果が禁止に対してかえって興味を示すのに対し、心理的リアクタンスは強制されたことへの抵抗感を意味します。
この実験では、小学4~6年生に対して4通りの伝え方で宿題提出を求め、心理的リアクタンスがどれだけ強化されるのかを検証しました
- 宿題をもってきましょう
- 宿題をわすれないでください
- 宿題をもってきなさい
- 宿題をわすれないようにしなさい
実験の結果、「〜しましょう」「〜ください」よりも、「〜しなさい」の方が強く心理的リアクタンスが喚起されることが判明しました。
これは児童自身の選択の自由(宿題をするorしない)が奪われた結果、心理的リアクタンス(心理的反発)が強化されたと考えられます。
この実験により、人は命令口調で行動の指示をされると、どれだけ指示内容が的確なものだったとしても、反発したくなることが明らかになりました。
参考:『学級の規範の伝え方が児童の心理的リアクタンス、規範の取り入れ意図に及ぼす影響』
スノッブ効果
スノッブ効果とは、他人とは違うものが欲しいという心理のことです。
簡単に入手できないほど需要が増し、簡単に入手できるようになると需要が減少します。
他者との差別化願望が背景にあり、限定性や希少性に価値を持ちます。
日本人は比較的集団意識が強い国民性なので、極端に他人と差別化するのではなく、少し差別化ができて個性的なものを好む傾向にあります。
広告に例えると、「○個限定」「日本未発売、初上陸」などといった表現を使用するケースが見られます。
参考:『スノッブ効果とは何?|わかりやすく解説 Weblio辞書』
関連記事:『【初心者向け】成果を上げる広告文の作り方と8つの訴求軸を解説』
実証実験
スノッブ効果の代表的な実験は、社会心理学者のステファン・ウォーチェルの実験です。
まず、被験者に2つの瓶に入ったチョコレートを評価してもらう。
その際、チョコレートの入れ物を2つにわけます。
2.瓶の中に2枚入ったチョコクッキー
次に被験者に、それぞれのクッキーの味を評価してもらい価格を設定してもらう。
実験の結果、多くの被験者が⒉のクッキーの方が、⒈のクッキーよりも美味しいと評価し、クッキーの値段も高く設定したのです。
つまり、同じ味のクッキーであるにも関わらず、手に入りにくいものに対してはそれだけ高く評価したということです。
シャルパンティエ効果
シャルパンティエ効果とは、同じ重量の物体を比較した際に、視覚的に大きく見える物の方をより軽く、視覚的に小さく見える物の方をより重いと錯覚してしまう現象のこと。
「大きさ、重さの錯覚(size-weight illusion)」と表現される場合もあります。
例えば、同じ重さの「綿」と「鉄」があった場合、大きく見える綿よりも、重いイメージでかつ小さく見える鉄の方を「重い」と錯覚してしまう現象が挙げられます。
参考:『シャルパンティエ効果|聖泉大学 京都新聞教育面コラム「心理学おふさいど」』
実証実験
「シャルパンティエ効果」は、フランスの医師「オーグスチン・シャルパンティエ」が、1891年に出版した「Size-weight illusion(大きさ – 重さの錯覚)」によって発表されました。
- 同じ重さで、大きさが違う2つの球を用意します。
・4cm
・10cm
- それぞれの球を持ち上げて、どちらが重たいかを比較する。
実験の結果、被験者は「10cmの方が軽い」と答えました。
この実験によってシャルパンティエ効果の実証がされました。
参考:『シャルパンティエ効果|聖泉大学 京都新聞教育面コラム「心理学おふさいど」』
バンドワゴン効果
バンドワゴン効果とは、「時流に乗っている側」「政党や主義などで人気のある側」だと人々に認識されることによって、さらに人が集まったり、人気や支持が加速する状況が作り出されることを意味します。
バンド(band)とは、楽団/音楽を演奏する団隊 という意味です。
参考:『バンドワゴン効果|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA』
実証実験
バンドワゴン効果を実証した実験として有名なのが、「アッシュの同調実験」。
“同調実験” という名のとおり、人間は周りの意見にどのくらい影響されてしまうのかを検証した実験です。
② 実は、被験者の周りにいるほかの参加者たちは、みな実験者側が用意した仕掛け人(サクラ)。ときどき、誤りの選択肢を満場一致で選ぶよう指示されています。
たとえば、正解が明らかに「1番」であるにもかかわらず、自分以外の全員が「3番」と答えたら、被験者は周りの意見に流されてしまうのか……というのを検証するのが、実験の目的です。
実験の結果、ほかの参加者が一斉に間違った回答を選ぶと、やはり被験者は同調し、明らかに誤った選択肢を選ぶ確率が高まりました。
「同じ長さの線を答える」という単純明快な課題でさえ間違えてしまうのですから、バンドワゴン効果の強さがわかりますね。
参考:『日本人は集団主義なのか-実証研究』
ハロー効果
ハロー効果とは、人などの対象を評価するときに、目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪んでしまう現象を指します。
ハロー効果には「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」の二種類があります。
ポジティブ・ハロー効果は、ある項目について評価が高いと感じた人や商品に対し、その影響で別の項目も高く評価してしまう現象です。
例えば、スポーツの全国大会で優勝したような応募者に対して、採用担当者が仕事ができたり、協調性が高いといった評価をすることが挙げられます。
一方でネガティブ・ハロー効果は、悪いと判断した特定の特徴の影響を受けて、別の特徴も低く評価してしまう現象です。
参考:『ハロー効果|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA』
実証実験
ハロー効果を裏付ける代表的な実験として、社会学者ソロモン・アッシュが行った「印象形成実験」があります。
ソロモンは被験者に、人物Aと人物Bの性格の特徴を挙げた以下の内容を見せました。
B:知的、敏腕、勤勉、冷たい、てきぱきしている、現実的、注意深い
この両者の違いは「温かいか冷たいか」だけです。
しかしこれを見た被験者は、この情報だけで人物Aを肯定的に、人物Bを否定的に評価したのです。
この実験結果から、「人の印象は個々の特徴を足し合わせたものではなく、全体として見たひとつのまとまりとして形成される」ということが明らかになりました。
さらにソロモンは、被験者たちにもう一つリストを提示します。
B:嫉妬深い、頑固、非難的、強力、勤勉、知的
この両者のリストの違いは言葉の「並び順」だけです。
しかしながら、これらの情報を見た被験者が受け取ったイメージはやはりAとBで異なったのです。
人物Aのイメージは「欠点はあるが、能力のある人」であるのに対し、人物Bのイメージは「欠点があるため能力があっても残念な人」というネガティブな印象でした。
この実験結果から、「相手への評価はどんな印象を最初に得るかによって決まる」ということが証明されました。
そのため、広告文を作成する際もテキストの順番を工夫することでより効果的な訴求になる場合があります。
ウィンザー効果
ウィンザー効果とは、ある事柄について当事者が自ら発信するより情報よりも、他者を介して発信された情報の方が、信頼性を獲得しやすいとする心理効果です。
例えば、A社が自社のサービスや商品情報を発信する場合において、A社が自ら発信する情報よりも、口コミやレビューといったユーザーである第三者が発信する情報の方が、信頼性を獲得しやすい傾向にあります。
この心理効果は、上記の例のようにビジネスにおいても有効性が示されており、実際に様々な企業のマーケティング戦略に取り入れられています。
ウィンザー効果の名称である「ウィンザー」とは、アーリーン・ロマノネスによる著書『伯爵夫人はスパイ』において、登場人物であるウィンザー伯爵夫人が述べた「第三者の褒め言葉が何よりも効果的だわ」に由来しています。
ウィンザー効果のビジネスにおける活用例として、「口コミ」や「アンケート」、「インタビュー」といったマーケティング戦略があります。
参考:『ウィンザー効果とは』
実証実験
ウィンザー効果の実証実験は、1970年代にジョン・グッドマンのコカ・コーラ社を対象に行った「口コミの波及効果」調査をもとにご紹介します。
- 苦情処理の結果として、消費者の4〜5人は「企業側の回答対応に満足した」という口コミがされました。
- 消費者の9〜10人は「企業側の回答対応に不満があった」という口コミをされました。
つまり、企業側の対応に満足している消費者よりも、対応に不満があった消費者の口コミが満足した口コミの倍近くまで増加していたのです。
不満があったというような悪い口コミは、さらに他の消費者へ影響を及ぼし、口コミが増加していきました。
実験の結果、好意的な口コミよりも、非好意的な口コミの方が影響力を持つので、連鎖していくということがわかりました。
つまり、良い口コミよりも悪い口コミの方が投稿されることが多く、連鎖していくことがわかったのです。
参考:『グッドマンの法則』
まとめ
この記事を読んで、広告の心理テクニックを活用するのが難しいと少しでも感じたら、広告代理店に任せるのも一つの手です。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。