大手総合広告代理店である電通の発表によると、2023年の日本の広告費用の総額は7兆3,167億円で、2022年と比較して103.0%の伸びを見せました。
参考:『株式会社電通|2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析』
2021年にはマスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビメディア)の広告費をインターネット広告が上回るなど、広告を取り巻く環境は大きく変化しています。
さまざまな媒体があり、消費者が日々無数の情報に接する昨今、広告を成功させるためには戦略が必要です。
そのためには、広告の出稿や効果測定の際に役立つユーザーの行動モデルについて知っておくと良いでしょう。
今回ご紹介する「マーケティングファネル」はその一つです。
マーケティングファネルの種類や、広告戦略に活用するための方法についてご説明します。
広告の定義や広告業界について解説している下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:『広告はなぜ必要なのか?企業側&消費者側にとっての『価値』とは?』
Contents
マーケティングファネルとは?
マーケティングファネルとは、ユーザーの消費行動を漏斗の形状になぞらえて図にしたものです。
ここでは、マーケティングファネルという言葉の意味をご紹介します。
マーケティングファネルの意味は?
ファネル(funnel)とは、日本語では「漏斗(ろうと、じょうご)」を指す言葉です。
先細りした円錐形の器具は、小・中学校の理科の実験で手にした覚えがある方も多いでしょう。
横から見ると三角形に見えるこの漏斗の形を消費者の行動に当てはめたフローをマーケティングファネルと呼びます。
ユーザーの行動をファネルになぞらえると
自社の商品・サービスの情報と接触したすべてのユーザーが購入や申し込みに至るわけではありません。
次第に母数から絞られ、購入に近い段階になるにつれて人数が少なくなっていくのが一般的です。
この流れが漏斗の形状に似ていることから、マーケティングファネルと名付けられています。
参考:『株式会社イノベーション「【図解】ファネルとは?事例で分析方法を理解しよう」』
3種類のマーケティングファネルを解説
マーケティングファネルには、下記の3パターンがあります。
- パーチェスファネル
- インフルエンスファネル
- ダブルファネル
ここでは、3種類のマーケティングファネルの特徴についてみていきましょう。
パーチェスファネル(purchase funnel)
パーチェス(purchase)には「購入」という意味があります。
パーチェスファネルは、ユーザーが商品を認知してから購入・申し込みに至るまでの消費行動を表しており、3つのマーケティングファネルのなかでは一番オーソドックスなパターンです。
認知
見込みがあるユーザーに自社の商品・サービスの存在を知ってもらうフェーズであり、購買行動の第一段階となります。
ユーザー自身がニーズや課題を認識しておらず、ざっくりとそのカテゴリーに関心を寄せている段階にあります。
「特定の商品に目星をつけているのではなく、情報収集をスタートさせたばかり」といったところです。
認知フェーズのユーザーに適した施策
オンラインイベント、Webコンテンツ、SNS広告、リスティング広告、ディスプレイ広告など
興味・関心
このフェーズのユーザーは、商品やサービスに関して興味を抱いています。
情報収集を深め、各メーカーの商品の仕様について調べたり、気になるメーカーに目星をつけ始める段階です。
興味・関心フェーズのユーザーに適した施策
ホワイトペーパー、導入事例、セミナーなど
比較・検討
集めた情報をもとに、購入候補の商品・サービスのスペックを比較検討するフェーズです。
ユーザーは、Webサイトやパンフレットに記載されている商品や仕様についての詳細はもちろん、口コミに寄せられた購入者のリアルな声などもチェックします。
比較・検討フェーズのユーザーに適した施策
製品サイト、パンフレット、商品レビューサイトの口コミ、リターゲティング広告など
購入・申込
これまでのフェーズを通して、ユーザーのニーズにもっともかなう商品・サービスが購入されます。
たとえばECサイトで商品をカートに入れたユーザーであっても、最終的に購入ボタンをクリックしない場合もあります。
購入・申込フェーズのユーザーに適した施策
購入に至るまでのサイト上の導線の最適化など
参考:『株式会社MOLTS「マーケティングファネル完全ガイド|種類や活用方法を解説」』
パーチェスファネルの基となっているのは、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが提唱した「AIDMAの法則」です。
AIDMAの法則では、消費者の購買行動に至る段階として下記が示されています。
- Attention(注意)…認知する
- Interest(興味)…興味を持つ
- Desire(欲求)…欲しいと思う
- Memory(記憶)…記憶する
- Action(行動)…購入する
引用:『スマートキャンプ株式会社「AIDMA(アイドマ)の法則とは?AISASとの違い・マーケティング活用例を解説」』
パーチェスファネルと似通った流れであることがわかります。
関連記事:『【初心者向け】すぐに使える!広告で役立つ心理テクニック7選』
インフルエンスファネル(influence funnel)
インフルエンス(influence)には「影響」という意味がある言葉です。
インフルエンスファネルは、購買までの流れを表したパーチェスファネルとは対照的に、購買後のユーザー行動について示しているのが特徴です。
上の図のように【継続】→【紹介】→【発信】のフェーズから成り立ち、ユーザーが購買行動を起こしたあとに、口コミやSNSなどを駆使して商品を買った感想や満足感などがシェアされていく様子を表しています。
継続
商品を購入したユーザーの継続利用を促し、リピーター化するフェーズです。
LTV(ライフタイムバリュー=ある顧客と取引を始めて関係が終わるまでに得られる利益)を高めるために、手厚いユーザーサポートを用意しましょう。
継続フェーズのユーザーに適した施策
顧客サポートデスク、継続特典など
紹介
継続のフェーズを経て自社の商品・サービスのファンとなった顧客により、口コミやSNSの投稿などが行われます。
紹介フェーズのユーザーに適した施策
ECサイトにレビュー欄を設置する、SNS投稿に対して「いいね!」や拡散などのアクションを行うなど
発信
ユーザーによる口コミやSNS投稿が増えることで、コストをかけずに宣伝が可能になります。
たとえば特定のハッシュタグを使用したキャンペーンを行うといった方法も。
こうした取り組みは、新規ユーザーの開拓にもつながります。
発信フェーズのユーザーに適した施策
特定のハッシュタグを使用したキャンペーンの実施、ユーザーからの口コミを掲載したLP(ランディングページ)の制作など
参考:『ワンマーケティング株式会社「『ファネル』の基礎を知る!マーケティング戦略に必要な知識と活用例」 』
なお、Instagramを使ったマーケティングについては、こちらの記事にて詳しく解説しています。
関連記事:『企業がInstagramを成功させる基礎知識!おすすめ運用法5選』
インフルエンスファネルは、「AISAS」というユーザーの行動モデルがベースとなっています。
- Attention(注意)…認知する
- Interest(興味)…興味を持つ
- Serch(検索)…検索する
- Action(行動)…購入する
- Share(共有)…情報共有する
参考:『リコージャパン株式会社「AISASとは?AIDMAとの違いを具体例で徹底解説!」』
時代とともにインターネットやSNSの利用率が高まるにつれ、ユーザーの口コミが持つ影響力が強くなっています。
とくにBtoCやD2Cの商品・サービスは、口コミがユーザーの購買行動を左右しやすい傾向にあります。
ここで、2018年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した口コミサイト・インフルエンサーマーケティングに関するアンケート調査についてご紹介します。
「商品やサービスを購入するときに、あなたが情報源として重視しているのはどのようなものですか。 特に重視しているものを最大3つまでお選びください。」という問いに対して上位5つに挙がった回答が下記でした。
- テレビ…46.9%
- 口コミサイト(価格.com、食べログ、@cosme(アットコスメ)等)…46.5%
- SNS(InstagramやFacebook、Twitter等)の投稿・写真等…38.1%
- 企業や商品ブランド等のWebサイト…30.4%
- 家族・友人・知人等の推薦…30.4%
口コミサイトが、テレビと同等の影響力を持っているほか、SNSでの投稿を参考にしている人が多いことがわかります。
また、同調査での「あなたが口コミやレビューを確認するのは、特にどのような商品やサービスを購入するときですか。特にあてはまるものを 3つまでお選びください。」という問いに対しては、以下が上位5つに挙がっていました。
- 白物家電、AV家電、カメラ…46.3%
- PC、携帯電話…28.9%
- 化粧品…27.2%
- 飲食サービス…21.9%
- 食品、飲料…19.3%
引用:『三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「口コミサイト・インフルエンサーマーケティングに関するアンケート結果」 』
この結果を参考にすると、電化製品や化粧品などを扱う企業は、パーチェスファネルを使ってユーザーの行動を検証し、口コミで高評価を獲得するための施策を行うのが効果的だと考えられます。
ダブルファネル
ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルの2つを組み合わせて作られた消費行動モデルを指します。
二つの三角形が重なっており、購入までのフェーズでは中間部分にかけて細くなり、購入後のフェーズではまた広がっていく形状が特徴です。
図に示されたように【認知】→【興味・関心】→【比較・検討】→【購入・申込】→【継続】→【紹介】→【発信】のフェーズから成り立ちます。
「商品の認知から購入」までと「購入後のリピーター化や発信」までを分けずに、一つのプロセスとしてトータルで分析できるところがメリットです。
参考:『株式会社MOLTS「マーケティングファネル完全ガイド|種類や活用方法を解説」 』
広告戦略にマーケティングファネルを取り入れるメリット
企業が広告戦略にマーケティングファネルを取り入れることで、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、代表的な2つを挙げました。
消費者の段階に沿ったアプローチができる
段階に合った訴求が大切
消費者の興味や購買へのモチベーションに合わせた広告を打ち出せる点は、マーケティングファネルを活用するメリットの一つです。
たとえば、パーチェスファネルの「認知」のフェーズにいるユーザーと「比較・検討」のフェーズにいるユーザーでは、効果的な訴求方法は異なります。
たとえば電動自転車の広告を打ち出す際「認知」フェーズのユーザーには、電動自転車のあるライフスタイルを訴求する内容の広告や、ブランドの存在を知ってもらうことを目的とした広告などが適しています。
ユーザーは「電動自転車が気になっている」「情報収集を始めてみよう」「まだ購入するとは決まっていない」といった心理にあります。
一方で「比較・検討」フェーズのユーザーには、自社の電動自転車のスペックや、他社製品より優れている点、購入の決め手となるようなキャンペーンなどを訴求する広告を打ち出すのが効果的です。
「購入の意思が固まりつつある」「複数ある候補から自分のニーズを満たしてくれるものを見つけたい」という状態にあるため、購入を後押しするような広告が刺さりやすいでしょう。
ところが「比較・検討」フェーズのユーザーに対して、電動自転車のあるライフスタイルを訴求する内容の広告を打ち出すとなるとどうでしょうか。
すでに「認知」の段階で電動自転車を購入するべきかどうかを検討したあとなので、欲しい情報と広告の内容にミスマッチが生じます。
広告の種類やキーワードによって配信内容を変える
消費行動の段階に合った広告を配信するには、ユーザーのフェーズごとに広告を使い分けることも大切です。
パーチェスファネルを例にすると「認知」フェーズならビジュアルで訴求ができるディスプレイ広告、「興味・関心」フェーズなら自ら情報収集するユーザーに閲覧されやすいリスティング広告を使用するといった方法があります。
また、ディスプレイ広告・リスティング広告などをクリックしてLPや自社のサイトを閲覧したユーザーに対してはリターゲティング広告で再度アプローチをかけ、購入の決め手となる情報を提供することで購買へのモチベーションを高められるでしょう。
なお、リスティング広告で成果をあげるには適切なキーワードの選定が必要です。
下記の記事では、リスティング広告のキーワード選定方法についてご紹介しています。
関連記事:『リスティング広告のクリック率が向上するキーワード選定方法5選!』
改善点を俯瞰で見られる
集客から購買、購買から発信までの流れを俯瞰で見られるところも、マーケティングファネル活用のメリットです。
パーチェスファネルでは【認知】→【興味・関心】→【比較・検討】→【購入・申込】と進むに連れて、対象となるユーザーの人数が絞られていきます。
たとえばInstagram広告を例にすると、ユーザーの行動を下記のように各段階に当てはめることができます。
- 認知…広告のリーチ数(閲覧数)
- 興味・関心…広告のクリック数
- 比較・検討…遷移先のLPに一定時間滞在した人数
- 購入・申込…サービスの申し込みに至った人数
それぞれの数を記録することで、どこがボトルネックになっているのかを検証するのに役立ちます。
数値を元に、「広告のクリック数とLPに一定時間滞在した人数に差異がある」LPの改善が必要かもしれない」「広告のリーチ数が少ない」「もう少し予算を投じるべきかもしれない」といったさまざまな仮説を立て、施策を講じることで広告をより効果的に運用できるようになります。
関連記事:『【3段階で分析】ボトルネック別・リスティング広告運用改善9案』
マーケティングファネルの活用事例
引用:『Charles Tyrwhitt 』
イギリスのメンズファッションブランド「Charles Tyrwhitt」は、マーケティングファネルの活用によって広告の効果を上げた企業の一つです。
具体的には、複数の動画広告を用意し、ユーザーの消費行動の段階に合わせて配信を行いました。
認知の段階ではブランドイメージを伝える動画、比較・検討の段階では商品の特徴やメリットをアピールする動画、購入・申し込みの段階では価格についての訴求を実施しています。
この取り組みによって費用対効果を5倍、コンバージョン率(CVR)を2.2倍に上昇させました。
参考:『シャトルロックジャパン株式会社「動画広告のROASを5倍に改善した方法!マーケティングファネルを使った事例紹介」』
マーケティングファネルは時代錯誤?
多様化する消費行動
「消費行動にマーケティングファネルを当てはめるのはもう古い」という声もあります。
このモデルでは商品・サービスの認知から購入・申し込みまでの流れが一直線で示されていますが、インターネットやSNSが発達している現代はユーザーが日々触れる広告や情報の情報が多いうえ購買方法も多様化しています。
一方で、BtoBの取引においては情報収集から購入・申し込みまでが直線的な従来の流れで行動をするユーザーが主流のため、マーケティングファネルを活用できる場面は多いでしょう。
さまざまな消費行動モデルを知っておくことが重要
大切なのは、自社の商品・サービスやターゲットとなるユーザー像に合った分析方法を選択することです。
SNS時代に即していると言われる消費行動モデルとして下記をご紹介します。
VISAS(ヴィサス)
SNSでの発信を通して生まれる消費行動のモデルです。
ユーザーが購入を検討していなかった商品・サービスであっても、SNSでの口コミに触れることで購買につながる流れを示しています。
- Viral(口コミ)…SNSでの口コミを通して商品・サービスを認知する
- Influence(影響)…影響を受ける
- Sympathy(共感)…共感する
- Action(行動)…購入する
- Share(共有)…情報共有する
SIPS(シップス)
SNSで得た情報への共感が、消費行動のきっかけになることを示したモデル。
ほかのモデルでAction(行動)つまり「購入」にあてられているフェーズが、SIPSではParticipate(参加)と表現されており、商品を手に入れることだけがゴールではない点が特徴です。
- Sympathize(共感)…発信者の情報や意見に共感する
- Identify(確認)…信頼性を確認する
- Participate(参加)…消費者が販促活動に参加する
- Share&Spread(共有・拡散)…参加したことをSNSで共有・拡散する
参考:『コニカミノルタマーケティングサービス株式会社「購買行動とは?9のモデル・フレームワークを解説【マーケター必読】 』
マーケティングファネルはもちろん、ほかのモデルについても学んでおくことでより精度の高い分析が可能になります。
関連記事:『Web広告の戦略を考えるときに使えるオススメのフレームワーク4選』
まとめ
この記事を読んで、マーケティングファネルの活用が難しいと少しでも感じたら、広告代理店に任せるのも一つの手です。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。