Web広告関連のデータ取得には、Cookieというファイルが使われています。
Cookieとは、Webサーバーがクライアントコンピュータに預けておく小さなファイルのことです。
クライアントコンピュータが、あるWebサーバーに初めて接続した際に、Webサーバーがクライアントコンピュータの中に、そのWebサーバー専用のCookieファイルを作成します。
そして、次回、クライアントコンピュータがWebサーバーに接続したときには、WebブラウザがそのCookieをWebサーバーに送信します。
このような仕組みによって、Webサーバーは、個々のクライアントコンピュータが前回使用していた情報を読み取ることができるようになります。
Cookieのおかげで、会員登録した情報やECサイトのカートの情報などがファイルに保存され、次回ログインした際にも前回の続きからWebサイトを使用できます。
参考:『Cookieの仕組み|総務省 国民のための情報セキュリティサイト』
その中でも、3rd Party CookieとはアクセスしたWebページとは異なるドメイン※1が発行したCookieのことで、主に広告を配信する際に利用されます。
3rd Party Cookieでは、ユーザーがアクセスしたWebサイトとは異なるサイトがCookieファイルを送信し、ユーザーの追跡を行います。
自社サイトだけでなく、他社サイトでのユーザーの行動履歴を使用することができるため、リターゲティングなど広告を配信する際のさまざまな施策で欠かせない存在です。
参考:『ドメインとは』
参考:『サードパーティクッキー|マーケティング用語集』
しかしながら、個人情報に関する法律が世界中で制定されており、Cookieを使用した情報収集は今後難しくなると予想されます。
2018年にEUで施行されたGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)を皮切りに、2020年、カリフォルニア州でCCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行されました。
また日本でも、2022年に改正個人情報保護法が施行されました。
これらの法律が制定されたことにより、Cookieを始めとするオンライン識別子の利用に対しユーザーの同意が必要になりました。
逆に言えば、同意しなかったユーザーからは十分な情報を収集できなくなったことを意味します。
また、クロスサイトスクリプションと呼ばれる個人情報を盗み取るためのサイバー攻撃にも使用されるなど、Cookieはセキュリティ面でも問題が報告されています。
もし3rd Party Cookieが使用できなくなった場合、ユーザーを厳選し広告を配信することが難しくなります。
こういった状況に対応するために、Facebookを運営するMeta PlatformsはCookieに依存しない計測方法として、コンバージョンAPIという仕組みを提供しています。
当記事では、下記について紹介します。
- コンバージョンAPIとは何なのか
- 3rd Party Cookieを使った仕組みと何が異なるのか
- コンバージョンAPIを使用するメリット
参考:『Cookie規制って結局、何が変わるの? 2022年の改正個人情報保護法、注目すべきポイントを解説』
参考:『GDPR・CCPA・日本の改正個人情報保護法をまとめて解説!』
参考:『GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)』
参考:『California Consumer Privacy Act of 2018 米国「カリフォルニア州消費者プライバシー法 2018年」』
参考:『「Cookieとは?」わかりやすく解説|仕組みや無効化・削除する方法』
関連記事:『Facebook広告の効果を上げるためのターゲティング活用ガイド5選』
Contents
APIとは
コンバージョンAPIについて把握するためには、APIについて理解する必要があります。
APIとはApplication Programming Interfaceの略であり、「Interface」には何かと何かをつなぐものという意味があります。
つまりAPIとは、アプリケーションとプログラムをつなぐものを意味します。
APIはアプリケーションに外部とやり取りするための窓口のようなイメージです。
APIは様々な分野で活用されており、例えば、家計簿アプリの「マネーフォワード」では、銀行や証券会社などから資産状況に関する情報を収集するためにAPIを使用しています。
またLINEなどのSNSもAPIを使用した様々な機能を提供しています。
電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」をはじめ、様々なサービスにログインする際にSNSアカウントの外部IDを使用した経験がある方も多いのではないでしょうか。
引用:『LINEログインの概要』
このようなソーシャルログインは、各SNSのAPI連携によって成立しています。
参考:『今さら聞けないIT用語 やたらと耳にするけど「API」って何?』
参考:『Q. API連携のメリットを教えてください。|マネーフォワードクラウド会計(FAQ)』
コンバージョンAPIとは
コンバージョンAPIとは、コンバージョンの計測のためのAPIです。
Facebookと他のソフトウェアをつなぐことで、コンバージョンのために必要な情報を収集するための仕組みを意味します。
これまでFacebookでは、Cookieを使用し、ユーザーのアクションを把握するためにFacebookピクセルが使用されていました。
Facebookピクセルとは、サイトに貼り付けることができるコードで構成されている分析ツールです。
コンバージョンAPIと同様に、Facebook広告を効率化するためのツールであり、コンバージョン測定やリターゲティングなどを行う際に使用されます。
では、Facebookピクセルと、コンバージョンAPIではどこに違いがあるのでしょうか。
参考:『誰でも簡単!Facebookピクセルの初心者向けガイド|Shopfyブログ』
関連記事:『Facebook広告の計測タグ設置方法4STEP【成果アップのコツも紹介】』
FacebookピクセルとコンバージョンAPIの違い
Facebookピクセルを使用し、広告効果を測定する仕組みは上の画像の通りです。
配信した広告に計測タグを読み込むと、ブラウザ上に3rd Party Cookieが設置されます。
配信した広告の掲載先のWebサイトからブラウザ経由で広告主の計測サーバーにユーザーのアクションなどのデータが送信されます。
ブラウザ経由で情報を収集しているため、ユーザーのCookieに対する同意が得られなかった場合や、今後Cookieが廃止された場合、Facebookピクセルは計測を行うことができません。
正確なデータを得られなければ、ユーザーをターゲティングすることが難しく、また広告の自動入札も正確に機能しません。
そのため、衰退する可能性の高いCookieの代わりになるような計測手法を導入する必要があります。
ポストCookieとしてMeta Platformが提供しているサービスがコンバージョンAPIです。
コンバージョンAPIではブラウザを経由せず、広告の配信先のWebサイトに対して直接サーバーイベント生成要求を行います。
そうすることで、広告主のクライアントサーバーからMeta Platformの広告サーバーに対して直接データを送信することが可能です。
プライバシーに配慮したサーバー経由でのデータ連携であるため、プライバシーとパーソナライズの両立を可能にするサービスです。
まとめると以下のようになります。
Facebookピクセル | ブラウザ経由であるため、正確なデータを収集しづらくなっている |
コンバージョンAPI | ブラウザを経由しないため、規制に引っかかることがなく、プライバシーとパーソナライズの両立を実現している |
参考:『Facebook広告のコンバージョンAPIとは〜利用目的から導入方法まで』
参考:『Instagramの脱Cookie対応は?フェイスブック社・サイバーエージェントと理解を深める:2』
コンバージョンAPIの導入方法
コンバージョンAPIには3種類の導入方法があります。
- 自社で開発する
- コンバージョンAPIに対応したパートナー統合を活用する
- Googleタグマネージャーを使用し設定する
自社で開発する
広告主からFacebookサーバーに対しユーザー情報を送信する仕組みを自社で開発します。
コンバージョンAPIは以下の手順に従得ことで作成することが可能です。
- APIと統合する方式を選択する
- 前提条件を確認し、どこから始めればよいか理解する
- POSTリクエストの送信を開始し、詳細を確認する
- 正しくマッチしているか確認する
詳しい開発の流れに関しては以下のリンクを参考にしてください。
参考:『コンバージョンAPI|Meta for Developers』
コンバージョンAPIに対応したパートナー統合を活用する
引用:『Facebook』
Facebookには、パートナー統合可能で、自動でコンバージョンAPIの設定を行えるサービスがいくつかあり、対象となるサービスは上の画像の通りです。
中でも、WordPressを使用したパートナー連携は非常に簡単です。
手順は以下の通りです。
FacebookピクセルIDを確認する
ビジネスマネージャ左上よりイベントマネージャを選択し、FacebookピクセルIDを確認してください。
アクセストークンの生成
ピクセル>設定タブ>コンバージョンAPIと遷移してください。
[アクセストークンを生成]をクリックし生成されたアクセストークンをコピーし、保存しておいてください。
テストイベントコードの確認
ピクセル>テストイベントタブ>サーバータブと遷移してください。
「TEST」の後に表示されている5桁の数字を確認しましょう。
参考:『Facebook・Instagram広告コンバージョンAPI設定方法』
プラグインのダウンロード
「Pixel Your Site」というプラグインをダウンロードしましょう。
Facebookの[Click for settings]をクリックし、設定を進めましょう。
引用:『WordPress.com』
上の2つのボタンを有効にすることで、コンバージョンAPIが有効になります。
また、あらかじめ調べておいたピクセルIDやトークンなどもここに入力しましょう。
以上で設定は完了です。
対応したパートナーを使用している場合であれば、簡単にコンバージョンAPIを導入することができます。
Googleタグマネージャーを使用し設定する
Googleタグマネージャー(GTM)のサーバー用コンテナ、およびGoogleアナリティクス4(GA4)を使用すれば、実装可能になります。
GTMを使用することで、ユーザーはノーコードでコンバージョンAPIを導入することが可能です。
詳しくは、以下のリンクを参考にしてください。
参考:『サーバー側Googleタグマネージャ(GTM)用コンバージョンAPI|Meta for Developers』
関連記事:『Google広告のコンバージョンタグをタグマネージャーで設定する5ステップ』
コンバージョンAPIを採用するメリット3選
- 顧客単価を削減可能
- Facebookピクセルと同時に利用することでより多くのデータを収集可能
- 広告の最適化
以上が、コンバージョンAPIを採用するメリットです。
顧客単価を削減可能
制限がかけられた場合、正確に機能しないFacebookピクセルですが、制限がかかっていない場合であっても、ブラウザーの読み込みエラーや接続の問題などで、データを送信できない場合があります。
これに対し、コンバージョンAPIはWebサイトから直接データを送信するため、エラーが起こりづらく、高い接続性を実現することが可能です。
より多くの最適な情報を収集できるため、より精度の高いターゲティングを実現することができます。
コンバージョンAPIの導入事例
デンマークのインテリア小売店のSøstrene Greneは、コンバージョンAPIを使用することで価値の高い顧客を見つけて成果改善に役立てています。
同社はまず、既存の顧客のコンバージョン行動データをpLTVモデル(予測顧客生涯価値)に変換しました。
このモデル作成により、新規顧客の初回購入から12か月間の価値を予測できるようになります。
そしてMetaコンバージョンAPIを利用して、pLTV値をMetaのサーバーに統合しました。
これにより、Metaの機械学習アルゴリズムは価値の高いオーディエンスを見つけ、価値の高いユーザーに的確に広告を表示させることができるようになります。
その結果、通常の自動入札戦略と比較して広告費用対効果を28%改善させることができました。
コンバージョンAPIは最適なデータを収集しやすいサービスです。
参考:『Metaの入札乗数ソリューションとコンバージョンAPIを利用して価値の高い顧客を獲得』
関連記事:『Facebook広告の費用対効果は高い?クリックコストを下げる3つの方法』
Facebookピクセルと同時に利用することでより多くのデータを収集可能
FacebookにはFacebookピクセルから収集した情報と、コンバージョンAPIから収集した情報で重複した場合、どちらか一方を自動で破棄する機能があります。
そのため、重複を恐れずに同時に利用することでより多くの情報を収集することが可能です。
既にFacebookピクセルを用いて運用している場合、現在の運用にコンバージョンAPIを追加することで、さらに効果的な広告運用の実現が可能です。
参考:『FacebookピクセルイベントとコンバージョンAPIイベントの重複除外について』
FacebookピクセルとコンバージョンAPIの併用事例
株式会社フィネスは、サジーという植物を使用した健康食品のEC通販事業を展開する会社です。
MetaピクセルとコンバージョンAPIゲートウェイを併用して、パフォーマンスの向上を達成しました。
コンバージョンAPIゲートウェイは、コンバージョンAPIを簡単に設定するためのセルフサービスの設定方法です。
これによって、Web上で発生したお問い合わせなどのイベントを自社サーバーから直接Metaのサーバーに共有することができ、測定機能の向上が期待できます。
さらに同社はコンバージョンAPIゲートウェイとMetaピクセルを併用することで、ユーザーのシグナル強化を実現し、より成果の見込めるユーザーへの広告配信を可能にしました。
両者を併用したキャンペーンと、Metaピクセルのみ使用したキャンペーンを比較したところ、購入数が16%向上しました。
参考:『株式会社フィネス / 豊潤サジー』
参考:『コンバージョンAPIゲートウェイについて』
広告の最適化
コンバージョンAPIを使用し計測を行なった場合も、Facebookピクセルを使用した場合と同様に、広告の最適化を行うことが可能です。
データによりFacebookでの広告のパーソナライズ、最適化、測定の精度が高まり、 広告に興味を持つ可能性が高い利用者に広告が表示されやすくなります。
例えば、サブスクリプションの有無や、電話による通話などオフラインでのイベントの計測も可能です。
この技術を利用することで、ビジネスに価値をもたらす可能性の高い顧客を探り出すことができ、優良顧客に対してのみリーチできます。
このように、コンバージョンAPIによって、より柔軟な広告運用を行うことが可能です。
関連記事:『Facebook広告の費用はいくらかかる? 3つのポイントを解説!』
まとめ
コンバージョンAPIは広告を分析する際に非常に有用な施策です。
コンバージョンAPIは導入することで、Facebookピクセルと比較し正確なデータの収集することが可能です。
現在、Facebookピクセルを使用した計測を行なっているユーザーであっても、併用することで、より多くの情報を収集でき、精度の高い広告運用につながります。
また、当記事を読んで、コンバージョンAPIを始めとした広告効果の計測が難しいと感じた場合、広告代理店に相談するのも1つの手です。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。