Web広告は、今や企業の集客には欠かせないものです。
日本では1996年にYahoo!がバナー広告の取り扱いを始めて以来、リスティング広告やSNS広告など多岐に渡る広告が登場しました。
参考:『Digital Marketing Lab『日本のインターネット広告の歴史』 』
顧客とのタッチポイントとなるWeb広告は、集客のみならず企業のイメージを訴求する役割も果たします。
そこでWeb担当者が気をつけたいのが、自社の広告が適切な場所に適切な内容で配信されているのかという点です。
今回は、広告が適切なサイトで配信されるための取り組みである「ブランドセーフティ」について解説します。
自社の企業イメージやブランド価値を守りながら広告運用を行うために、非常に重要な知識となります。
Contents
ブランドセーフティとは?
まずはブランドセーフティの定義や、重視されるようになった背景についてご紹介します。
企業の規模や業種を問わず、基礎知識としてぜひ押さえておきましょう。
ブランドセーフティの定義
ブランドセーフティとは、企業が出稿するWeb広告が不適切なサイトに配信されることを防ぎ、ブランドイメージを守るための取り組みを指します。
JICDAQ(デジタル広告品質認証機構)を構成するJIAA(日本インタラクティブ広告協会)とJAA(日本アドバタイザーズ協会)では、ブランドセーフティについてそれぞれ次のように定義しています。
JIAA
広告掲載先の品質確保による広告主ブランドの安全性
引用:『JIAA『広告掲載先コントロールによる「ブランドセーフティ」確保に関するJIAAステートメント』』
JAA
ブランドを毀損する不適切なページやコンテンツに広告が表示されるリスクから、安全性を確保する取り組み
引用:『JAA『デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言』 』
ブランドセーフティにおける不適切な配信先とは、具体的にはどのようなサイトを指すのでしょうか。
安全に広告を出稿するためのツール等を開発するMomentum株式会社では、企業のブランドイメージを損なう配信先カテゴリとして、下記を挙げています。
- アダルト:年齢制限に関する注意画面が出るもの、R18指定に該当するもの、性的な内容のもの
- 悪質CGM:不適切なコメントが書かれやすいユーザー参加型コンテンツ(2ちゃんねるなど)
- 著作権侵害:著作物を第三者が転載することで侵害しているもの
- ポイントサイト:ポイントサイト、あるいはポイントサイトを推奨するサイトなど
- ヘイト:個人や人種などを差別、誹謗中傷している内容を含むもの
- 危険物(仮称):毒物や違法薬物などの情報を取り扱うサイト
- グロテスク(仮称):事故映像や自殺関連情報など、ショックを受ける可能性の高い内容のもの
- ネガティブ:主にヘイトスピーチには該当しないものの、ネガティブな表現が目立つサイト
引用:『Momentum株式会社『インターネット広告で「ブランド毀損」が発生する理由は?Web広告担当者がおさえておきたい対策もご紹介!』 』
また上記以外にも、政治色の強いサイトなどもブランドイメージの毀損につながるケースがあります。
不適切な広告配信が起こる理由とは
広告によってブランドイメージの毀損が懸念されるようになった背景には、出稿方法の変化による影響があります。
Web広告の発展にともない、広告を取り巻く状況は大きく変化してきました。
インターネットが発達する以前から利用されてきたマスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)などの広告は、特定の広告枠に対して費用を支払うという出稿方法がとられています。
一方のWeb広告では、従来の「枠買い」から、ユーザーの特性に合わせて配信する方法が多く採用されています。
ディスプレイ広告では、アドネットワークを使って多岐に渡る媒体に効率良く配信が可能です。
アドネットワークに含まれるさまざまな広告枠に出稿するだけでなく、ターゲティング機能によって配信先のユーザーの特性まで絞り込むことができます。
その反面、企業では自社の広告がどの枠に表示されているのかを把握しにくいという問題もあります。
関連記事:『ディスプレイ広告とは?GDNとYDAの5つの違いを解説』
こうした理由によって、掲載先のサイトのコンテンツが広告と合っていなかったり広告を閲覧するユーザーに不快感を与えるといった事態につながり、広告の安全性が重要視されるようになりました。
たとえば下記のような広告配信は、サイトとコンテンツの内容がミスマッチだと言えるでしょう。
- ダイエットの特集ページに飲食店の食べ放題の広告が表示される
- アダルトサイトに子供の教育関連の広告が表示される
企業にとっては、自社の商品・サービスの内容にそぐわないサイトに広告が掲載されるだけでも、イメージダウンになる恐れがあります。
また公序良俗に反するサイトやコンテンツへの広告配信によって、配信先のサイト運営者に金銭的な利益を発生させてしまうことにもなります。
広告の表示回数やコンバージョン数が上がるからといって掲載先を問わずに広告出稿をするのは、企業にとって大きなリスクにもなりえるのです。
インターネットが発達した現代では、些細なきっかけで炎上が起こります。
企業に社会的責任やモラルの遵守、サステナビリティへの配慮などがより強く求められるようになった時代背景も、ブランドセーフティが必要とされる理由の一つです。
JARO(日本広告審査機構)による調査では、2022年1月~2022年6月にかけて同団体が受け付けた広告に関する苦情5,139件のうち、インターネット広告に対するものが2,156件、テレビ広告に対するものが2,111件でした。
ネット広告への苦情件数がテレビ広告を上回っていることからも、注目の度合いがうかがい知れます。
また寄せられた苦情の上位(全媒体対象)は、医薬部外品が280件、化粧品が260件、専門店が161件となっています。
医薬部外品については効果の誇張や非現実的な描写に多くの苦情がありました。
参考:『2022 年度上半期の審査状況|公益社団法人日本広告審査機構』
ブランドセーフティの概念が広がったきっかけ
ブランドセーフティの考え方が広く知られるようになった大きなきっかけは、2017年に開催されたアメリカのネット広告業界団体IABによるカンファレンスで行われたスピーチでした。
世界規模の消費財メーカー・P&Gの最高ブランド責任者であるマーク・プリチャード氏が、アドフラウド(広告詐欺)やビューアビリティ(広告の視認性)、そしてアドセーフティなどについて言及し、メディアの透明性に重きを置いて広告運用を行っていくと表明しました。
このスピーチが広告業界の関係者を中心に大きな賞賛を集め、Web広告の透明性や安全性が問われる発端となったのです。
参考:『株式会社プリンシプル『P&Gが広告の透明性を強く業界に訴え、20年で最高のスピーチと絶賛される』』
関連記事:『リスティング広告の審査対策5選【Google広告・Yahoo!広告】』
ブランド毀損があった事例
前述のマーク・プリチャード氏によるスピーチが話題になった2017年前後には、Web広告の配信面に起因するブランド毀損が国内外で問題化されていました。
その一つとして、消費財メーカーであるユニリーバ・ジャパン株式会社の事例をご紹介します。
2016年、インターネット番組の放送局「AbemaTV」にて政治団体・グループを支援する番組にユニリーバの広告が表示されたことで、視聴者から批判が集まりました。
広告表示はアドネットワークの自動配信によるもので、のちにユニリーバとAbemaTVの間には取引がなかったと釈明が出されます。
なおユニリーバでは問題を受けて、政治団体を支援する番組への広告出稿を停止するよう、広告代理店経由でアドネットワークに要請を行いました。
参考:『HUFFPOST『桜井誠・在特会前会長のAbemaTV番組、広告流れたユニリーバ・ジャパンが釈明』』
参考 :『インターネット動画サイト番組へのスポンサーについて – ユニリーバ・ジャパン』
ブランドセーフティのための具体的な取り組み
ブランドセーフティを重んじてWeb広告を運用するには、具体的にどのような施策が有効なのでしょうか。
ここでは、代表的な3つの取り組みについて解説します。
ブラックリスト・ホワイトリストの活用
「このサイトには表示したくない」「このサイトに優先的に配信したい」と決まっている場合は、DSP(広告配信プラットフォーム)のブラックリスト機能・ホワイトリスト機能を活用するのがおすすめです。
ブラックリストは名前の通り特定のサイトへの配信を避けるためのリスト、ホワイトリストは信頼度の高いサイトのリストを指します。
また特定のキーワードが含まれるコンテンツや、自社のミスマッチなメディアのカテゴリを指定して配信先から除外するという方法もあります。
PMPの導入
ブランドセーフティに配慮するなら、品質の高いサイトやコンテンツに絞った配信ができるPMP(プライベート・マーケット・プレイス)を導入するのも一つの方法です。
PMPはメディアや広告主が限定されたクローズドな取引市場であり、配信先を把握しやすい点が大きなメリットです。
入札方式だけではなく、固定の金額が決まっていたり、在庫を予約購入する場合もあるため費用が高くなりやすいのが懸念点ですが、配信先の透明性や安全性を重視するなら活用してみると良いでしょう。
参考:『株式会社PLAN-B『最近、WEB広告市場で急成長中のPMP(プライベート・マーケット・プレイス)とは』』
アドベリフィケーションツールの導入
アドベリフィケーションツールとは、自社のWeb広告が適切に表示されているかを検証するためのツールです。
導入することで、次の3点をチェックできるようになります。
- アドフラウド…コンピュータによる不正閲覧
- ビューアビリティ…表示された広告の視認性
- ブランドセーフティ…ブランド毀損の防止
効率良く広告の安全性を確保したい場合に適しています。
参考:『GMO NIKKO株式会社『アドベリフィケーションツール~知っておきたいベンダー5選~』』
関連記事:『アドフラウドとは?8つの種類や対策方法、効果が出た企業事例を紹介』
広告クリエイティブの内容にも注意が必要
Web広告を運用する際は、広告の内容にも配慮が必要です。
自社の商品・サービスに合った枠に配信されたとしても、広告自体の内容に不適切な点があればブランド価値の毀損につながる恐れがあります。
- 不快な思いを引き起こす表現が使用されていないか
- 景品表示法や薬機法に違反していないか
- 期限切れのキャンペーンなどが掲載されていないか
広告文やクリエイティブの内容は、社内で検討を重ねたうえで決定しましょう。
複数名でチェックを行い、内容が適切かどうかの判断をするといった方法をおすすめします。
その際、広告の配信元の広告ポリシーなども参考にしてください。
参考:『Google『Google 広告のポリシー』』
参考:『Yahoo!『広告掲載基準:もくじ』』
なお広告文の作り方については、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
作成時に注意したいガイドラインや法律についてもご紹介しています。
関連記事:『【初心者向け】成果を上げる広告文の作り方と8つの訴求軸を解説』
まとめ
この記事を読んで、アドセーフティの施策の最適化が難しいと少しでも感じたら、広告代理店に相談してみるのも一つの手です。
弊社ではWeb広告のプロがお客様の課題を解決するWeb広告運用サービスを展開しております。
Web広告の運用経験を豊富に蓄積している他、Google広告、Yahoo!広告の正規代理店として認定されています。
蓄積されたノウハウから短時間で課題を解決に導きます。
また、薬機法医療法遵守広告代理店の認証を受けておりますので、広告審査の厳しい薬事・医療系も対応可能です。
お客様のあらゆるニーズに対し 分析・調査を行い最適なプランをご提案しますので、お気軽にご相談下さい。
監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。