リスティング広告で「競合他社の社名や商品名などをキーワードや広告文で活用できるのかな…」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
競合名を使用した際に不正競争に該当して、トラブルに発展するケースも存在します。
今回はGoogle広告とYahoo!広告のガイドラインを参考にしながら、リスティング広告で競合名が使用できるかを解説します。
なお、本記事での競合名は商標登録された競合名を前提とします。
この記事を読めばトラブル事例まで把握ができて予防対策もできるため、参考にしてみてください。
関連記事:『リスティング広告の審査対策5選【Google広告・Yahoo!広告】』
リスティング広告で競合名は使用できる?
リスティング広告上での競合名の使用の可否には、商標登録に関する各媒体のガイドラインと商標法が関わってきます。
まずは、日本の主要広告出稿サービスであるGoogle広告とYahoo!広告のガイドラインを確認していきましょう。
Google広告のガイドライン
Google広告は広告掲載地域の商標法を遵守し、基本的に商標権を侵害している広告は認めないとする立場を取っています。
ただし、指定した特定の状況に限り、商標の使用を例外的に認める場合があります。
商標権所有者がGoogleに申し立てを行った場合は、一定の基準に沿ってGoogle側が調査し、使用者に制限を加えることがあります。
参考:『Google広告ポリシーヘルプ 商標』
Google広告の商標に関する調査基準
Google広告の商標に関する調査基準は、以下のようになります。
商標(競合名、商品名)の使用が制限される場合
- 直接競合している他社の商標を広告に使用している
- 紛らわしい、虚偽的な、または誤解を与える方法で商標を広告に使用している
商標(競合名、商品名)の使用が制限されない場合
- 商標が使用されている広告のランディングページが、商標に対応した商品やサービス、構成要素、交換部品、または互換性のある商品やサービスの販売を主目的としている(または明確に販売を促進している)
- 商標が使用されている広告のランディングページが、商標に関連する商品やサービスの詳細情報、または商標に関する検索結果のインデックスの提供を主目的としている
- 商標が、通常の意味において記述的に広告で使用されている
その他の調査基準
- 商標を使用する場合は、広告のランディングページ内だけでなく、広告内にも表示する必要があります。
- 商標をキーワードとして使用することは問題ありません。
- 商標を広告の表示URLのセカンドレベルドメインに使用することは問題ありません。
ただし、これらはあくまでGoogle広告のガイドライン上の話であり、商標をキーワードとして使用した場合でも商標法の観点から他社から削除依頼が来ることはあります。
参考:『Google広告ポリシーヘルプ 商標』
Yahoo!広告のガイドライン
引用:『登録商標について| LINEヤフー for Business』
LINEヤフー社は、広告掲載申込みに際しては、他者の商標権を侵害しないことを申込者が保証することを条件としています。
その上で商標権の侵害が後から発覚した場合は、社内で確認の上で不適当な広告については掲載を中止する等の措置を取るという立場です。
一方で、単に自身の登録商標を他者が入札だけでは商標権侵害は成立せず、商標権の権利者に対しても主張が法的に妥当なものか十分検討するよう呼び掛けています。
広告主の連絡先がわかる場合は、当事者間での問題解決を推奨しています。
参考:『登録商標について | LINEヤフー for Business』
商標の使用を制限する申請は、広告文のみ有効
引用:『検索広告における商標使用制限について | LINEヤフー for Business』
Yahoo!広告でも、Google広告と同様に商標の使用について一定の調査をする仕組みがあります。
しかし、範囲は検索広告の広告文での使用のみとなっており、キーワードに商標が含まれている場合はそもそも申請の対象外となるので注意が必要です。
本申請で制限されるのは、検索広告の広告文での使用です。キーワードは、本申請による制限の対象外です。キーワードの自動挿入機能を利用して作成された広告文の場合は、商標の使用制限の対象に挿入されたキーワードも含まれます。そのため、該当のキーワードが掲載停止になることがあります。
こちらもあくまでGoogle広告のガイドライン上の話である点は注意が必要です。
商標法上の扱い
ここまで見てきたGoogle広告もYahoo!広告も、日本の商標法をベースにしています。
商標法では「商標」について、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」と定義しています。
この商標を保護することで、商標使用者の業務上の信頼が損なわれないようにすることが商標法の趣旨となります。
商標法で特に問題になるのが、不正競争にあたるケースです。
参考:『特許庁 参照条文(商標法)』
不正競争とは何か
不正競争については、不正競争防止法に定義が記載されています。
■不正競争防止法2条1項1号
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
つまり、商標使用者の業務上の信頼が損なわれた際に、商標権を侵害したと見なされる場合があります。
メタタグの商標権侵害の事例
過去にはインター・イケア・システムズ・ビー・ヴィがWeb買取代行業者に対し、無著作権侵害・商標権侵害・不正競争防止法違反で提訴した事例も存在します(著作権侵害差止等請求事件:東京地裁平成27年1月29日判決)。
イケア商品の買物代行業者が、イケアファン集客のために、自社のウェブサイトにおいて「【IKEA STORE】」「イケア通販」他4つの標章を、htmlファイルのタイトルタグおよびメタタグとして使用していました。
さらに、イケアの商品写真を無断で転載していました。
こちらに対してイケアが無断でロゴや商品写真などを使用されたとして提訴したという経緯になります。
東京地裁では、 買物代行業者の著作権侵害および商標権侵害または不正競争行為の成立を認め、差止および除去請求を認容するという判決が出ています。
タイトルタグやメタタグでの商標使用が商標権侵害に当たったことから、広告タイトルや広告文の商標使用も十分慎重になる必要があります。
参考:『平成24(ワ)21067 著作権侵害差止等請求事件』
参考:『他社商標をメタタグ・タイトルタグに使用することの問題点とは』
商標権の侵害に該当した場合
商標権の侵害の罪に問われた場合、罰則が発生する恐れがあるため注意してください。
最悪の場合は10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科せられてしまいます。
商標権の侵害の罪
第七十八条 商標権又は専用使用権を侵害した者(第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
関連記事:『【初心者向け】成果を上げる広告文の作り方と8つの訴求軸を解説』
リスティング広告で競合名を使用して起きたトラブル3選
リスティング広告運営で競合名の使い方を間違えるとトラブルが発生すると説明しました。
具体的に、どのようなトラブルが起きてしまうのでしょうか?よくあるトラブルを把握しておき、予防対策しておきましょう。
競合他社からのキーワード除外依頼を放置した
社名や商品名を含めたキーワード入札をしていると、競合他社からキーワード除外の依頼が届くこともあります。
以下のような文言の依頼が多いです。
○○○○のプロモーション担当をしております、株式会社○○○と申します。
御社がGoogle(Yahoo!)に出稿されているリスティング広告につきまして、一部キーワードでの除外設定をお願いしたくご連絡いたしました。
▼ サービスのURL
https://www.○○○○○○○
Google(Yahoo!)で「○○○○」と検索した際に、御社の広告が掲載されておりました。
「○○○○」に関しましては、弊社の登録商標となっています。
つきましては、「○○○○」を含む関連するキーワードの「フレーズ一致除外」をお願いできないでしょうか。
こちらに対して返信をしないなど不誠実な対応をした場合、提訴を含むトラブルに発展する可能性があります。
関連記事:『【保存版】リスティング広告の用語14選!マーケティングの基本を解説』
解決策:当事者間で話し合い解決する
競合他社からキーワード除外の依頼が来たら、当事者間で話し合いましょう。
Google広告、Yahoo!広告のガイドライン上では、競合名を使用したキーワード入札は現状規制の範囲外です。
しかし、競合他社を不快にさせているのは事実です。
先方の要求が妥当なものであれば、大きなトラブルに発展する前に対応することが望ましいでしょう。
企業間で話し合って認識の擦り合わせを行う必要があります。
商標名が他社に無断で使用された
自社が商標登録している社名や商品名を使用されて、商標権を侵害されてしまうトラブルもあります。
解決策:広告媒体へ商標権使用の制限を申請する
商標登録した社名や商品名が使用されて商標権が侵害されていると感じた場合は、Google広告やYahoo!広告へ商標権使用の制限を申請することができます。
商標権の使用制限の申請は、下記のフォームから行ってください。
申請には、①電子化した申請者の名刺②商標登録証③使用制限や許諾する広告主の情報(ドメイン)など各プラットフォームの要求する情報が必要です。
参考:『Yahoo!広告 | 商標権者による商標の使用制限の申請について』
広告文や説明文に自社名が使用されていた
競合他社がリスティング広告の広告文に自社名や商品名を使用されており、ユーザーに誤解されるような広告が配信されると不正競争に該当する場合があります。
参考:『平成五年法律第四十七号 不正競争防止法』
関連記事:『リスティング広告のよくある質問5つ!広告代理店のプロが回答』
解決策:弁護士などに相談をする
不正競争防止法違反をされたら、①差止②損害賠償③信用回復措置が請求できます。
- 差止請求…悪意のない侵害行為に対しても広告の停止が求められる
- 損害賠償請求…損害額を推定して賠償金を請求する
- 信用回復措置請求…営業上の信用の回復をするために必要な措置(謝罪文の掲載)を請求する
上記のような請求をしたい場合は、法律知識を持つ弁護士へ相談してみてください。
参考:『弁護士法人デイライト法律事務所 | 不正競争防止法違反とは?』
商標登録の調べ方
リスティング広告の競合名の使い方に関する理解は深まったのではないでしょうか?
上手くリスティング広告が運用できるように、商標登録の有無の調べ方をご紹介します。
「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の利用方法」
商標登録されている社名や商品名は「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で閲覧できます。
商標登録の閲覧は無料のため、商標登録が気になる場合は事前に確認しておきましょう。
「商標検索」を選択
「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)サイトのメニューから「商標検索」を選択する
検索項目のプルダウンから「称呼」を選択
検索対象種別の中から「出願・登録情報」を選択して、検索項目のプルダウンから「称呼」を選択する
ひらがな、カタカナ、アルファベットの表記は別々に検索する必要があります。
まとめ
リスティング広告では、広告文や説明文に競合名を使用すると不正競争防止法違反に該当する恐れがあるため注意しなければいけません。
このような広告運用上のトラブルを正しく理解することがWeb担当者には求められます。
今回はよくあるトラブルと解決方法を解説したため、ぜひ、広告運用をするために覚えておきましょう。
弊社ではリスティング広告運用代行というサービスを展開しております。
リスティング広告の運用経験を豊富に蓄積している他、Google広告、Yahoo!広告の正規代理店として認定されています。
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弁護士からのコメント
幸谷 泰造 先生
リスティング広告においては、他社の商標をキーワードとして使用することは避けるようにしましょう。商標権侵害や不正競争に該当し、損害賠償請求や差止請求を受ける可能性があります。
リスティング広告を行う際のリスクを避けたい場合、専門家に相談するようにしましょう。
監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。