Web広告の市場規模は年々増加傾向にあります。
電通が行った調査レポート「2022年 日本の広告費 インターネット広告媒体費」によると、インターネット広告媒体費総額は2018年から2022年までの5年間継続して増加している事がわかりました。
Web広告の市場規模拡大に伴い、広告を掲載する側や広告掲載する媒体を運用している側が広告管理を実施しやすいよう、環境整備が実施され、アドネットワークやアドエクスチェンジなどのアドテクノロジーが発展しました。
Web広告を運用している方であれば、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
アドネットワークやアドエクスチェンジは、両者とも広告配信を行う際の仕組みのことを指します。
中でもアドエクスチェンジは、多くの媒体に対し広告を配信したい場合欠かせません。
当記事では、アドエクスチェンジとアドネットワークの違いについてと、アドエクスチェンジを活用するメリットについて紹介します。
参考:『2022年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析』
アドネットワークとアドエクスチェンジは、3PASの一種
アドネットワークやアドエクスチェンジは、3PAS(3rd-Party-Ad-Serving)と呼ばれるアドサーバーを用いて広告配信する仕組みである点で同様であることから、混同している方も多いのではないでしょうか。
3PASとは、広義では、配信先のメディアに広告のデータを格納せず、第三者のサーバーからメディアに対し広告配信を行う仕組みのことです。
狭義では、複数媒体の広告を一元管理し、配信・効果測定を行うアドサーバーのことを指します。
アドネットワークとアドエクスチェンジは、両者ともに狭義の3PASに該当します。
参考:『3PAS(第三者配信)とは』
アドネットワークとアドエクスチェンジそれぞれについて適切に理解し、違いについて把握しましょう。
アドネットワークとは
アドネットワークとは、複数の広告配信媒体をまとめる仕組みのことです。
Web広告の普及が進んでいる昨今、広告配信媒体の運営者と広告配信者が直接やり取りし、配信の有無や配信箇所を決定することは手間がかかります。
アドネットワーク登場以前は出稿する媒体に応じて課金方式や入稿規定が異なり、それぞれの条件を満たすように媒体ごとにキャンペーンを作成し、広告掲載を行う事が一般的でした。
そのため、多くの媒体に広告掲載することは非常に難易度の高い施策でした。
そこで、アドネットワーク事業者が広告配信を行うメディア事業者を取りまとめ、広告主はアドネットワークに登録するだけで複数のメディアに広告配信できる仕組みが完成しました。
アドネットワークでは、1つのキャンペーンを作成することで複数媒体に一括で広告配信を行う事が可能です。
参考:『SATORI | アドネットワークとは?DSPとの違いって?初心者にも分かる入門編!』
例えば、アドネットワークの代表格であるGoogleディスプレイネットワークでは、3,500万ものWebサイトやアプリで世界中のユーザーに対しアプローチする事が可能です。
参考:『ディスプレイ広告とGoogle ディスプレイネットワークについて』
アドネットワークを活用し広告配信可能なサービスはGoogleディスプレイネットワークの他にも様々です。
具体的には以下のようなものがあります。
アドネットワーク | 配信面 |
Googleディスプレイネットワーク | Gmail YouTubeなど |
Yahoo!ディスプレイ広告(運用型) | Yahoo!ニュース ヤフオクなど |
楽天アドネットワーク | SmartNews Facebookなど |
LINE Ads Platform for Publishers | LINEファミリーアプリ DELISH KITCHENなど |
参考:『広告の掲載先|Google広告ヘルプ』
参考:『「検索広告」と「ディスプレイ広告(運用型)」の違いは何ですか?|Yahoo!広告ヘルプ』
参考:『RPM-Display Ads|Rakuten Marketing Platform navi』
参考:『LINE広告ネットワーク|LINEヤフー for Business』
アドネットワークのおかげで、広告運用者は、多くのメディアに対し一括で広告配信をできるようになり、少ない手間での広告配信が可能になりました。
関連記事:『ディスプレイ広告とは?GDNとYDAの5つの違いを解説』
アドネットワークの課金方式
アドネットワークの課金方式は様々ですが、以下が代表例です。
- インプレッション課金型
- クリック課金型
- 成果報酬型
- インストール課金型
例えば、Googleディスプレイネットワークでは、クリックごとやインプレッションごと、コンバージョン発生後等の設定を行う事が可能です。
目的に応じて課金方式を決定できるため、何が目的かをあらかじめ明確にし、目的を達成するために効率的な課金方式を選択しましょう。
関連記事:『6種類の主要媒体の広告費用の目安!広告予算の決め方まで徹底解説!』
アドネットワークのメリット
アドネットワークを活用するメリットは、複数の媒体に一括で掲載可能である点です。
これにより広告運用の手間を省く事が可能です。
また、一括管理により、広告効果を測定しやすいといったメリットもあります。
Google広告の管理画面では、サイトごとの広告効果を以下のように一括確認する事が可能です。
プレースメント | 型 | キャンペーン | 表示回数 | コンバージョン数 |
mount-takao-hikes.com | サイト | 高尾山ハイキング | 1,500 | 20 |
adventure-hikes.com | サイト | 高尾山ハイキング | 1,500 | 25 |
takao-power-drinks.com | サイト | 高尾山ハイキング | 3,000 | 2 |
hikes-for-kids.com | サイト | 高尾山ハイキング | 2,000 | 0 |
また、広告ごとのクリック数やコンバージョン数は以下のような形で確認する事が可能です。
広告 | キャンペーン | クリック数 | コンバージョン数 |
高尾山 | 高尾山ハイキング | 150 | 20 |
ハイカー | 高尾山ハイキング | 150 | 5 |
参考:『ディスプレイ ネットワークでの広告の掲載結果を分析する|Google広告ヘルプ』
効果測定を一括で行えるため、非常に効率的に広告運用を行う事が可能です。
アドネットワークのデメリット
アドネットワークのデメリットは、以下の2点です。
- 多くの媒体に出向したい場合、様々なアドネットワークに登録する必要がある
- それぞれのアドネットワークで設定項目が様々である
多くの媒体に出向したい場合、様々なアドネットワークに登録する必要がある
アドネットワークに登録することでアドネットワーク上の様々な媒体に対し出稿可能ですが、言い換えると1つのアドネットワーク上では、そのアドネットワークに登録している出稿媒体限定の配信となります。
さらに幅広いユーザーにリーチしたい場合は複数のアドネットワークに登録する必要があります。
それぞれのアドネットワークで設定項目が様々である
それぞれのアドネットワークは課金方式をはじめ設定可能な項目が異なります。
自身のニーズに合わせてそれぞれのアドネットワークの設定を行う必要があることから、多くの媒体に出向したい場合は、少し手間のかかる施策になります。
アドエクスチェンジとは
アドエクスチェンジとは、広告枠をインプレッションベースで取引する広告取引市場のことです。
メディアだけでなく、アドネットワークも取りまとめ、一括で管理できる仕組みを指します。
1つのネットワークで管理可能なメディアが豊富であることから、広告主はより多くの媒体に配信可能です。
参考:『アドエクスチェンジ|ウェブ解析士 用語集』
また、入札方式がインプレッション課金に限定されていることも特徴の1つです。
これにより、様々なアドネットワークやメディア間でのオークションが実現されています。
アドエクスチェンジの代表格の1つにGoogleアドマネージャーがあります。
Googleアドマネージャーでは、ダイナミックアロケーションと呼ばれるGoogle広告やGoogle広告以外のメディアを一括でオークションにかける仕組みを導入し、広告を配信する際に全ての広告の中で最も単価の高い広告を配信します。
このように多くの媒体間でオークションを行うことで、市場競争が活発になり、より健全な市場を作成する事が可能です。
アドエクスチェンジの課金方式
インプレッション課金で統一化されています。
RTB(Real Time Bidding)と呼ばれる広告枠でインプレッションが発生するごとに都度入札が行われる仕組みを導入しています。
広告主があらかじめ設定した入札単価に応じてオークションを実施し、配信する広告を決定します。
参考:『リアルタイム入札 | Real-time bidding』
一般的にRTBではセカンドプライスビッティングを採用しています。
セカンドプライスビッティングとは、最も高い入札単価を提示した広告主が、2番目に高い入札単価+1円で広告を入札できる仕組みのことです。
2番目の入札者と比較し、大幅に高い入札単価を提示した場合も、価格を抑えて入札可能であることから、コストを抑えた出稿が可能です。
参考:『RTB(リアルタイムビッディング)の仕組みとアドテク基礎知識』
アドエクスチェンジのメリット
アドエクスチェンジの最大のメリットは、インプレッションが生じるタイミングでRTBが実施される点です。
インプレッションが生じるたびにオークションを実施し、最も入札単価の高かったユーザーの広告が配信されます。
その他にもアクセスしてきた人を識別するユーザーIDやIPアドレス、ブラウザー、OS情報、また広告の掲載先ドメインとコンテンツカテゴリー、広告枠ID、広告サイズ、掲載を許可する広告主、その業種等が参照されます。
あらかじめユーザー属性を絞り、ターゲットを明確にしておくことで、優良なユーザー限定でオークションに参加するなどの作戦をとる事が可能です。
参考:『DSP/RTBの基本的な仕組み | DSP/RTB入門書特別公開 #1』
アドエクスチェンジのデメリット
課金方式がインプレッション課金限定である点が、アドエクスチェンジのデメリットです。
設定項目の削減になるという点でメリットではありますが、クリック課金やコンバージョン課金などを検証し、最もコストパフォーマンスの高い課金方式を選択するなどの施策をとる事ができません。
アドエクスチェンジに欠かせないDSP・SSPとは
それでは、膨大なメディアやアドネットワークを一括管理するアドエクスチェンジはどのように成立しているのでしょうか。
アドエクスチェンジは広告主をサポートするDSPという仕組みとメディアやアドネットワークをサポートするSSPという仕組みを接続することで成立しています。
DSPとは
DSPとはDemand -Side -Platformの略称であり、広告効果を最大化させるために、複数のアドネットワークや複数のアドエクスチェンジに広告配信を行うプラットフォームです。
SSPと接続し、広告配信が可能となります。
DSPは広告主が広告の費用対効果を高める際に使用します。
広告の在庫管理を一括で行うサービスであり、広告を配信する際は、DSPを使用し、配信する掲載面やオーディエンスなどの設定を行う事が可能です。
参考:『DSP(Demand-Side Platform)とは?を初心者にも分かりやすく解説します』
SSPとは
SSPとはSupply -Side -Platformの略称であり、インプレッションごとにeCPM(effective Cost Per Mille)を算出し、基本的に最も高額と判断された広告が配信される仕組みです。
なお、実際は必ずしも入札額が高い広告が選ばれる訳ではありません。
SSPはメディア運営者などが広告収入を最大化する際に使用します。
ユーザーのインプレッションが発生した際に、収益率の高い広告をDSPから選択し配信します。
アドエクスチェンジの流れ
アドエクスチェンジとは、DSPとSSPを連携させる仕組みのことです。
ユーザーのインプレッションが発生した際に、SSPはDSPに対し、入札のリクストを行い、DSPはオークションを実施します。
DSPはオークション結果をSSPに報告し、配信する広告を決定します。
このリアルタイムでのDSPとSSPのやりとりを円滑に行う仕組みがアドエクスチェンジです。
アドエクスチェンジは、インプレッション課金限定のRTBをインプレッション発生ごとに実施し、配信する広告を決定します。
参考:『AARKI |』
アドネットワークとアドエクスチェンジの違いとは
アドネットワークとアドエクスチェンジの違いは大きく以下の3点です。
- アドネットワークは様々な課金方式がある
- アドエクスチェンジはより多くの媒体に配信可能
- アドエクスチェンジは市場が健全になりやすい
アドネットワークは様々な課金方式がある
アドエクスチェンジは、インプレッション課金限定であるのに対し、アドネットワークでは、様々な課金方式から選択可能です。
広告配信の目的が明確である場合、それを達成する上で最適な配信手法を取り入れる事が可能であることから、効率よく広告配信を行う事が可能です。
アドエクスチェンジはより多くの媒体に配信可能
アドエクスチェンジは課金方式がインプレッション課金で統一されているため、多くの媒体間でオークションを実施し広告配信を実施する事が可能です。
少ない設定で多くの媒体のオークションに参加可能であり、リーチ可能な層が広いことはアドエクスチェンジの特徴の1つです。
また、多くの媒体に掲載可能であることから、よりターゲットを限定的にすることも可能です。
商品やサービスのターゲットになりうる層が明確な場合は、アドエクスチェンジでより詳細なターゲティングを行い、広告を配信することで、コンバージョン率の高い広告運用を実現しやすくなります。
アドエクスチェンジは市場が健全になりやすい
アドエクスチェンジは広告オークションに参加する人数が多いため、市場が健全になりやすいといった特徴があります。
アドエクスチェンジの場合、配信先の多さから、広告オークションを実施する回数が多く、また、参加人数が多いことから独占になりづらく、完全競争市場に近い形で広告運用を行う事が可能です。
広告配信媒体を運営している場合は安すぎる価格で販売される事がないため、非常に優秀です。
まとめ
アドネットワークは、アドネットワークに登録するだけで、オークションにより、配信広告を決定し、ユーザーに広告が配信される仕組みのことです。
これに対し、アドエクスチェンジはDSPとSSPを連携する仕組みのことです。
アドエクスチェンジの場合、課金方式がインプレッション課金限定であると言った特徴があります。
この特徴を活かすことで膨大なプラットフォームを構築し広告を配信することが可能となり、多くのユーザーにリーチすることができるでしょう。
メディアを運営して広告収入を獲得したい場合は、アドエクスチェンジの場合、多くの広告の中から最も条件の良かった広告を配信可能なので、広告枠を安売りされるリスクを回避することにつながります。
現在、より多くのユーザーに対し広告を配信したいと考えている方や、広告枠の安売りに困っている方は、アドエクスチェンジを活用した広告配信を検討してみてはいかがでしょうか。
また、この記事を読んで、広告配信する事が難しいと感じた方は広告代理店にお相談してみてはいかがでしょうか。
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監修者
UnionMedia編集部2012年創業、新宿のWebマーケティングに強い広告代理店「株式会社Union」が運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。